2014年04月26日

『虚血性心疾患』とは?

『虚血性心疾患』とは?


虚血性心疾患 (きょけつせいしんしっかん, IHD: Ischemic Heart Disease)とは、冠動脈の閉塞や狭窄などにより心筋への血流が阻害され、心臓に障害が起こる疾患の総称である。



【概要】

狭心症や心筋梗塞がこの分類に含まれる。

これらは冠動脈疾患と同義であるが、冠動脈自体に病変が無い疾患、例えば脳血管疾患による急激なストレスから来るタコツボ型心筋症や中枢性肺水腫などは特に本症に含まれる。

アメリカ合衆国では1950年代から心臓病患者の増加が問題となっていたが、朝鮮戦争で死亡したアメリカ人兵士を解剖した医師が冠動脈に動脈硬化症を発見したことから、虚血性心疾患と動脈硬化症との関連が明らかとなった。

症状に応じて、薬物治療・冠動脈バイパス術(CABG)・経皮的冠動脈形成術(PCI、PTCA)が行われる。




【危険因子】

日本人の危険因子は以下のとおり。

1.加齢:男性は45歳以上、女性55 歳以上

2.冠動脈疾患の家族歴(両親、祖父母、兄弟、姉妹)

3.喫煙

4.高血圧:収縮期血圧140以上あるいは拡張期血圧90mmHg以上

5.肥満:BMI25以上かつウエスト周囲径が男性85cm、女性90cm以上

6.耐糖能異常(境界型および糖尿病型)

7.高コレステロール血症(総コレステロール220mg/dL以上あるいはLDLコレステロール140mg/dL以上)

8.高トリグリセリド血症(トリグリセリド150 mg/dL以上)

9.低HDLコレステロール血症(HDLコレステロール40 mg/dL未満)

10.メタボリックシンドローム

11.精神的、肉体的ストレス




■■■■■【狭心症】■■■■■

狭心症(きょうしんしょう、angina pectoris)とは、心臓の筋肉(心筋)に酸素を供給している冠動脈の異常(動脈硬化、攣縮など)による一過性の心筋の虚血のための胸痛・胸部圧迫感などの主症状である。

虚血性心疾患の1つである。

なお、完全に冠動脈が閉塞、または著しい狭窄が起こり、心筋が壊死してしまった場合には心筋梗塞という。


【分類】

発症の誘因による分類

労作性狭心症(angina of effort):体を動かした時に症状が出る狭心症。

安静時狭心症(angina at rest):安静時に症状が出る狭心症。




発症機序による分類

器質性狭心症:冠動脈の狭窄による虚血。

微小血管狭心症:心臓内の微小血管の狭窄及び攣縮による虚血。

患者の男女比が大きく、中でも更年期の女性に多く見られる症状で女性の場合は閉経により血管拡張作用を持つエストロゲンが減少することにより引き起こされる。

1980年代になってようやく発見された。


冠攣縮性狭心症(vasospastic angina):冠動脈の攣縮(spasm)が原因の虚血。


異型狭心症:冠攣縮性狭心症のうち心電図でST波が上昇している場合。




【原因】

一般的に狭心症は心臓の冠動脈にプラークという固まりができ、血液の通り道を狭くすることによって起こるもの。

誘因としては高血圧、高脂血症、肥満、高尿酸血症、ストレス、性格などが考えられる。

冠攣縮型(異型)狭心症は、心臓の血管そのものが異常収縮をきたし、極度に狭くなってしまうために起こる。

微小血管狭心症は、心臓内の微小血管の狭窄及び攣縮によって起こるもの。

誘因としては閉経、喫煙などが考えられる。




【症状】

狭心痛(締め付けられるような痛み;絞扼感や圧迫感)が主症状である。

痛みは前胸部が最も多いが他の部位にも生じる事がある(心窩部から、頸部や左肩へ向かう放散痛など)。

発作は大体15分以内には消失する。

他に動悸・不整脈、呼吸困難、頭痛、嘔吐など。

症状を放置した場合、心筋梗塞、心室細動などを引き起こす場合がある。




【治療】

共通してアスピリンなどの抗血小板剤の投与が検討される。

高血圧や喫煙などの危険因子のコントロールも重要である。

・労作性狭心症

薬物療法 硝酸薬(ニトログリセリン、硝酸イソソルビド等)

β遮断薬(冠動脈攣縮を伴わないものに限る)

カルシウム拮抗薬

経皮的冠動脈形成術(PTCA、PCI)、冠動脈バイパス術(CABG)など


●ニトログリセリン

ニトログリセリン(英: nitroglycerin)とは、示性式 C3H5(ONO2)3 と表される有機化合物。

爆薬の一種であり、狭心症治療薬としても用いられる。

血管拡張作用があるので狭心症の薬になる。

これはニトログリセリン製造工場に勤務していた狭心症を患う従業員が、自宅では発作が起こるのに工場では起こらないことから発見されたという。

体内で加水分解されて生じる硝酸が、さらに還元されて一酸化窒素 (NO) になり、それがグアニル酸シクラーゼを活性化し cGMP の産生を増やす結果、細胞内のカルシウム濃度が低下するため血管平滑筋が弛緩し、血管拡張を起こさせることが判明している。

上記の発見の過程と、一般にはニトロと聞いて爆薬を思い浮かべる人が多いため誤解があるが、現在医薬品として用いられている物は硝酸イソソルビドなどのニトロ基を持つ硝酸系の薬品が主であり、ニトログリセリンを使用する場合であっても添加剤を加えて爆発しないように加工されている。

そのため、医薬品のニトロをいくら集めても爆薬にはならないし、医薬品が爆発事故を起こすことはあり得ない。

しかしそれらを加工して爆薬を作ることは可能であり、アメリカなどでは医薬品のニトロも爆薬、兵器として敵対国への輸出を禁止している。


●硝酸イソソルビド

硝酸イソソルビド(しょうさんイソソルビド)は狭心症の治療薬として用いられる硝酸エステル製剤である。

一般名として、ヒドロキシ基の1つが硝酸エステルとなっている誘導体を含む製剤である一硝酸イソソルビドと2つとも硝酸エステル化されている二硝酸イソソルビドがあり、単に一般名で硝酸イソソルビドといった場合は後者(ビス硝酸エステル)を指す。

前者、後者ともに勃起不全治療薬のクエン酸シルデナフィル(商品名バイアグラ)、塩酸バルデナフィル(商品名レビトラ)との併用は、過度の血圧降下となることがあり禁忌である。

【働き】

狭心発作は、いわゆる心臓発作の一つです。心筋に供給される血液が不足するのが原因で、胸に圧迫感を感じたり、しめつけられるように痛みます。

さらに、血管が詰まり血流が止まってしまうと、ついには心筋梗塞に至ります。

このお薬は、冠動脈拡張薬です。心臓の冠動脈のほか全身の血管を強力に広げます。

そのため、心筋に血液がたくさん届くようになり、心臓の負担も軽くなります。

心筋の血液不足が解消されれば、狭心発作もおさまります。

ただし、狭心症の原因そのものを治すことはできません。

狭心症の発作を抑えたり、心筋梗塞を予防するお薬です。

予防薬として定期的に服用するほか、発作止めとして舌下頓用することもあります。


【薬理】

•冠循環改善作用..心臓のまわりの心筋を養う血管(冠動脈)を広げます。

これにより、心筋の酸素不足や栄養不足を改善します。

•末梢血管拡張作用..体全体の末梢の血管を広げて、心臓の負担を軽くします。

心不全の症状をとるのにも有効です。



posted by ホーライ at 20:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 狭心症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月25日

抗不整脈薬について述べよ(5)

●発作性心房細動(Paf)

定義上は治療しなくとも自然停止する心房細動である。

疲労、ストレス、飲酒、脱水によって誘発されやすい。

弁膜症や甲状腺機能亢進症といった基礎疾患に伴うものも多い。

発作性心房細動の場合は患者が症状になれることが少なく、動悸を主訴に救急部に受診することも多い。

発作性心房細動では頻脈となっていることが多いのでまずは心室レートのコントロールを行い、可能ならば洞調律化を目指す。

血栓症の予防なども必要となるが、それらは循環器内科専門医のもとで行うべきである。

f波がP波様にはっきりと確認できる場合は異所性興奮による期外収縮によるものであるため肺静脈離断のカテーテルアブレーションが効果的とされているが、ランダムリエントリーによるものも多い。

行うべきことは器質性心疾患の確認、内分泌疾患の確認、心機能の評価とその他の不整脈の合併などである。

これらの確認を行えば初期治療はある程度は行うことができる。



●急性期治療

動悸などを主訴にERや一般内科に来院した場合である。

真っ先に行うべきことは診断および、背景因子の確認である。

心不全が認められればその治療を優先する。

心電図で背景となる器質性心疾患が認められない場合はアミサリン(100mg/1ml)400mgを生理食塩水で10mlとし1ml/minの速さで静注していく。

頻回に血圧をモニタリングし400mg投与で血圧の低下が20mmHg以下で収縮期血圧が110mmHg以上であればさらに400mg同様の方法で静注する。

これで効果が表れるのは30%1程度であるが、時間経過で発作が停止することも多い。

その後専門医の下で精査の後治療を行う。

心エコーで問題がないとわかっている段階のlone afであればもちいることができる薬は増える。

サンリズム(50mg/A)100mg,タンボコール(50mg/A)100mg,リスモダンP(50mg/A)100mg,シベノール140mg(70mg/A)あたりまで投与できる。

いずれも生理食塩水か5%ブドウ糖液で10mlにて希釈し5分以上かけて投与する。

また経口摂取可能であればサンリズム100〜150mgの単回投与を行うという方法もある。

症状が落ち着けば、専門外来にて治療計画を立てることができる。




●慢性期治療

発作性心房細動の慢性期治療の目的は多数ある。

基礎疾患の確認、洞調律の維持、血栓症の予防などがあげられる。

以下に発作の減少をさせる薬を纏める。


抗不整脈薬

説明

Ia群 心機能に問題がないことが確認できていればリスモダン、確認が不十分であればアミサリンがよく用いられる。

Ib群 アスペノンレジスタードマークが心房細動に効果がある。Ic群に比較して効果が劣るとされているが多剤無効例では効果があることがある。

Ic群 心臓超音波検査による器質性心疾患の除外と心機能低下の除外が投与に必須となる。タンボコール、サンリズム、プロノンは心房細動の発作と停止と予防に優れた効果がある。

II群 ベータブロッカーは発作の停止効果はないがレートコントロールに用いることがある。その他ワソラン、ジゴキシンもレートコントロールに用いる。

III群 血行動態の破綻を招く閉塞型肥大型心筋症にのみアンカロンが適応がある。

IV群 慢性心房細動にはワソランなども用いられるが発作性心房細動では用いない、ベプリコールは難治性発作性心房細動にも用いることがある。


発作性心房細動の治療にβブロッカーやワソランは単独では用いられないが併用はよくされる方法である。

これは心室レートを抑制し自覚症状を改善させることが目的である。

βブロッカーの場合は心房粗動が生じたときに1:1伝導を防止する効果もあり、交感神経賦活化による不整脈発生を抑制する効果がある。

心房細動の治療でI群抗不整脈薬を使用中に心房粗動が発生することはよくある。

これはもともと心房粗動を合併していたのか催不整脈による心房粗動か区別が難しい。

1:1心房粗動となると血行動態的にリスクが高いためβブロッカーやベラパミルを併用する。

発作性心房細動では慢性心房細動に比べれば脳血管障害のリスクは低いと考えられているが、CHADsスコアで1点以上のリスクがある患者ではワーファリンによる抗凝固療法が必要と考えられている。

かつては抗血小板療法も行われたが、それは欧米における高用量アスピリン投与によるエビデンスであるため2009年現在、心房細動の脳血管障害防止の目的ではワーファリンを用いる。



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血中のアルブミン(A)とグロブリン総量(G)の比を算出したものとは?

