2014年05月22日

眼底を観察する検査とは?

問題3.次の文章のかっこを埋めよ

検眼鏡を使って患者の瞳孔(どうこう)(ひとみ)を通し眼底を観察する検査を(  A  )という。

(1)眼底検査

(2)瞳孔検査












」」」」」」」」」」」」
   答え
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(1)眼底検査  


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2014年05月20日

化学療法とは?

問題2.次の文章のかっこを埋めよ

化学療法とは(  A  )を用いて生体内の病原寄生体に対し直接その増殖を阻害したり殺菌することによって疾患を治療する方法をいう。

薬物療法の一種であるが、対症療法ではなく、原因療法の一つである。

(1)化学物質

(2)免疫グロブリン









」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(1)化学物質


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2014年05月01日

『高血圧』とは?(6) 『高血圧』の治療は?(4)

【カルシウム拮抗剤】

●構造・発現

アンジオテンシン変換酵素はその活性中心(HExxH)に亜鉛を有するメタロプロテアーゼの一種であり、細胞膜上に存在する。

アンジオテンシン変換酵素には2つの異なるタイプが存在し、それぞれ somatic ACE (sACE) と germinal ACE (gACE) と呼ばれる。

sACEは全身の細胞に広く分布するのに対して、gACEは発現している組織が限られており、精巣に発現していることが知られている。

また、sACEは活性部位をN末端側とC末端側に2つ持つのに対し、gACEは活性部位を1つしか持たない。

sACEのN末端及びC末端の活性中心部位はそれぞれアミノ酸配列は同じであるにもかかわらず、基質に対する反応性など性質が異なる点が存在する。



●機能

アンジオテンシン変換酵素の基本的な働きはアンジオテンシンIを活性体へ変換し、血圧の制御を行うことにある。

また、アンジオテンシン変換酵素はブラジキニンの分解に関与するキニナーゼIIと同等であることが知られている。

つまり、アンジオテンシン変換酵素はアンジオテンシンIの変換とキニナーゼIIの分解の両方に働く酵素である。

その他にもサブスタンスPや黄体形成ホルモン放出ホルモン (LH-RH) 等を基質とすることが知られており、基質特異性は低い。

近年ではアンジオテンシン変換酵素のレニン-アンジオテンシン系 (英: renin-angiotensin system、RAS) 以外に対する機能も解明されつつある。






【レニン-アンジオテンシン系】


レニン-アンジオテンシン系(Renin-Angiotensin System;RAS)またはレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(Renin-Angiotensin-Aldosterone System;RAAS)とは、血圧や細胞外容量の調節に関わるホルモン系の総称。

血圧低下や循環血液量の低下に伴って、活性化される。



●機序

(1)腎臓の傍糸球体装置が血圧低下を感知すると、傍糸球体細胞から分泌されるタンパク質分解酵素であるレニンを血液中に分泌する。

(2)レニンは、肝臓や肥大化脂肪細胞から分泌されるアンジオテンシノーゲンを一部分解してアンジオテンシンTに変換する。

(3)アンジオテンシンTは、肺毛細血管に存在するアンジオテンシン変換酵素(ACE)によってアンジオテンシンUに変換される。

(4)アンジオテンシンUは、副腎皮質球状帯に作用してナトリウムの再吸収を促進するアルドステロンの分泌を促進。

また、脳下垂体に作用し利尿を抑えるホルモンである抗利尿ホルモンであるバソプレッシン(ADH)の分泌を促進。

(5)アンジオテンシンUは、アミノペプチダーゼによってアンジオテンシンVに変換される。


●生体への作用

・血圧上昇

アンジオテンシンII、III、バソプレッシンの血管収縮作用による。


・Na再吸収の増加

アンジオテンシンII、アルドステロンによって尿細管でNa+,Cl-再吸収が亢進。


・水分再吸収の増加

バソプレッシンによって集合管でH2O再吸収が亢進。


以上


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『高血圧』とは?(6) 『高血圧』の治療は?(4)