問題2.次の説明文に該当する項目は?

血中のアルブミン(A)とグロブリン総量(G)の比を算出したもの。

重症肝疾患やM蛋白血症で低下、無γ-マグロブリン血症で上昇。


(1)A/G   (2)AST





」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(1)A/G 


【参考】

ASTとはasparate aminotransferase 。

代表的な肝機能の指標。

肝細胞障害で血中に逸脱するが、骨格筋、心筋、赤血球などの破壊でも上昇をみる。

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2014年04月24日

抗不整脈薬について述べよ(4)

●心房粗動(AFL)

心房粗動は従来は器質性心疾患を背景とする場合が多いと述べられてきたが実際には非器質性の場合が多い。

しかし、器質性心疾患の除外のための心臓超音波検査は必要である。

カテーテルアブレーションが90%以上の成功率があるにも関わらず、薬物療法は決め手に欠ける場合が多い。

心房粗動を放置するデメリットとしては、房室伝道が4:1のままならばよいが2:1となると動悸感を訴える場合が多いこと、心室レートの上昇により、心機能が低下することがあること、房室間の生理的な収縮の連関の喪失によって心臓の機械的効率が低下することがあること、血栓塞栓症のリスクとなること、心房細動に移行することがあることなどがあげられる。

心房細動の移行に関しては心房粗細動という概念があるようにもともと合併しやすい疾患であるため、疑問視する声もある。


III型抗不整脈薬であるニフェカラントやソタロールは心房粗動の洞調律化が期待できるが日本では発売されておらず心房粗動の停止で推薦できる薬物は殆ど存在しない。

特にI群抗不整脈薬、Ic群は心房粗動への有効性は極めて低い。

急性期の心機能低下や動悸症状を除いて、器質的心疾患や心臓機能低下がない患者にとって心室レートが落ち着いている心房粗動は害が少ないと考えられる。

そのため治療で重要視されるのは心室のレートコントロールと抗凝固療法である。

心房粗動の血栓塞栓症の発生頻度は年1.6%であり心房細動の1/3程度である。

治療が必要な状況としては動悸感が強い房室伝導比2:1の心房粗動などがあげられる。

心電図ではNarrow QRS tachycardiaでありPSVTかATが鑑別にあげられる。

2:1の心房粗動でもPSVTでも治療は房室伝道の抑制で基本的に同じであると考えると診断は若干楽になる。



ワソラン(5mg)2アンプルを生理食塩水20mlに溶解し、そのうち10ml(5mg)を血圧の測定をしながら5分かけて静注する。

4:1伝導になれば治療は終了である。

血圧が維持されているが2:1伝導のままであったらさらに10ml(5mg)を血圧の測定をしながら5分かけて静注する。

これで伝導比が変化しなければ診断が誤っていた可能性がある。

患者の状況が許されるのならワソラン6T3×やセロケン(40)2T2×で4:1伝導を維持することもできる。

βブロッカーでも治療を行うことができる。

その場合はインデラル(2mg)2アンプルを5%ブドウ糖に溶解し総量を20mlとし2ml/minで開始する。

これで4:1伝導となることも期待できる。

予防としてはセロケン40mg/dayかワソラン4T/dayにリスモダンR300mg/dayとすることが多い。

薬物療法の反応が悪い時は速やかに電気的除細動やカテーテルアブレーションを行う。


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「肝臓で合成される血中の主たる輸送体蛋白」とは?

問題1.次の説明文に該当する項目は?

肝臓で合成される血中の主たる輸送体蛋白。

栄養状態の悪化や肝障害の程度を反映して低下する。


(A)アルブミン(Alb)   (B)ALT








」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(A)アルブミン(Alb) 



【参考】

ALTとはalanine aminotransferase 。

肝細胞の破壊に伴い血中に逸脱する酵素。

AST(GOT)よりも肝に特異性が高く、肝炎の病勢指標に用いられる。
posted by ホーライ at 02:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 臨床検査項目 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月23日

「血清療法」とは?

問題3.次の文章のかっこを埋めよ

(  A  )とは、抗毒素など高度に免疫された免疫血清を注射して感染症の治療を行う方法をいう。

ワクチン療法を代表とする能動的免疫療法に対して、(  A  )は代表的な受動的免疫療法である。

(1)血清療法   (2)不活化ワクチン療法










」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(1)血清療法  


posted by ホーライ at 02:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 超基礎薬理学・常識編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

交感神経のシナプスにおける伝達物質は?

問題1

交感神経のシナプスにおける伝達物質は?

(1)アドレナリン   (2)アセチルコリン












」」」」」」」」」」
   正解
」」」」」」」」」」

(1)アドレナリン 

(参考)

アセチルコリンは副交感神経の伝達物質。


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2014年04月22日

抗不整脈薬について述べよ(3)

ヴォーン・ウイリアムズ分類に含まれない抗不整脈薬


●ATP

ATPは脱リン酸化を経てアデノシンとして作用する。

房室伝導を強力に抑制するため、房室結節を回路に含む頻拍はすべて停止させることができる。

とくに発作性上室性頻拍(PSVT)ではよく用いられる。

半減期が10秒であるために急速に静注する必要がある。

気管支攣縮や冠動脈攣縮を起こす可能性があるため、気管支喘息の患者や虚血性心疾患の患者には用いない。

ジピリダモール(ペルサンチン)が投与されていると効果が遷延するので注意が必要である。

約20%の患者に胸部の不快感が出現することがある。

アデホスL5mgを生理食塩水で希釈し5mlとし、1秒間で投与する。

ATP5mgでは効かないことがほとんどであるので、3分後にアデホスL10mgを生理食塩水で希釈し5mlとし、1秒間で投与する。

無効ならば20mgまで行う。

大抵は10mgでPSVTは停止する。

カルシウム拮抗薬と異なり陰性変力作用は認めないため血圧低下時には非常に使いやすい。

但しPSVTの停止はできてもその後の再発予防効果は期待できない。

βブロッカーよりはワソランの方が陰性変力作用が弱いため、再発予防にはワソランを用いることがある。




●シシリアン・ギャンビット分類

1990年、イタリアのシシリー島で開かれたSicilian Gambit会議で提唱された分類がシシリアン・ギャンビット分類(Sicilian Gambit分類)である。

これは抗不整脈薬を活動電位ではなくイオンチャネル、ポンプ、受容体に対する作用で分類しようという概念である。

この分類を用いることで不整脈のマネジメントは不整脈を心電図や身体診察で診断し、診断された不整脈の機序に基づいて標的となる蛋白質を同定し、それに対する薬物療法を用いるという論理的なアプローチが可能となることを目標としている。

考え方としては非常によいのだが、出来上がった分類は抗不整脈薬の性質のデータベースのようなものであり非専門医には扱いにくいものとなってしまった。




●抗不整脈薬の副作用

特徴的な副作用には陰性変力作用といった心機能に対する副作用と催不整脈作用があげられる。




●腎機能障害時の抗不整脈薬投与について

腎機能障害時は抗不整脈薬の投与量を減量する必要がある。



●抗不整脈薬の使い方

*期外収縮

基本的には症状がない、あるいは症状が我慢できるのなら器質性心疾患の有無に限らず上室性期外収縮(PAC)、心室性期外収縮(PVC)の数を減少を目的とした治療は行わない。

これは決して期外収縮がすべて良性所見ということを示しているわけではなく、心筋梗塞後のPVCの数は予後不良因子となるのだがPVCを減少させることが予後改善に結びつかず、むしろ悪化するというCAST studyの結果があるためである。

期外収縮の薬物療法は器質的心疾患がなく、自覚症状が強く、QOLが阻害されている場合である。

器質性心疾患の除外は心臓超音波検査で行い、期外収縮が症状の原因かを確かめるにはホルター心電図を行う。

PACやPVCの正確な数は数えることが困難であることも多く、厳密な評価は必要ない。



*上室性期外収縮(PAC)

健常心では非リエントリー性の機序によるものが多い。

器質性ではリエントリー性も稀に認められる。

予後を悪化せず、QOLを向上させることを目的とした治療であるため、安全性の高い薬物を選ぶ。

健常心、あるいはそれに近い薬物としてはIb群アプリンジン(アスペノン)20mg2C2×やIc群のピルジカイニド(サンリズム)50mg3T3× が好まれる傾向がある。

軽度の弁膜症など器質性心疾患が認められる場合はIc群の投与は好ましくなくアプリンジン(アスペノン)が好まれる傾向がある。

アスペノンはIb群で唯一上室性不整脈に効果がある薬である。




*心室性期外収縮(PVC)

健常心では非リエントリー性の機序によるものが多い。

器質性ではリエントリー性も稀に認められる。

PCVは自動能性のものが多い。自動能ならば独自の興奮周期をもてば、先行洞周期との連結性が不定となる。

この場合を副収縮という。

しかし自動能性PVCであっても洞性興奮との間に電気的相互作用があるので期外収縮の揺れがでる。

そのためか連結期が一定に見えることも稀ではない。

連発が頻回にみられるタイプのPVCはtriggered activityであることも報告されている。

安全性の高さからIb群メキシレチン(メキシチール)100mg3C3×といった処方がよく見られる。

心筋梗塞後もCAST study以降でも心室性不整脈防止の意味で投与を行うことがある。

Ia群、Ic群よりも予後を悪化させる作用が少ないと考えられている。
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「MRSA感染症」とは?

問題2.次の文章のかっこを埋めよ

(  A  )とは、抗生物質が効かないMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)による感染症。感染症予防・医療法(感染症法)で5類感染症に指定されている。

日本では1980年代後半からその院内感染が深刻な問題になっている。

(1)HIV感染症  (2)MRSA感染症









」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(2)MRSA感染症

posted by ホーライ at 02:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 超基礎薬理学・常識編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月21日

抗不整脈薬について述べよ(2)

●II群

β受容体遮断薬である。プロプラノロール(インデラルやアテノロール(テノーミン)ビソプロロール(メインテート)な どが含まれる。洞頻脈に用いられる。



●III群

活動電位持続時間を延長させる薬物である。

殆どのものがカリウムチャネル遮断薬であるが、それ以外の作用機序のものも含まれる。

他の抗不整脈薬が無効である場合の第二選択として用いられることが多い。

アミオダロン(アンカロン)、ソタロール(ソタコール)、ニフェカラント(シンビット)などがある。



●アミオダロン(アンカロン)

肺毒性、甲状腺機能異常といった副作用が強いが薬効は他の抗不整脈薬を卓越している。

非専門医が用いるのは危険である。


●ソタロール(ソタコール)



肺機能障害がありアミオダロンが使いにくい時に用いられる薬。



●IV群

カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)である。

発作性上室性頻拍(PSVT)に用いられることが多い。

頻脈性不整脈に使用されるのは非DHP系カルシウム拮抗薬のベラパミル(ワソラン)、ジルチアゼム(ヘルベッサー)、ベプリジル(ベプリコール)である。


一方、DHP系カルシウム拮抗薬ニフェジピン(アダラート)などは抗不整脈作用を持たず、あくまで降圧薬や狭心症の発作予防としてのみ用いる。

これらの薬剤による個性は洞結節や房室結節のCaチャネルと血管のCaチャネルとの親和性の違いで説明されている。


●ベラパミル(ワソラン)

心房細動や心房粗動のレートコントロールやPSVTの停止と予防に使用される。

特発性心室頻拍のうち右脚ブロックと左軸偏位型のものはベラパミル感受性であることが知られており、キシロカインではなくベラパミル投与で停止させることができる。

欧米では降圧薬として使用されているが、本邦では適応を取得していない。



●ジルチアゼム(ヘルベッサー)

古典的なCa拮抗薬のうちベラパミルとジルチアゼムが抗不整脈作用のあるCa拮抗薬として知られており海外では汎用されている。


●アムロジピン(アムロジン)が登場する以前はCa拮抗薬と言えばニフェジピン、ジルチアゼム、ベラパミルの3つが主流であった。

ジルチアゼムはニフェジピンとベラパミルの中間的な性格を持っている。

即ち降圧効果、冠スパズム防止効果(狭心症治療)と徐脈効果をもっている。

降圧効果はアムロジピンに劣るが,徐脈効果はアムロジピンよりも強いため心拍数の高い高血圧患者の治療を1剤で行いたいとき、あるいは心筋酸素消費量を抑制し冠スパズム予防効果に優れることから狭心症(特に冠スパズム)の第一選択薬に用いられる。

国内ではベラパミルに比べて頻拍性不整脈には汎用されていないが、心抑制作用が少なく、心抑制をきたしたくない場合などのPSVT治療に用いる。

心房細動に対しリズムコントロールと比較検討したAFFIRM試験では、レートコントロール群の3割以上の症例に使用されていた。


●ベプリジル(ベプリコール)

アミオダロンと同様にマルチチャネル遮断薬のため、他のCa拮抗薬とは扱い方が大きく異なる。

多剤併用でコントロール不能である心房細動などに用いられることが多い。

あくまでも他剤で無効であったら用いる薬物であり、200mg/dayを超えて投与されることはあまりない。

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『アゴニスト』と『アンタゴニスト』は違いは?

■■■ アゴニスト ■■■

●アゴニスト(Agonist)とは生体内の受容体分子に働いて神経伝達物質やホルモンなどと同様の機能を示す作動薬のこと。

現実に生体内で働いている物質はリガンドと呼ばれる。

それは、持っている作用が生体物質とまったく同一であれば利用する意味がない(その物質そのものを用いればよい)ためである。

そのためアゴニストとされる物質は、生体物質とは少し違った性質を持っている。


多くの場合、それは分子間選択性であったり、標的分子への結合力であったりする。

たとえば、中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質としてグルタミン酸があるが、その受容体は4種類存在する。

NMDAと言う物質はその4種のグルタミン酸受容体のうち、NMDA型グルタミン酸受容体と呼ばれる受容体だけに作用し、残りの3種には作用しない。

このような場合、NMDAをNMDA型グルタミン酸受容体に対する選択的アゴニストと呼ぶ。



対義語としてアンタゴニストがある。

これは、同様に受容体に作用するが、作用する事で受容体の活動を抑制する薬剤のことである。




●パーシャルアゴニスト

受容体を活性化するアゴニストの中にも、活性化度が生体分子に比べて非常に低く、作用するものの作用があまりにも弱い、と言うような薬剤も存在する。

このようなアゴニストをパーシャルアゴニスト、または部分作動薬と言う。

パーシャルアゴニストは受容体にプラスに働きながらも、本来のリガンドの結合を阻害してしまう(すでにこのパーシャルアゴニストが作用している)ため、結果として抑制の方向に働いてしまう事がある。

このように、アゴニストとアンタゴニストの区別は、必ずしも容易ではない。


医療の分野で実際に応用されているパーシャルアゴニストの例を示す。

●βブロッカー

βブロッカーの中には内因性交感神経刺激作用(ISA)という作用をもつものが知られている。

内因性カテコールアミンやβ刺激薬といったアゴニスト存在下ではβ遮断薬として働くが、非存在下においてはむしろ受容体を刺激する。

高齢者などにはISA活性を持つ薬物の方が負担が少なく好ましいとされているが近年は否定的な意見も目立つ。

オピオイドオピオイドのパーシャルアゴニストは弱オピオイドといわれ、依存性がアゴニストに比べて少ないことから、急性期疾患の鎮痛薬としてよく用いられる。

アゴニスト使用時はパーシャルアゴニストとしての作用抑制効果が出現するため、併用禁忌とされている。

あくまで、アゴニスト使用時にパーシャルアゴニストを使用すると薬効がアゴニスト使用時とパーシャルアゴニスト使用時の中間程度になるというだけの話である。

レミフェンタニルの術後疼痛対策で弱オピオイドを用いたり、人工呼吸器下の患者で鎮痛に弱オピオイドを用いて、その鎮痛効果がきれるまえに術中鎮痛としてオピオイドを使用するといったことはよくある。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬ベンゾジアゼピン系睡眠薬にはパーシャルアゴニストが知られている。

ゾピクロン(アモバン)やゾルピデム(マイスリー)といった非ベンゾジアゼピン系睡眠薬がこれらに該当する。

これらはω1には作用するものの、ω2には作用しないため鎮静作用が殆どで、抗不安作用、抗けいれん作用、筋弛緩作用は弱くなっている。


反跳性不眠や依存性もほぼなく、離脱症状も生じないため安全性がかなり高い。

これらはパーシャルアゴニストと記載する書物も認められるが、どちらかというと選択的アゴニストと考えられる。

抗精神病薬アリピプラゾール(エビリファイ)などがドパミンD2受容体のパーシャルアゴニストである。

副作用が出現しにくいと考えられている。


エストロゲンラロキシフェン(エビスタ)はエストロゲン受容体に対するパーシャルアゴニストである。

骨代謝ではエストロゲンアゴニスト、骨外ではアンタゴニストとして作用するため、副作用の少ない骨粗鬆症の治療薬として用いられている。





■■■ アンタゴニスト ■■■

アンタゴニスト (antagonist)とは生体内の受容体分子に働いて神経伝達物質やホルモンなど働きを阻害する薬のこと。


●概要

拮抗薬(きっこうやく)、拮抗剤(−ざい)、拮抗物質(−ぶっしつ)、遮断薬(しゃだんやく)、ブロッカーとも呼ぶ。

作用自体はないが受容体に可逆的に結合するため、濃度支配的に受容体が本来のリガンド分子と結合する部位を奪い合うことでアゴニストの作用を阻害する競合的拮抗薬(コンペティティブ・アンタゴニスト)と、受容体の結合定数に影響を及ぼしたり受容体と不可逆的に結合するなどしてアゴニストの作用を阻害する非競合的拮抗薬(ノンコンペティティブ・アンタゴニスト)がある。

アンタゴニスト存在下で、アゴニストによる濃度-作用曲線(ドーズ・レスポンスカーブ)を描かせると、競合的拮抗薬の場合では高濃度側へのカーブシフトが起こり、非競合的拮抗薬の場合は最大反応の低下が起こる。


リガンドの構造としてノルエピネフリンやドパミンなどのカテコールアミンを例に取ると、カテコール環の部位が作用発現に必要な作用基(ファンクショナル・モエティー)で、炭素鎖をもつアミンの部位が結合基(バインディング・モエティー)であると考えられる。

したがって、作用基であるカテコール環に改変を加えるとアンタゴニストとして働く場合が多い。

一方で、結合基に改変を加えると、受容体サブタイプへの選択性や作用濃度域の変化をもたらすことが多い。


●有名なアンタゴニストの例

吹き矢毒クラーレの成分、D-ツボクラリンは、アンタゴニストとして有名な例であり、アセチルコリン受容体と呼ばれるタンパク質を選択的に阻害することで、神経や筋肉の活動を停止させる。


posted by ホーライ at 03:10| Comment(0) | TrackBack(0) | アゴニストとアンタゴニスト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「EBM」とはエビデンス・ベースト・メディシン?

問題1.次の文章は正しいか?

「EBM」とはエビデンス・ベースト・メディシン(evidence
based medicine)の略称で、「根拠(証拠)に基づく医療」と訳される。

(1)正しい  (2)間違い








」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(1)正しい 

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2014年04月20日

抗不整脈薬について述べよ(1)

抗不整脈薬(こうふせいみゃくやく)とは不整脈の治療に用いる薬である。

不整脈治療薬とも言う。

頻脈性の不整脈に用いることが多い。



■■■ 抗不整脈薬の分類 ■■■

抗不整脈薬はVaughan-Williams分類やSicilian Gambit分類に従って分類される。

各々の分類は抗不整脈薬の考え方が異なる。


●ヴォーン・ウィリアムズ分類

ヴォーン・ウィリアムズ分類(Vaughan-Williams分類)は比較的単純で経験的に不整脈の種類に対する効果を反映するので今でもよく用いられる古典的な分類である。

基本的に活動電位に及ぼす作用を基に抗不整脈薬を分類している。

1980年代より既にこの分類の限界は示されている。

まずは分類法が活動電位だけを基準にしておらずβブロッカーやCa拮抗薬という分類になっていることがあげられる。

これでは同じ薬物が複数の群に属してしまう可能性がある。

また抗不整脈薬として重要なATP、ジゴキシン、アトロピンなどが含まれていない。

また単純心筋の活動電位に対する薬理学的な効果で分類しているため、特殊心筋や病的心筋に対する作用はよくわからない。

そして薬効の強さが分類に反映されていないといったことがあげられる。


●I群

I群に分類される薬は活動電位の最大立ち上がり速度を減少させるものである。

具体的にはNaチャネル抑制効果をもつ薬物であり、膜の安定化作用をもつ薬物である。

I群はさらに活動電位持続時間に対する作用によって3つに細分化される。

Iaは活動電位持続時間を延長させるものであり、Ibは活動電位持続時間を短縮させるものである。

Icは活動電位持続時間を変化させないものである。


●Ia群

活動電位の最大立上り速度を減少させ、活動電位持続時間を延長させるNaチャネル遮断薬である。

キニジン(キニジン)、プロカインアミド(アミサリン)、ジソピラミド(リスモダン)、シベンゾリン(シベノール)、ピルメノール(ピメノール)などが含まれる。

上室性不整脈、心室性不整脈どちらにでも使うことがある群である。

歴史的にはキニジンが有名であるが用いられることは少ない。

同様に経口薬のプロカインアミドもあまりもちいられない。



●プロカインアミド(アミサリン)

静注薬としては非専門医でも扱いやすいと言われている、安全性の高い薬物である。

その場合は他のIa群やIc群の代用として用いられることが多い。

600mg程度の投与であれば不整脈治療の経験がほとんどない医師でも対応可能な範囲内の効果が期待できる。

400mg投与あたりで徐脈、QRS拡大といった心電図変化がみられる。


●ジソピラミド(リスモダン)

Naチャネル遮断作用と一部のKチャネル遮断作用と強い抗コリン作用をもつ。

抗不整脈薬の代表格のひとつである。

尿閉、口渇は頻度の多い副作用である。

まれだが低血糖を起こすこともある。


●シベンゾリン(シベノール)

Naチャネル遮断作用と一部のKチャネル遮断作用とわずかなCaチャネル遮断作用と弱い抗コリン作用をもつ。

副作用はジソピラミドより少ないが、まれに低血糖を起こすのは変わらない。


●ピルメノール(ピメノール)

Naチャネル遮断作用と一部のKチャネル遮断作用をもつ。

他のI群薬に抵抗性の心房細動で非常に効果的であることがある。




●Ib群

活動電位の最大立上り速度を減少させ、活動電位持続時間を減少させるNaチャネル遮断薬である。

リドカイン(キシロカイン)、フェニトイン、アプリンジン(アスペノン)などが含まれる。

心室性不整脈に用いられる。



●リドカイン(キシロカイン、オリベス)