【カルシウム拮抗剤】

●構造・発現

アンジオテンシン変換酵素はその活性中心(HExxH)に亜鉛を有するメタロプロテアーゼの一種であり、細胞膜上に存在する。

アンジオテンシン変換酵素には2つの異なるタイプが存在し、それぞれ somatic ACE (sACE) と germinal ACE (gACE) と呼ばれる。

sACEは全身の細胞に広く分布するのに対して、gACEは発現している組織が限られており、精巣に発現していることが知られている。

また、sACEは活性部位をN末端側とC末端側に2つ持つのに対し、gACEは活性部位を1つしか持たない。

sACEのN末端及びC末端の活性中心部位はそれぞれアミノ酸配列は同じであるにもかかわらず、基質に対する反応性など性質が異なる点が存在する。



●機能

アンジオテンシン変換酵素の基本的な働きはアンジオテンシンIを活性体へ変換し、血圧の制御を行うことにある。

また、アンジオテンシン変換酵素はブラジキニンの分解に関与するキニナーゼIIと同等であることが知られている。

つまり、アンジオテンシン変換酵素はアンジオテンシンIの変換とキニナーゼIIの分解の両方に働く酵素である。

その他にもサブスタンスPや黄体形成ホルモン放出ホルモン (LH-RH) 等を基質とすることが知られており、基質特異性は低い。

近年ではアンジオテンシン変換酵素のレニン-アンジオテンシン系 (英: renin-angiotensin system、RAS) 以外に対する機能も解明されつつある。






【レニン-アンジオテンシン系】


レニン-アンジオテンシン系(Renin-Angiotensin System;RAS)またはレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(Renin-Angiotensin-Aldosterone System;RAAS)とは、血圧や細胞外容量の調節に関わるホルモン系の総称。

血圧低下や循環血液量の低下に伴って、活性化される。



●機序

(1)腎臓の傍糸球体装置が血圧低下を感知すると、傍糸球体細胞から分泌されるタンパク質分解酵素であるレニンを血液中に分泌する。

(2)レニンは、肝臓や肥大化脂肪細胞から分泌されるアンジオテンシノーゲンを一部分解してアンジオテンシンTに変換する。

(3)アンジオテンシンTは、肺毛細血管に存在するアンジオテンシン変換酵素(ACE)によってアンジオテンシンUに変換される。

(4)アンジオテンシンUは、副腎皮質球状帯に作用してナトリウムの再吸収を促進するアルドステロンの分泌を促進。

また、脳下垂体に作用し利尿を抑えるホルモンである抗利尿ホルモンであるバソプレッシン(ADH)の分泌を促進。

(5)アンジオテンシンUは、アミノペプチダーゼによってアンジオテンシンVに変換される。


●生体への作用

・血圧上昇

アンジオテンシンII、III、バソプレッシンの血管収縮作用による。


・Na再吸収の増加

アンジオテンシンII、アルドステロンによって尿細管でNa+,Cl-再吸収が亢進。


・水分再吸収の増加

バソプレッシンによって集合管でH2O再吸収が亢進。


以上


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『高血圧』とは?(5) 『高血圧』の治療は?(3)


【アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)】


アンジオテンシン変換酵素(ACE)は生理活性ペプチドであり昇圧作用を有するアンジオテンシンIIの産生に関与している。

さらに、ACEは降圧物質であるブラジキニンの分解に関与する酵素キニナーゼIIと同等であり、ACE阻害薬はこの酵素活性を阻害することにより、アンジオテンシンIIの産生抑制とブラジキニンの分解抑制をもたらし、結果として降圧作用を示す。

ACE阻害薬やARBは輸出細動脈を拡張させ糸球体内圧を低下させ蛋白尿の減少を行う作用がある(腎保護作用)。

このため慢性腎臓病、糖尿病性腎症でARBと同様に好まれる傾向がある。

またACE阻害薬は心臓のリモデリング防止作用、心筋梗塞の再発予防、心不全患者の予後改善効果があると考えられている。

またCa拮抗薬と同様の脳卒中予防効果もあるとされている。空咳の副作用が有名であり、ARBに劣るイメージがあるが心保護作用のエビデンスはACEIの方が豊富である。

心房細動の抑制効果も知られている。特にイミダプリル(タナトリル)は糖尿病性腎症に適応がある。

カプトプリル(Captopril カプトリルなど)

リシノプリル(Lisinopril ロンゲスなど)

エナラプリル(Enalapril レニベースなど)

デラプリル(Delapril)

ペリンドプリル(Perindopril コバシルなど)

ベナゼプリル(Benazepril)

トランドラプリル(Trandolapril)

キナプリル(Quinapril)

アラセプリル(Alacepril)

イミダプリル(Imidapril タナトリルなど)

テモカプリル(Temocapril)

シラザプリル(Cilazapril)




【アンジオテンシン受容体拮抗薬 (ARB)】


上記の機構により産生されたアンジオテンシンIIはアンジオテンシン受容体を介してその作用を発現することが知られている。

アンジオテンシン受容体にはサブタイプが存在し、アンジオテンシン受容体拮抗薬(英: Angiotensin Receptor Blocker, ARB)の降圧作用はAT1受容体の遮断に基づく。