心室性不整脈、特にVTの停止と予防の目的で用いられる薬である。

キシロカインとしては静注用と点滴用の2種類が存在する。

静注用キシロカイン50mg/2.5mlはそのまま1A用いる。

10%キシロカイン点滴用は現時点では誤点滴が多かったため使用できなくなっている。

同様のキシロカイン点滴用はオリベスK1%である。

通常,塩酸リドカインとして,1分間に1〜2mg(0.1〜0.2mL)の速度で静脈内注射する。

必要な場合には投与速度を増してもよいが,1分間に4mg(0.4mL)以上の速度では重篤な副作用があらわれるので、1分間に1〜2mgにどどめるのが常識的である。

無効時はアミサリン500mg(1Aが100mg/1ml)をブドウ糖液で20mlとし静注する。

オリベスはキシロカインと同じリドカイン製剤である。

こちらは静注用は100mg/5mlである。静注では1回50〜75mgまたは1mg/Kgの投与で10〜20分毎の反復投与となる。

1時間の最大投与は300mgまでとする。点滴では1000mg/10mlである。

5%ブドウ糖液で100mlとすると10mg/mlとなるため、6〜24ml/hrで維持をする。

一日2000〜2500mgまで投与可能で24ml/hr以上の速度で投与はしない。

キシロカインにはエピレナミン(エピネフリン)含有の物もあるので注意する。


●メキシレチン(メキシチール)

リドカインと殆ど使い勝手は変わらないが経口薬があるためこちらがよく用いられる。

リドカインと同様に安全域は非常に高く、症状を伴うPVCなどではよい適応となる。

経口薬では300mg分3などで用いられることが多い。

静注はリドカインアレルギーの際にリドカインの代用として用いる。

静注での維持量は0.4〜0.6mg/Kg/hrであるためメキシチール4A(1000mg)を5%ブドウ糖で100mlとすると10mg/mlとなるので、体重が50Kgならば2〜3ml/hrで維持ができる。



●アプリンジン(アスペノン)

Ib群の中で唯一上室性不整脈に効果がある薬である。

安全性が高く、心房細動の治療ではよく用いられる。





●Ic群

活動電位の最大立上り速度を減少させ、活動電位持続時間を変化させないNaチャネル遮断薬である。

フレカイニド(タンボコール)、プロパフェノン(プロノン)、ピルジカイニド(サンリズム)などが含まれる。

上室性不整脈、心室性不整脈の両方に使うことがある。

不整脈の治療で用いられるようになったのは比較的近年である。

他剤で無効であったら投与開始とするべきとされているが、2008年現在、最初から使用することを躊躇する危険性はほとんどない。




●ピルジカイニド(サンリズム)

心房細動でよく用いられる。

心臓以外の影響がほとんどない安全性の高い抗不整脈薬である。

非常によく用いられるのは薬効の高さではなくリスクの少なさによるところが大きい。

同様の安全性の高さで心房細動の患者の動悸といった症状に対応できる薬としてはIb群のアプリンジン(アスペノン)が知られている。


●フレカイニド(タンボコール)

器質性心疾患を背景としないPSVTやPafに対して安全で高い効果が期待できる薬である。

心房粗動には殆ど無効である。

CASTスタディで用いられたため患者の予後を悪くする抗不整脈薬のイメージがあるが、それはあくまでも器質性心疾患の場合である。


●プロパフェノン(プロノン)

特に特徴がないIc群の薬である。

posted by ホーライ at 18:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 不整脈 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月19日

「オキシコンチン」は何の薬? 特徴は? 何に注意しないといけない?

●オキシコンチン

強い痛みをおさえるお薬です。

オキシコドン (oxycodone) とは、アルカロイド系の鎮痛剤の一種。

アヘンに含まれる成分のテバインから合成される。塩酸塩(塩酸オキシコドン)がオキシコンチンの名称で市販されている。

分子式は C18H21NO4、分子量は 315.364、CAS登録番号は 。

中〜高程度の疼痛を緩和するために用いられる。

オピオイド受容体にはたらき鎮痛作用を示すものと考えられている。

中でも、モルヒネに比べてμ2受容体への親和性が弱いとも言われており、便秘や吐き気などの副作用が少ないとされる。

経験上、吐き気もモルヒネにくらべて難治性となる割合が低い。

しかしながら、これは便秘や吐き気対策が必要ないということではなく、使用に当たっては十分な配慮が求められる。

現在日本で発売されているのは、徐放製剤であるオキシコンチン、即効製剤であるオキノーム、ヒドロコタルニン酸との合剤としての注射剤であるパビナールである。

一般にオキシコドン40mgがモルヒネ60mgと同等の効果であるとされている。

高用量で他のオピオイドにはない神経因性疼痛への効果が動物実験でも確かめられており、臨床応用が期待されている。

一方、呼吸困難や咳嗽への効果はモルヒネと同等であるとの論文も見られるが、臨床的にはモルヒネより明らかに弱いという意見も多く、議論となっている。



●【働き】

激しい痛みは心身を疲弊させ、平穏な日々を送るのに何よりの障害となります。このような痛みを無理にがまんする必要はありません。昔と比べ、痛みに対する理解が深まり、その治療も系統的にきちんと行われるようになりました。

このお薬には、痛みをおさえる強力な作用があります。とくに持続する鈍痛に効果が高く、一般的な鎮痛薬が効きにくい各種のがんの痛みに有効です。初めから使うのではなく、他の鎮痛薬で十分な効果が得られないがん性疼痛に限り用います。


●【薬理】

中枢や末梢に広く分布するオピオイド受容体の主要な生理機能として、痛みの神経伝達経路を抑制方向に調整する働きがあげられます。つまり、オピオイド受容体が刺激を受けると、痛みを伝える神経の侵害刺激伝達が直接抑制され、また別の神経系統の下行性抑制系神経を介して間接的にも痛みが抑制されるのです。

この薬は、そのオピオイド受容体と結合することで、強力な鎮痛効果を発揮します。作用点であるオピオイド受容体にはいくつかの種類が知られていますが、鎮痛にかかわるのは、おもにμ(ミュー)受容体、次いでκ(カッパ)受容体です。それら2つのオピオイド受容体に活性を示す強オピオイド鎮痛薬になります。


●特徴

•オピオイドと呼ばれる部類の鎮痛薬です。

そのなかでもとくに強力な麻薬系の強オピオイド鎮痛薬になります。

有効限界がない完全作動薬とされ、用量増加とともに作用も増強します。

WHO方式がん疼痛治療法で第3段階に位置づけられ、中等度から高度の疼痛に適します。


•有効成分のオキシコドンは、ケシの実から採取されるアヘン由来のテバインから半合成されます。

作用のしかたは同類のモルヒネと同様ですが、代謝物の違いなどから副作用が多少軽減されます。

吐き気や便秘、せん妄、かゆみなど、モルヒネに比べれば少ないとされます。

また、腎障害時においても比較的安全に使用できます。



•錠剤とカプセルは効き目が長い徐放製剤です。1時間以内に効きはじめ、約12時間持続します。

持続痛をおさえるための基本薬として1日2回定時服用することになります。



•一方、粉薬のオキノーム散は速放性で効き目が早いです。

15分以内に効いてきますので、レスキュー薬として急な痛みの除痛に役立ちます。



● 効能 :中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛


●副作用

重い副作用は少ないのですが、便秘や吐き気、嘔吐、眠けなどを起こしやすいです。

ひどいようでしたら早めに受診し医師と相談してください。

眠けと吐き気は続けているうちに体が慣れて軽くなりますが、便秘は続くことが多いので下剤(通じ薬)で対処します。

異常に強い眠気がしたり、うとうと意識がもうろうとしてくる場合、薬の量が多過ぎるかもしれません。

ことに高齢の人など、過量による呼吸抑制を起こしかねませんので要注意です。

ご家族や周囲の方もその点に気をつけ、異変に気付いたら医師と連絡をとり指示をあおぎましょう。

長く続けていると、体が薬に頼りがちになってくることがあります。このとき急に中止すると、吐き気や嘔吐、頭痛、不安感、震えなど反発的な症状が出現します。ただ、がん疼痛治療においては、強い依存を生じることは少ないといわれています。あまり心配しすぎないで、痛みがおさまる必要最小限の範囲で正しく使用することが大切です。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください •呼吸抑制..意識がうすれる、呼吸が弱い・少ない(10回/分未満)、不規則な呼吸、異常ないびき。

•依存..長期に多めの量を飲み続けると、体が薬に慣れた状態になりやめにくくなる。このとき急に中止すると、いらいら、強い不安感、不眠、ふるえ、けいれん、混乱、幻覚など思わぬ症状があらわれることがある(徐々に減量すれば大丈夫)。

•錯乱..混乱・もうろう状態、取り乱す、意味不明な言動

•麻痺性イレウス..食欲不振、吐き気、吐く、激しい腹痛、ひどい便秘、お腹がふくれる。

•肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。



【その他】 •便秘、吐き気、吐く、食欲不振、口の渇き

•眠気、めまい、ぼんやり

•尿が出にくい

以上
posted by ホーライ at 03:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 鎮痛薬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『心不全の治療薬』としての「利尿薬」「血管拡張薬」等

●心不全の治療薬(1)

原則として、静脈うっ滞を改善するには利尿薬が、心臓の拍出量改善のためには強心薬が使われる。


■■■ 利尿薬 ■■■

利尿薬(りにょうやく、英: diuretic)は、尿量を増加させる作用を持つ薬物の総称である。

尿は水分や電解質を体外へ排出する最も効果的な手段である。

尿は腎臓でつくられるが、腎臓は体内の状況に応じて尿の量や濃度を調節し、全身の体液を一定に保つよう制御している。

利尿薬は、この調節機構が適切にはたらかない病態などにおいて、水分を体外に排出するために用いられる。腎臓の項も参照のこと。


*浸透圧利尿薬

浸透圧利尿薬は糸球体で濾過されると再吸収されないため、尿細管内の浸透圧が上昇し、水の再吸収が抑制される。脳圧亢進時などに用いられる。

・D-マンニトール

・濃グリセリン(グリセオール)



*ループ利尿薬

ヘンレのループにおいてNaとClの再吸収を阻害する。

腎機能に悪影響を与えないため、利尿薬の第一選択として使用される。

また心不全、高血圧治療薬としても使用される。

・フロセミド(ラシックス,オイテンシン, 後発品あり)

・トラセミド (ルプラック)

・アゾセミド(ダイアート、長時間作用型)

・ピレタニド(アレリックス、作用時間はフロセミドに近い)



*サイアザイド系利尿薬

遠位尿細管においてNaとClの再吸収を阻害する。

降圧剤としても使用される。

大規模臨床試験では他剤と遜色ない結果を得ており、現在も高血圧治療薬の代表的なもの。

・ヒドロクロロサイアザイド(HCTZ,ダイクロトライド)

・トリクロルメチアジド(フルイトラン)

・インダパミド(ナトリックス)

・クロルタリドン(ハイグロトン)


*K保持性利尿薬

抗アルドステロン薬とも。

遠位尿細管においてアルドステロン(抗利尿ホルモン)に拮抗し、Naの再吸収を阻害する一方、Kの尿中排泄を抑制する。

ループ利尿薬等と合わせて、肝硬変、うっ血性心不全などに対して使用される。

またセララは高血圧に対してしか日本では適応症はない。

・トリアムテレン(トリテレン)

・スピロノラクトン(アルダクトンA)

・カンレノ酸カリウム(ソルダクトン注)

・エプレレノン(セララ錠)


*その他の利尿薬

・アセタゾラミド(ダイアモックス)は、緑内障やメニエール病に対して使用される。

・塩酸ドパミン(イノバン)は、腎血流量を増やして間接的に利尿作用を示す。

・アミノフィリン(ネオフィリン)や強心薬も利尿作用を示す。

・カルペリチド(ハンプ)は心房性Na利尿ペプチド(ANP)と呼ばれ、重症心不全時の利尿薬として使用される。

・トルバプタンは、世界初のバソプレシンV2-受容体拮抗剤。大塚製薬より「サムスカ錠 15mg」として2010年12月14日上市された。



●副作用

・低カリウム血症

・低ナトリウム血症

・高尿酸血症

アロプリノール(ザイロリック)を服用するのではなく、利尿薬減量のうえ、ロサルタンやシルニジピン併用とするとよい。


ボクシング等の階級制の競技において、体重調整の最後の手段として利尿剤が使用されることがあるが、ドーピング検査においても利尿剤は禁止薬物として指定されていることが多い。

副作用も大きく、治療以外の目的で利尿剤を使用することは危険も伴うため、絶対にさけるべきである





■■■ 血管拡張薬 ■■■

血管拡張薬(けっかんかくちょうやく、英: vasodilators)は、中枢性あるいは末梢性に作用して血管拡張を引き起こす薬物の総称。

その使用目的から抗高血圧薬、心不全治療薬、抗狭心症薬、脳循環改善薬、末梢血行不全改善薬に分類される。


●作用血管による分類

*血管拡張薬

プロレナールが知られている。


*冠血管拡張薬

ペルサンチン、コメリアンコーワ、ロコルナールなどが知られている。


*脳循環改善薬

ケタス、セロクラールが知られている。



●作用機序による分類

*カルシウム拮抗薬[

*亜硝酸薬

*レニン阻害薬

*アンジオテンシン変換酵素阻害薬

*アンジオテンシン受容体拮抗薬

*α遮断薬

*β刺激薬




●心不全の治療薬(2)

心不全の予後を改善する目的として、交感神経β受容体遮断薬やアンジオテンシン変換酵素、また利尿薬の一つであるスピロノラクトンなどの抗アルドステロン薬の併用による治療が推奨されている。


■■■ アンジオテンシン変換酵素 ■■■

●構造・発現

アンジオテンシン変換酵素はその活性中心(HExxH)に亜鉛を有するメタロプロテアーゼの一種であり、細胞膜上に存在する。

アンジオテンシン変換酵素には2つの異なるタイプが存在し、それぞれ somatic ACE (sACE) と germinal ACE (gACE) と呼ばれる。

sACEは全身の細胞に広く分布するのに対して、gACEは発現している組織が限られており、精巣に発現していることが知られている。

また、sACEは活性部位をN末端側とC末端側に2つ持つのに対し、gACEは活性部位を1つしか持たない。

sACEのN末端及びC末端の活性中心部位はそれぞれアミノ酸配列は同じであるにもかかわらず、基質に対する反応性など性質が異なる点が存在する。



●機能

アンジオテンシン変換酵素の基本的な働きはアンジオテンシンIを活性体へ変換し、血圧の制御を行うことにある。

また、アンジオテンシン変換酵素はブラジキニンの分解に関与するキニナーゼIIと同等であることが知られている。

つまり、アンジオテンシン変換酵素はアンジオテンシンIの変換とキニナーゼIIの分解の両方に働く酵素である。

その他にもサブスタンスPや黄体形成ホルモン放出ホルモン (LH-RH) 等を基質とすることが知られており、基質特異性は低い。

近年ではアンジオテンシン変換酵素のレニン-アンジオテンシン系 (英: renin-angiotensin system、RAS) 以外に対する機能も解明されつつある。


●ACE2

2000年、アンジオテンシン変換酵素のホモログとしてACE2が同定された。

ACEとACE2の構造は類似しているが、Ang I,Ang IIの両方を分解する一方でブラジキニンを分解できないことが報告されていることからACEとACE2では基質が異なると考えられている。

また、ACE2はエナラプリル、カプトプリル等のACE阻害薬によって抑制されない




■■■ 抗アルドステロン薬 ■■■


●スピロノラクトン

スピロノラクトン (spironolactone) は抗アルドステロン薬のひとつ。

CAS登録番号は [52-01-7]、その名の通りスピロ環構造とラクトン環構造をあわせ持つ。

受容体とアルドステロンとの結合に拮抗することによりK+保持性の利尿作用を示す。

主に心不全、肝硬変性腹水、高血圧治療薬としてフロセミドやクロロチアジドと併用される。

特に、アルドステロン分泌が異常亢進する原発性アルドステロン症では第一選択の治療薬である。

副作用として高K+性アシドーシス、女性化乳房、皮膚発疹などが存在する。

女性ホルモン作用を併せ持つため、高血圧治療薬としては歓迎されないものであるが、これを応用して男性型の脱毛症治療薬として利用する方法がしばしば散見される。

また、アルドステロン受容体により特異的に結合することで女性ホルモン作用が軽減された、第二世代のアルドステロン拮抗薬(エプレレノン)も発売されている。

以上

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2014年04月14日

『心不全』の概略、病態、診断、治療を述べよ

●心不全

心不全(しんふぜん、heart failure)は、心臓の血液拍出が不十分であり、全身が必要とするだけの循環量を保てない病態を指す。

そのような病態となるに至った原因は問わず、端的に述べると「心臓の収縮力が低下」した状態である。



【総論】

心不全の症状は、主に鬱血によるものである(鬱血性心不全)。

左心と右心のどちらに異常があるかによって、体循環系と肺循環系のどちらにうっ血が出現するかが変わり、これによって症状も変化する。

このことから、右心不全と左心不全の区別は重要であるが、進行すると両心不全となることも多い。

また、治療内容の決定に当たっては、急性と慢性の区別も重要である。

急性心不全に当てはまるのは例えば心筋梗塞に伴う心不全であり、慢性心不全に当てはまるのは例えば心筋症や弁膜症に伴う心不全である。

念のため付け加えると、急性心不全が終末期状態としての心不全を指しているわけではない(急性心不全は治療により完全に回復する可能性がある)。

最近では、心臓の収縮機能は正常であるが拡張期機能が低下した心不全(HF−PEF:ヘフペフ)が、高齢女性に多いことがわかって来ており病態や治療方法の確立が急がれている。




【病態】

左心不全と右心不全

症状を来たす原因が、主に左心室の機能不全によるものなのか、右心室の機能不全によるものなのかによって、心不全を大きく2つに分類する方法である。

厳密に区別することができない場合も多いが、病態把握や治療方針決定に有用であるため、頻繁に使用される概念であるので後述する。

収縮不全と拡張不全 心不全の30%から50%は左心室の十分な拡張を認めず、拡張不全が占めると考えられている。

拡張不全は収縮不全に比べ女性、高齢者に多いが、まだ診断基準は定まってはいない。

拡張不全には高血圧や虚血性心疾患の合併が多い。



●左心不全

左心不全(さしんふぜん、left heart failure)は、左心系の機能不全にともなう一連の病態のことである。

左心系は体循環を担当することから諸臓器の血流低下が発生するほか、心拍出量低下による血圧低下、左房圧上昇による肺うっ血が生じる。

肺うっ血は、肺が左心系の上流に位置することから出現するものである。


*血圧低下の症状

頻脈、チアノーゼ、尿量低下、血圧低下、手足の冷感、意識レベルの低下肺うっ血の症状
肺高血圧、胸水、労作時呼吸困難、発作性夜間呼吸困難、咳嗽、チェーンストークス呼吸、湿性ラ音


*胸部X線画像においては、

心陰影の拡大
肺うっ血
Kerley's B line

が見られる。

左心不全は、さらに肺血流の停滞を経由し、右心系へも負荷を与えるため、左心不全を放置したとき、右心不全を合併するリスクが高くなる。特に心不全における呼吸困難は、横になっているよりも座っているときの方が楽である、という特徴を持つ(これを起座呼吸(きざこきゅう、orthopnea)という)。


●右心不全

右心不全(うしんふぜん、right heart failure)は、右心系の機能不全にともなう一連の病態のことであり、静脈系のうっ血が主体となる。

この場合、液体が過剰に貯留するのは体全体、特に下肢であり、心不全徴候としての下腿浮腫は有名である。

その他、腹水、肝腫大、静脈怒張など、循環の不良を反映した症状をきたす。


右心不全の多くは、左心不全に続発して生じるかたちとなる。

左心不全で肺うっ血が進行し、肺高血圧をきたすまでに至ると、右室に圧負荷がかかり、右心不全を起こす。

治療薬にコルホルシンダルパートがある。

右心不全のみを起こすのは、肺性心、肺梗塞など、ごく限られた疾患のみである。




●急性心不全

急性心不全においては、心機能の低下が代償可能な範囲を上回り、急激な低下を示すことから、血行動態の異常は高度となる。なお、左心不全が多い。

症状としては、呼吸困難、ショック症状といった急性症状が出現する。

治療方針としては、血行動態の正常化を図る(心臓負荷を軽減し、心拍出量を増加させる)ことが優先され、迅速な処置が求められる。




●慢性心不全

長期にわたって進行性に悪化するため、代償された状態が長期間持続したのちに破綻する。

これによって、収縮能および拡張能は低下し、また、代償機構の破綻によって、増大した体液が貯留することとなる。

この結果、倦怠感と呼吸困難の持続が出現し、運動耐容能が低下する。

治療は、心機能の改善やQOLの向上と生命予後の改善を目的として、自覚症状の軽減を主眼とするものとなる。





●診断

前述のような臨床症状から疑われ、心エコー検査によって診断される。

エコーによって、心不全の原因疾患の検索がなされ、心臓の動きは十分か、拍出量がどの程度かなどを定量的に把握することができる。

胸部X線写真や心電図、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)などの血液生化学検査が参考になることもあるが、通常はエコーが最も多くの情報をもたらす。

観血的には肺動脈カテーテルを挿入し心拍出量や肺動脈楔入圧(PCWP)、中心静脈圧(CVP)の測定を行う。




●治療

原則として、静脈うっ滞を改善するには利尿薬が、心臓の拍出量改善のためには強心薬が使われる。

その他血管拡張薬を併用することもある。

遺伝子組み換えヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)も用いられる。

ただし、心不全は様々な原因によって起こるので、原疾患によって治療法も大きく異なる。

心不全の予後を改善する目的として、交感神経β受容体遮断薬やアンジオテンシン変換酵素、また利尿薬の一つであるスピロノラクトンなどの抗アルドステロン薬の併用による治療が推奨されている。


*急性期

急性期治療においては、CS(Clinical Scenario)分類を用いることが提唱されている。

これは収縮期血圧(sBP)をベースにしたもので、急性心不全発症時のsBPが高いほど心予備能が高い、すなわち予後良好である、という知見に基づいている。

CS分類においては、まず来院直後のsBPをもとに3分類、また明らかに治療戦略の異なるものを独立させて、合計5分類を行なう。




●入院期

入院期の治療においては、フォレスター分類(Forrester分類)が用いられてきた。

これは、心臓の拍出量を表す心係数(2.2 L/min/m2を境界とする)と、静脈のうっ滞の程度を表す肺動脈楔入圧(18 mmHgを境界とする)とから、心不全の状態を4つに分類し、それぞれに適切な治療法を提案するものであった。

しかし、肺動脈楔入圧の測定はかなり侵襲度が大きいこともあり、身体診察のみで分類できるノーリア分類(Nohria分類)の活用が提唱されている。



●予後

原疾患によって異なる。

一般的には、心不全に対して適切な治療がなされていれば、長期生存も可能である。

・心臓弁膜症…重症であれば手術など。

・不整脈…薬物治療やカテーテルアブレーションなどが行われる。

・脚気…ビタミンB1の投与で劇的に改善する。




●その他

死因としては「心不全=心臓が止まった」としての意味でしかないため、死亡診断書の死因としては認められない。(病理学上の正式な死因が記載される)。

突然死に至ることもある病態であるため、芸能人、実業家、政治家などが自殺や薬物過剰摂取などで急死した場合などにおいて、遺族や関係者の意向、あるいは商業的・政治的な事情などからこの事実をあえて伏せたい場合に、死因を急性心不全として公表する例もある。

なお、これと同様のことは急性心筋梗塞、脳出血などにもいえる。

実際、著名人の死について、死亡当初は急性心不全として公表されながらも、実際には自殺や薬物の過剰摂取事故であったという事実が、死後一定の期間経った後に遺族や関係者などによって明らかにされた例は存在する。

また、急死時において最後まで死因を特定しにくい時に、検死報告書などに便宜上「急性心不全」と記載されることが時折見られ、過去には時津風部屋力士暴行死事件の際にこれが大きな問題となったことがある。


以上
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2014年04月12日

精神疾患治療薬(7)「抗うつ薬(2)」三環系抗うつ薬

三環系抗うつ薬(さんかんけいこううつやく、英: Tricyclic Antidepressants, TCA)は、抗うつ薬の種類の一つ。

名称は、構造中にベンゼン環を両端に含む環状構造が3つあることを共通に特徴とする事に由来する。

第1世代、第2世代抗うつ薬とも分類される。

三環系抗うつ薬はノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質に関与する神経細胞受容体に作用し、遊離するノルアドレナリン、セロトニンを増やす(正確には神経細胞による再取り込みを阻害する)働きをする。

また、臨床効果が現れるのに飲み始めてから1〜2週間はかかるため、そのことに留意して服用する必要がある。

一般に、選択的作用が比較的低い。

副作用(主に口渇、便秘、排尿困難など)を伴う場合がある。

また、この排尿困難の副作用を逆手に取り、夜尿症の治療に三環系抗うつ薬を用いるケースもある。

他の抗うつ薬の分類として、四環系抗うつ薬(第2世代)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI、第3世代)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI、第4世代)、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬 (NaSSA) などがある。

これらは副作用は少ないものの、薬効は低くなる傾向にある(セロトニン選択性が高くなるかわりに抗ヒスタミン作用が低下し、不眠や鎮静への作用が減るなど)。

近年、これら以外の薬理作用を示す抗うつ剤(トリアゾロピリジン系など)も登場している。

緊急入院を要する重症例ではTCAが有効性に勝るのではないかと言う専門家の意見がある



●第1世代

塩酸アミトリプチリン (トリプタノール、ラントロン)

塩酸イミプラミン (イミドール、トフラニール)

塩酸クロミプラミン (アナフラニール)

マレイン酸トリミプラミン (スルモンチール)

塩酸ノルトリプチリン(ノリトレン)



●第2世代

アモキサピン (アモキサン)

塩酸ドスレピン (プロチアデン)

塩酸ロフェプラミン (アンプリット)



●アミトリプチリン

アミトリプチリン(Amitriptyline)は、抗うつ薬、睡眠導入剤として用いられる有機化合物の一種。

分子式は C20H23N。水、エタノール、酢酸に溶けやすくジエチルエーテルに溶けにくい。苦く麻痺性がある。

脳内においてノルエピネフリン及びセロトニンの再取り込みを抑制し、シナプス領域のモノアミンが増量することにより、抗うつ作用を示す。

三環系抗うつ薬の一種で、アミトリプチリン塩酸塩は、日医工よりトリプタノールレジスタードマーク、山之内製薬(現在は、藤沢薬品工業を吸収合併したためアステラス製薬に改称)からラントロンレジスタードマーク、沢井製薬からノーマルンレジスタードマークという商品名で発売されている。うつ病・うつ状態、不眠症、夜尿症の治療薬に使用される。適応症ではないが線維筋痛症にも用いられることがある。

トリプタノールについては後発医薬品が発売されているが、ラントロンおよびノーマルンについては、トリプタノールとは一部成分が異なることから、先発薬扱いとされており、この2社(アステラスのラントロン、沢井のノーマルン)に関する後発薬は特許期限が到達していないことから発売されていない。


抗コリン作用が強く、口渇・便秘・めまい・眠気・排尿障害などの三環系抗うつ薬にありがちな副作用が強く現れやすい。

ただ、効果も高いとされているので、他の抗うつ薬で思わしい効果が出ない場合に処方されやすい。

獣医学領域ではイヌの分離不安症の治療に使用される。

アミトリプチリンは、うつ病・不安障害・注意欠陥多動性障害・偏頭痛の予防・摂食障害・双極性障害・ポスト神経痛・不眠症などに用いられる。

アミトリプチリンの断薬は徐々に行う必要があり、それは全体で3ヶ月を超えてはいけない。(It should be gradually withdrawn at the end of the course, which overall should be of no more than three months)

ランダム化比較試験において、有痛性糖尿病性神経障害に対し、アミトリプチリン、デュロキセチンおよびプレガバリンの三者は同等の効果がみられた。

抗うつ作用に関する詳細な作用機序は明らかにされていないが、脳内におけるノルアドレナリンおよびセロトニン再取り込みを抑制する結果、シナプス領域にこれらモノアミン量が増量することにより、抗うつ作用を示すと考えられている。

アミトリプチリンは、ラット脳においてノルアドレナリンの再取り込み、およびマウス脳切片でのセロトニンの再取り込みを抑制することが確認されている。

また、レセルピン及びテトラベナジンに対する拮抗作用があり、アミトリプチリンはマウスにおいて、レセルピンによる体温降下、およびテトラベナジンによる鎮静作用を抑制する。

加えて、麻酔イヌにおけるノルアドレナリンの昇圧反応を、アミトリプチリンは増強する



●イミプラミン

イミプラミン (imipramine) は、抗うつ薬として用いられる有機化合物の一種。分子式は C19H24N2。

塩酸塩は無臭で水に溶けやすい。第1世代の三環系抗うつ薬として知られ、うつ病、うつ状態、夜尿症の治療に用いられる。

イミプラミン塩酸塩は、アルフレッサファーマからトフラニール、田辺三菱製薬からイミドールなどの商品名で販売されている。

脳内神経末端へのノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、セロトニンの再取り込みを阻害する。

CYP1A2による脱メチル化を受け、活性代謝物のデシプラミンとなる。




●クロミプラミン

クロミプラミン(clomipramine)は、抗うつ薬として用いられる有機化合物の一種。

分子式は C19H23ClN2。

酢酸に極めて溶けやすく、酢酸エチル、ジエチルエーテルに溶けにくい。

塩酸塩は白色または微黄色結晶。融点192–196℃。

1960年代にスイスのガイギー社(現・ノバルティス)によって開発された。

脳内のセロトニンおよびノルアドレナリンの神経終末への取り込みを阻害する。

三環系抗うつ薬の一種で、アルフレッサファーマから塩酸塩が「アナフラニール」という商品名で発売されている。

うつ病・うつ状態、強迫性障害、夜尿症、不眠症の治療薬に使用される。

獣医学領域ではイヌの分離不安症の治療薬として使用される。




●ノルトリプチリン

ノルトリプチリン (nortriptyline) は、抗うつ薬として用いられる有機化合物の一種。

分子式は C19H21N。

CAS登録番号 は [72-69-5]。

無臭で水に不溶。第1世代の三環系抗うつ薬として知られ、うつ病、うつ状態などの治療に用いられる。

脳内神経末端へのノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、セロトニンの再取り込みを阻害する。

塩酸塩が、大日本住友製薬からノリトレンという商品名で販売されている。

作用機序として、ノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害し、シナプス間隙のノルアドレナリン量を増加させることにより、抗うつ作用を示すと考えられている。

ラット脳シナプトゾームにおいては、ノルアドレナリン、セロトニン、ドパミンいずれの再取り込みも阻害するが、特にノルアドレナリンに対して強い阻害作用を示す (in vitro)。

また、レセルピンによる体温下降作用に対し抑制作用を示す (マウス、腹腔内投与)。

二重盲検比較試験および一般臨床試験における有効性についての評価症例数は508例であり、 精神科領域におけるうつ病およびうつ状態疾患に対し、有効以上が52% (262/508)、やや有効以上が73% (372/508) であった。




●アモキサピン

アモキサピン (Amoxapine) は、抗うつ薬として用いられる有機化合物の一種。

分子式は C17H16ClN3O、CAS登録番号は [14028-44-5] で、白色または淡黄白色の結晶。無味で、無臭または特異臭。水にはほとんど不溶。

日本ではワイス(現ファイザー)製造販売元、武田薬品販売でアモキサンの商品名で唯一販売されている。

特許は切れているが、ジェネリックは発売されていない。

脳内神経末端へのノルアドレナリン、セロトニンの再取り込み阻害作用を有すが、活性代謝物である7-hydroxy体は強力なドパミン2受容体遮断作用をもつ。

この代謝物の作用により、抗精神病薬に類似した錐体外路症状(EPS)や悪性症候群が現れることがある。

第二世代の三環系抗うつ薬として知られ、抗コリン作用が軽減されている。

うつ病、抑うつ状態、パニック障害、過食症、線維筋痛症などの治療に用いられる。

従来の三環系抗うつ剤に対し、妄想性うつ病に効果発現が早いとされるが、一般的に効果の発現には2~3週間かかるとされる。

抗うつ作用はSSRIやSNRIと比較して強力とされるが、すぐに効果が現れないからといって服用を中止することなく、服用を継続したうえで治療効果について医師と相談していくべきである。また突然の服用中止は重大な副作用を誘発する危険性があるため、薬剤師による服薬指導を遵守すべきである。



以上
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2014年04月10日

精神疾患治療薬(6)「抗うつ薬(1)」

抗うつ薬(こううつやく、antidepressant)とは、典型的には、抑うつ気分の持続や希死念慮を特徴とするうつ病のような気分障害に用いられる精神科の薬である。

不安障害のうち全般性不安障害(GAD)やパニック障害、強迫性障害にも処方される。


投薬による結果がよくないため非推奨であるものに、摂食障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)がある。


添付文書にて適応が認められていない慢性痛、月経困難症などの適用外用途への処方が行われる場合がある。

ほかにADHD、薬物乱用による抑うつ、いびき、偏頭痛の場合もある。

適用外用途の処方には議論がある。

場合によっては、アメリカでは司法省による制裁が行われている。



多くの抗うつ薬は、効果の発現が2〜6週間遅れるが、効果はしばしば1週間後に見られる。

しかしながら投与直後から、自殺の傾向を高める賦活症候群の危険性がある。

日本でも添付文書にて、24歳以下で自殺念慮や自殺企図の危険性を増加させることを注意喚起している。



抗うつ薬の有効性が議論されており、現在では軽症のうつ病に対しては、必ずしも薬剤の投与は一次選択にはなっていない。

また使用にあたっても1種類の抗うつ薬の使用が原則とされる。

2010年には、精神科領域の4学会により、医師に対して不適切な多剤大量処方に対する注意喚起がなされている。



抗うつ薬の使用は、口渇といった軽いものから、肥満や性機能障害など様々な#副作用が併存する可能性がある。

2型糖尿病の危険性を増加させる。

さらに他者に暴力を加える危険性は抗うつ薬全体で8.4倍に増加させるが、薬剤により2.8倍から10.9倍までのばらつきがある。



急に服薬を中止した場合、ベンゾジアゼピン離脱症状に酷似した離脱症状を生じさせる可能性がある。

離脱症状は、少なくとも2〜3週間後の再発とは異なり、数時間程度で発生し、多くは軽度で1〜2週間でおさまる。

離脱症状の高い出現率を持つ薬剤、パロキセチン(パキシル)で66%やセルトラリン(ゾロフト)で60%がある。


製薬会社は、特許対策のために分子構造を修正し似たような医薬品設計を行っていたが、2009年にはグラクソスミスクラインが神経科学分野での採算の悪さを理由に研究を閉鎖した。

その後、大手製薬会社の似たような傾向が続いた。



●主な抗うつ薬

*選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

第三世代の抗うつ薬と呼ばれるものであり、フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、パロキセチン(パキシル)セルトラリン(ジェイゾロフト)、シタロプラム(日本未発売)、エスシタロプラム(レクサプロ)が知られている。

三環系抗うつ薬(TCA)より副作用が若干少ないとされる。

急に服薬をやめるとSSRI離脱症候群が発現する恐れがある。

強迫性障害、社交不安障害、パニック障害に適応がある。

躁うつ病には禁忌である。中等度から重症の大うつ病では第一選択となる。

効果発現に2週間程度必要である。

投与初期(1〜2週間程度)は悪心、嘔吐、不安、焦燥、不眠といった症状が出現することがあるが継続投与で軽快、消失する。

セロトニン受容体に対する急性刺激と考えられている。

少量ではセロトニン選択性であるが、高用量となるとノルアドレナリンの再取り込みも阻害するようになる。




*セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)

第四世代の抗うつ薬と言われるもので、ミルナシプラン(トレドミン)、ヴェンラファキシン(エフェクサー)(日本では開発中止)、デュロキセチン(サインバルタ)、ネファゾドン(サーゾーン)が含まれる。

SSRIよりも意欲を高めるといった効果が期待されている。

TCAのイミプラミンに近い作用となるがセロトニンとノルアドレナリン以外の受容体と相互作用をしないため副作用は非常に少ない。

頭痛、口渇、排尿障害といった副作用は報告されている。




*三環系抗うつ薬(TCA)

もっとも古い抗うつ薬で1950年代に登場した。

セロトニンやノルアドレナリンの再取り込みの阻害が抗うつ作用にかかわると考えられている。

第1世代としては塩酸アミトリプチリン (トリプタノール、ラントロン)、塩酸イミプラミン (イミドール、トフラニール)、塩酸クロミプラミン (アナフラニール)、マレイン酸トリミプラミン (スルモンチール)、塩酸ノルトリプチリン(ノリトレン)。

第2世代としてはアモキサピン (アモキサン)、塩酸ドスレピン (プロチアデン)、塩酸ロフェプラミン (アンプリット)が知られている。

第3世代としての選択的セロトニン再取り込み阻害薬が登場してからは軽症、中等症のうつ病の第一選択からは外れたが2008年現在も使われている薬である。

その理由としては抗コリン作用をはじめとした多くの副作用が存在するがうつ病の改善率が70〜80%と非常に高いことが理由にあげられる。

TCAの抗うつ作用はほとんど差がないと言われているが、患者によって特異的に有効なTCAが存在するのも事実である。

抗コリン作用が軽快している第二世代の薬物から使用し、副作用に合わせて変えていくのが一般的である。

特徴としては三級アミンは二級アミンと比べると、鎮静作用、抗コリン作用が強く、起立性低血圧も起こしやすい。

鎮静と体重増加の作用はヒスタミンH1受容体に対する親和性と相関している。

起立性低血圧はアドレナリンα1受容体との親和性に相関しているといったところである。

またTCAは内服中断後、1週間は体内にとどまると考えられている。

危険な副作用としてはキニジン様作用といわれる心臓障害がある。

緊急入院を要する重症例ではTCAが有効性に勝るのではないかと言う専門家の意見がある。


・アミトリプチリン (トリプタノール、ラントロン)抗コリン作用、鎮静作用が最も強いTCAである。

若年者で入眠障害がある患者で好まれる傾向がある。

就寝前に多く飲ませることが多い。


・イミプラミン (イミドール、トフラニール)

最初に作られたTCAである。

アミトリプチリン よりも抗コリン作用、鎮静作用が弱いがノルトリプチリンよりは強い。

起立性低血圧も比較的少ない。

パニック障害に効果があることもある。


・クロミプラミン (アナフラニール)

セロトニンの再取り込み阻害作用が強い。

痙攣がおこる頻度が他のTCAよりも強いため、抗けいれん作用の強い抗不安薬を併用することが多い。

注射薬があるため、うつ病による不穏、焦燥に対して3時間程度で25mgを点滴静注することもある。


・ノルトリプチリン(ノリトレン)

セロトニンよりもノルアドレナリンの再取り込みを強く抑制する。

焦燥感を起こすことが少ない。有効治療量の幅が狭く処方が難しい。


・アモキサピン (アモキサン)

第二世代のTCAであり、副作用、特に抗コリン作用が軽減されている。

他のTCAよりも効果発現が早いといわれている。



*四環系抗うつ薬

ノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害し、セロトニンの再取り込みは阻害しない。

抗コリン作用はTCAよりも軽減されている傾向があるが、痙攣を起こしやすく、抗けいれん作用の強い抗不安薬(ジアゼパムやニトラゼパム)を併用することが多い。

塩酸マプロチリン(ルジオミール)、塩酸ミアンセリン(テトラミド)、マレイン酸セチプチリン(テシプール)が有名である。


・ミアンセリン(テトラミド)

α2受容体を遮断することでノルアドレナリンの放出を促進する。

抗ヒスタミン作用が強い薬物である。

心毒性がないため非常に使いやすい抗うつ薬である。

呼吸抑制と鎮静という副作用がある。

SSRIとの併用による増強効果が報告されている数少ない薬物である。


・セチプチリン(テシプール)

ミアンセリンを改良した薬物。

中枢性セロトニン作用をもつ。

鎮静の副作用はまれ。


・トリアゾロピリジン系抗うつ薬(SARI)

塩酸トラゾドン(商品名レスリン、デジレル)が有名である。

5-HTの取り込みを阻害する薬物である。


・モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)

三環系抗うつ薬とほぼ同時期に抗うつ薬として使われ始めたが副作用が強かったため扱いにくく、現在は抗うつ薬としてはほとんど使われない。

パーキンソン病治療薬として専ら用いられている。



・ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)

NaSSAはNoradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressantの略。

2009年9月7日から使用が開始された。

これまで日本にはなかった作用機序の薬で、抗うつ薬分野での新規作用機序の新薬は10年ぶりとなる。

これまでのようにシナプスにおける神経伝達物質の再取り込みを阻害して濃度を上げるのではなく、セロトニン、ノルアドレナリンの分泌量そのものを増やす作用がある。

すなわち、α2ヘテロ受容体とα2受容体をふさぎ、セロトニンやノルアドレナリンが出ていないと錯覚させ、分泌を促す。

また、5-HT1受容体にセロトニンが結びつきやすくするために、5-HT1以外のセロトニン受容体をふさぐ。

・ミルタザピン - 2009年9月7日に国内での処方が解禁された。

開発元のN.V.オルガノンと統合したシェリング・プラウ(現在は合併してMSD)からレメロン、Meiji Seika ファルマからリフレックスとして発売されている。

2009年9月現在、90カ国で使用されている。

うつ病患者を対象としたミルタザビンの日本での臨床試験(プラセボ対照比較試験)では、投与1週目から有意に高い改善効果が示されており、長期投与試験では、52週まで抗うつ効果が維持されることが確認されている。

こうした試験結果から、従来薬に比べて、効果発現までの時間が短く、持続的な効果が得られる抗うつ薬として期待されている。

ただし国内の臨床試験で、82.7%に何らかの副作用が認められたことに留意する必要がある。

高頻度に認められたのは、傾眠(50%)、口渇(20.6%)、倦怠感(15.2%)、便秘(12.7%)、アラニン・アミノトランスフェラーゼ増加(12.4%)などであり、重大な副作用としては、セロトニン症候群、無顆粒球症、好中球減少症、痙攣、肝機能障害、黄疸、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)が報告されている。



*ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬(NDRI)

日本国内においては未承認である。

塩酸ブプロピオン(商品名ウェルブトリン)が知られている。




*選択的セロトニン再取り込み促進薬(SSRE)

日本国内においては未承認である。

チアネプチン(en:Tianeptine)が知られている。



●治療効果

抗うつ薬の効果は、副作用に関連するリスクを正当化するために偽薬をしのぐべきである。

うつ病の重症度の評価にハミルトンうつ病評価尺度(英語版)(HAM-D)が、しばしば用いられる。

HAM-Dの17項目のアンケートからの最大スコアは52点である;高いスコアがより重度のうつ病である。

何が薬に対する十分な反応に相当するのかについては十分に確立されていないが、寛解あるいはすべてのうつ症状の実際の除去が目標であり、しかしながら寛解率はまれにしか公表されていない。

症状軽減の割合は、抗うつ薬による46-54%に対して偽薬では31-38%である。



234の研究から、第二世代の13種の抗うつ薬(ブプロピオン、シタロプラム、デスベンラファキシン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン(日本では未認可)、フルボキサミン、ミルタザピン、ネファゾドン、パロキセチン、セルトラリン、トラゾドン、ベンラファキシン(日本では開発中止))にて、年齢、性別、民族、併発疾患を考慮しても、うつ病の急性期、継続期、維持期の治療に対して、ほかのものを上回る臨床的に意味のある優越は発見されなかった。

うつ病の薬物治療の有効性について、アメリカ国立精神衛生研究所によって委託されこれまでに最大規模かつ高額な費用がかかった研究、STAR*D (Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression) が実施された。

その結果の概要は以下である。

STAR*Dの各過程は14週間ごとであり、従って14週後における寛解率や脱落率を表す。

治療の最初の過程の後、2,876人の参加者のうち、27.5%がHAM-Dの点数が7点以下となり寛解に達した。

21%が脱落した。


次の治療の過程の後、残り1,439人の参加者のうち21-30%が寛解した。

310人の参加者だけが研究の継続に協力的であるか継続可能であった。

薬の切り替えでは約25%の患者が寛解に達した。

3番目の治療の過程の後、残り310人の参加者のうち、17.8%が寛解した。

4番目の治療の過程の後、残り109人の参加者のうち、10.1%が寛解した。

1年後の追跡調査で、1085人の寛解した参加者のうち、93%が再発するかこの研究を脱落した。



この研究で比較されたどの薬の間にも、寛解率、反応率、寛解あるいは反応までの期間に、統計的あるいは意味のある臨床的な違いはない。

ブプロピオン徐放錠、ブプロピオン、シタロプラム、リチウム、ミルタザピン、ノルトリプチリン、セルトラリン、トリヨードサイロニン、トラニルシプロミン、ベンラファキシン(日本では開発中止)徐放錠が含まれる。

2008年のランダム化比較試験のレビューは、症状の改善は、SSRIを使用して1週間目の終わりが最高で、いくらかの改善は少なくとも6週間継続したと結論した。


SSRIのフルオキセチン(日本では未認可)、パロキセチン、エスシタロプラムとSNRIデュロキセチンと偽薬では、反応があった場合、偽薬のほうが改善度が緩やかだが、すべてで時間と共に改善していく傾向が見られた。

しかし、抗うつ薬に反応しなかった患者の一部、全体に対する約25%の患者は、HAM-Dスコアが高いままで、8週間では偽薬より著しく高かった。

これは抗うつ薬に反応しない場合、中止すべきことを示唆していると解釈された。


うつ病は類似した症状を呈する異なる病因の病気の集合なので、抗うつ薬の予後が悪いことを示した。

大うつ病性障害の定義は見当違いの可能性がある。

抗うつ薬はうつ病の根本にある原因に効果があるかについて、2002年のレビューは、使用を終了した場合、抗うつ薬がうつ病の再発の危険性を減少させるという根拠がないと結論した。

このレビューの執筆者らは、対人関係療法(IPT)と認知行動療法(CBT)を挙げ、抗うつ薬を心理療法と組み合わせることを提言した。




●副作用

抗うつ薬が効果を表すのは、セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなどの神経伝達物質に作用するからであるとされている。

しかし、三環系や四環系抗うつ薬では、抗コリン作用、抗α1作用なども併せ持っており、そのために以下のような副作用が生じることがある。

副作用は薬の種類によって細かく異なる為、注意が必要である。

抗コリン作用による口渇、便秘、目のかすみ、排尿困難など

アドレナリンα1受容体遮断作用による低血圧、めまいなど

抗ヒスタミン作用による眠気、体重増加

抗ムスカリン作用による視力調節障害

手足の痙攣・振戦、全身の痺れなど(重症になると一ヶ月ほど痺れが続く場合もある)

服用開始直後の吐き気については、これについては制吐剤(ガスモチンなど)や六君子湯などの併用によって緩和することが可能である。

性欲減退についてはDNRIとの併用で解消できる場合があることが報告されている。


以上
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2014年04月09日

精神疾患治療薬(5)「抗不安薬(1)」

抗不安薬(こうふあんやく、Anxiolytic)とは、不安およびそれに関連する心理的・身体的症状の治療に用いられる薬剤である。

主に不安障害の治療に用いられる。

マイナートランキライザー(Minor tranquilizer)とも呼ばれる。



ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は、トランキライザーとも呼ばれるが、依存性の問題が持ち上がった時に、抗うつ薬が売り出され抗不安薬という用語が用いられるようになった。

この用語は現代のテキストで用いられるのは稀であり、これは抗精神病薬をメジャートランキライザー(Major tranquilizer)としたときの対比で用いられる。



不安障害に対する、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は長期的な有効性の根拠が欠如しているため推奨されず、推奨されるのは抗うつ薬のみである。

ベンゾジアゼピン系の使用は、自殺の危険性を増加させる。

抗うつ薬やベンゾジアゼピン系の薬剤の急激な断薬は、激しい離脱症状を生じる可能性があるため推奨されない。

各国は、薬物の乱用に対するための1971年の向精神薬に関する条約に批准し、同様の法律を有しており、日本では麻薬及び向精神薬取締法が、ベンゾジアゼピン系を含めた乱用の懸念のある薬物を定めている。

世界保健機関(WHO)は、ベンゾジアゼピン系の使用を30日までにすべきとしている。

2010年に国際麻薬統制委員会は、日本でのベンゾジアゼピン系の消費量の多さの原因に、医師による不適切な処方があるとしている。

不適切な処方、とりわけ多剤大量処方は過量服薬の背景にあるために、2010年には精神医療に関する4学会が、それらを処方する医師に対して、適正使用のお願いを行った。



●抗不安薬の種類

*SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)


*ベンゾジアゼピン

ベンゾジアゼピン系の不安に対する使用は、短期間に限定される。

ベンゾジアゼピン系は、不安障害を治療するための他の処方薬が効きはじめる間までの期間を補う目的で用いられることがある。

通常、短期的な中枢神経の沈静が必要な時の一次選択であり、さまざまな症状に用いられる。

2週間を超える使用は、離脱症状とリバウンド症状の危険性がある。

長期間使用した場合、耐性や依存性が生じる。


*アザピロン


*バルビツール酸


*プレガバリン




●有効性

英国国立医療技術評価機構(NICE)の2011年の不安障害に関するガイドラインでは、全般性不安障害(GAD)の治療で、短期的な対策を除きベンゾジアゼピンは用いられず、また抗精神病薬も同様である。

パニック障害では、鎮静抗ヒスタミン薬や抗精神病薬、また長期間のベンゾジアゼピンの投薬は良好な結果をもたらさないため推奨されない。

これらの疾患に対して、長期間の有効性があるのは抗うつ薬のみである。



NICEの境界性人格障害に関する2009年のガイドラインは、自傷行為、情緒不安定に薬物治療は推奨されず、もし処方するとしても、1週間を限度に最小の有効量で、副作用が少なく依存性が低く乱用の可能性が最小で、過量服薬時に相対的に安全な薬を選択し、効果がないときには中止するとしている。

ベンゾジアゼピン系は本質的に同じ機序であるのに関わらず2種類処方されることがあり、ノルウェーではそのような処方率は6.9%であった。

日本におけるそのような処方率は、30万件の診療データからの解析で2009年には、2剤は14.5%、3剤以上は1.9%である。

世界保健機関はベンゾジアゼピン系の「合理的な利用」は30日までの短期間であるとしている。

ベンゾジアゼピン系は1971年の向精神薬に関する条約において、乱用の危険のある薬物である。



●副作用

抗うつ薬には、投与直後から自殺の危険性のある賦活症候群の危険性がある。

世界保健機関は、ベンゾジアゼピン系には自殺を増加させるため慎重な監視と、自殺の恐れ、物質依存、うつ病、不安では特別な注意が必要であり、処方するとしても数日から数週間としている。

飼育されたニホンザルに発生する自傷行為に対して、ベンゾジアゼピン系薬剤のジアゼパムの投与では、半数で傷の数が減り、半数では増えた。

ベンゾジアゼピン系の薬剤が不安障害を悪化させている可能性がある。(不安障害#原因)



2012年のアメリカの不安障害協会の年次会議では、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬の使用は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対し視床下部-下垂体-副腎系(HPA)軸を抑制するためストレス症状を増大させ、また、恐怖反応はGABA作動性の扁桃体機能を介して消失されるが、このような学習や記憶を無効にするため暴露療法の結果を否定的にすることが報告された。

ベンゾジアゼピン系の使用は、がんや認知症の危険性を増加させる。

1か月以内に、抗うつ薬やベンゾジアゼピン系の薬を服用していた場合、自動車事故の危険性を増加させている。

高齢者では、抗うつ薬やベンゾジアゼピン(特に長時間作用型)の服用は、転倒の危険性を増加させる。



●死亡リスクの増加

約15,000人の18年の追跡調査では、使用頻度の増加に伴って死亡率が高まることが見出され、抗不安薬・睡眠薬の服用群は、男性3.1倍、女性2.7倍、交絡因子を調整して、それぞれ1.7倍と1.5倍であった。

13年間の追跡で、抗不安薬・睡眠薬の服用群は3.22倍で、調整後1.36倍であった。




●離脱症状

抗うつ薬でもベンゾジアゼピン系の薬剤でも、断薬により離脱症状を生じる可能性があるため、急な断薬は推奨されない。

もし、抗うつ薬とベンゾジアゼピン系の薬剤の療法を服用しており両方とも断薬する場合、先にベンゾジアゼピン系の断薬を終了させ、間の期間を1カ月あけることが推奨される。



ベンゾジアゼピン系の薬物は、常用により効果が弱くなる耐性が生じる。

このため薬剤を追加することで多剤処方となり、高用量の服用が継続された場合の突然の断薬は、激しい離脱症状のため危険となる。


1960年代には、ベンゾジアゼピン系の薬剤を中止する際に、高用量で用いられた場合に離脱症状が生じることが報告されたが、後に治療用量でも生じることが分かった。

離脱症状には、解離性障害、抑うつ、不眠症、動悸、動揺、混乱、胃腸障害、持続的な耳鳴り、不随意筋けいれん、知覚障害、やまれに発作が生じる。

概して、半減期の短い薬剤に離脱症状が生じやすい。

また元の疾患との区別は困難である。

ベンゾジアゼピン系や抗うつ薬は、アシュトンにより、これらの離脱症状は長期間にわたる傾向があるため、激しい離脱症状を避けるために、ジアゼパムのような低力価で長時間作用型の薬剤に等価換算で置換し、個々の状態に対応しながら1〜2週間ごとに、あるいはそれよりも遅く、以前より10%減らすといった、長ければ半年以上かけて徐々に漸減する方法が推奨されている。

ベンゾジアゼピン離脱症状と、抗うつ薬のSSRIにおける離脱症状は酷似している。


以上

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2014年04月06日

精神疾患治療薬(4)「統合失調治療薬(4)」オランザピン

●オランザピン(Olanzapine、商品名:ジプレキサ)はアメリカFDAで承認された2番目の非定型抗精神病薬で、アメリカ国内で最も多く使用されている非定型抗精神病薬のひとつ。

1996年に発売された。

略称はOLZ。

CAS登録番号は132539-06-1。

オランザピンは日本国内では統合失調症治療薬として承認されている。

アメリカでは統合失調症に加え、双極性障害の躁病相の治療と予防、プロザックとの合剤、Olanzapine-fluoxetine combination(OFC)は双極性障害のうつ病相の治療、難治性うつ病の治療においてもFDAから承認を受けている。

オランザピンはイーライリリー社によって製造販売されている。

商品名はジプレキサである。

日本においては、2.5mg錠で1錠あたり135.5円と、薬価が非常に高い薬である。第二世代抗精神病薬に分類される。



●薬理

化学構造式からD1〜D5アゴニストである。

オランザピンの構造はクロザピンに似ており、チエノベンゾジアゼピン系に分類される。

オランザピンはドパミン受容体、セロトニン受容体に対し高い親和性を有している。

他の非定型抗精神病薬と同様、オランザピンは、ヒスタミン、抗コリン作用、ムスカリン性、αアドレナリン受容体に対しては低い親和性を有している。

オランザピンの作用機序は明らかにはなっていないが、オランザピンの抗精神作用はドパミン受容体、特にドパミンD2受容体への拮抗作用に因るものと考えられている。

セロトニン拮抗作用もまたオランザピンの有効性に影響している可能性があるが、研究者の間でも5-HT2A拮抗作用については議論が続いている。

ムスカリン、ヒスタミン及びαアドレナリン受容体への拮抗性がオランザピンの副作用(抗コリン性副作用、体重増加、過鎮静、起立性低血圧等)の一部を説明できると考えられる。

またオランザピンは陰性症状や認知機能障害に有効でありさらに再発率も抗精神病薬のデータのなかで最も低く神経保護作用もあることから統合失調症にとって有用な薬物と考えられる。





●副作用

ジプレキサ ザイディス錠 10mg

主な副作用は不眠、眠気、体重増加、アカシジア、ジスキネジア、振戦、倦怠感不安・焦燥、興奮・易刺激性。

また、主な臨床検査値異常はALT(GPT)上昇、プロラクチン上昇、AST(GOT)上昇、トリグリセリド上昇である。

他の非定型精神病薬と比べ、特に注意が必要とされている副作用が体重増加と耐糖異常(糖尿病)である。

もともと社会的に肥満が問題になっているアメリカでは、オランザピンによる体重増加はすぐに心筋梗塞など致死的な疾患に結びつきかねないので、特に注意が必要とされている。

また、日本においては、オランザピンと因果関係が否定できない重篤な高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡が9例(死亡例2例)報告されており、厚生省より注意喚起がなされた(2002/4)。

これに対し、発売元の日本イーライリリーでは、糖尿病患者やその既往歴のある患者に対する患者への投与を禁忌に入れ、ドラッグ・インフォメーション上で目立つように警告を発するなどの対応をとった。


以上

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