いずれも妊婦への適応は禁忌である。


ARBの標準薬はバルサルタン(Valsartan ディオバンなど) であり、世界で最も汎用され新薬開発時には、比較薬とされている。

ACE阻害薬やARBは輸出細動脈を拡張させ糸球体内圧を低下させ蛋白尿の減少を行う作用がある。

また、ARB各薬剤のクラスエフェクト以外の作用も注目されており、テルミサルタン(ミカルディスなど)のPPARγ活性化作用を介した糖・脂質代謝改善作用、ロサルタン(ニューロタンなど)の尿酸値低下作用等が挙げられる。

ARBは空咳のないACEIとほぼ同様なイメージがあったが、イルベサルタン(イルベタン、アバプロなど)は腎症に対して豊富なエビデンスがあり、心不全にACEI、腎不全にARBというイメージを定着させた。

ロサルタン(Losartan ニューロタンなど)

オルメサルタン(Olmesartan オルメテックなど)

テルミサルタン(Telmisartan ミカルディスなど)

バルサルタン(Valsartan ディオバンなど)

カンデサルタンシレキセチル(Candesartan Cilexetil ブロプレスなど)

イルベサルタン(Irbesartan イルベタン、アバプロなど)

アジルサルタン(Azilsartan アジルバなど)







【直接的レニン阻害薬】

レニンはアンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンIへの変換反応を触媒する酵素であり、血圧のコントロールに関与するレニン-アンジオテンシン系の上流に位置する。

直接的レニン阻害薬 (Direct Renin Inhibitor,DRI) であるアリスキレンはレニンのAsp32とAsp215の両残基に水素結合し、その活性を抑制することで降圧効果を示す十数年ぶりの新しいクラスの降圧薬である。

アリスキレンの降圧効果は持続的であり、単剤投与での24時間以上にわたって十分な降圧効果を示すとされており、ACE阻害作用を有していないためにキニン代謝による空咳などの副作用は生じにくいと考えられている。

アリスキレン(Aliskiren ラジレスなど)




【α受容体遮断薬】

α受容体の遮断薬には非選択的にα受容体を遮断するものと選択的にα1受容体のみを遮断するものが存在する。

非選択的遮断薬であるトラゾリンおよびフェントラミンはα2受容体に対しても阻害作用を示すことから、α2受容体を介した抑制的フィードバックが外れ、シナプス前膜から神経伝達物質であるノルアドレナリンの放出が促進される。

このノルアドレナリンが循環血中を回り心臓などへ辿りつくとβ受容体の刺激を引き起こし、副作用の原因となる。

一方、α1受容体の選択的な遮断薬はα2受容体遮断作用を持たないことからこのような副次的な効果をもたらしにくい(副作用がないというわけではない)。

αブロッカーには心血管系の抑制効果が報告されていないため、高血圧治療薬の第一選択にはならない。

しかし脂質代謝やインスリン抵抗性を改善するため脂質異常症、メタボリックシンドロームを伴う高血圧では併用薬として用いられることが多い。

早朝の血圧上昇が心血管系イベントに関連し、その上昇に交感神経の亢進が関与するとされており早朝高血圧に対してドキサゾシン(カルデナリンなど)が使用されることが多い。

また前立腺肥大が合併している時も好まれる傾向がある。カルデナリンの場合、アドビアランス不良の原因となるのが起立性低血圧の副作用である場合が多く、高齢者での使用では注意が必要である。

カルデナリンの維持量は1日1〜4mg(分1)であるが0.5mgから開始し、徐々に増量していく。

起立性低血圧は出現しても数日後に自然消失することも多いが、転倒のリスクがある患者では注意が必要である。


トラゾリン(Tolazoline)

フェントラミン(Phentolamine)

ドキサゾシン(Doxazosin カルデナリンなど)

プラゾシン(Prazosin ミニプレスなど)

ブナゾシン(Bunazosin デタントールなど)

テラゾシン(Terazosin)

ウラピジル(Urapidil)




【β受容体遮断薬】

α受容体遮断薬と同じようにβ受容体遮断薬にも非選択的なものと選択的β1受容体遮断薬が存在する。

例えばプロプラノロールは非選択的なβ受容体遮断薬であるが、血管平滑筋の弛緩効果をもたらすβ2受容体を阻害することはむしろ血圧を上昇させる。

しかし、β1受容体阻害による心拍数・心拍出量の減少および腎臓傍糸球体細胞からのレニン放出抑制(血圧低下)とβ2受容体阻害による血圧上昇を比較した場合にβ1受容体の作用が優位であり、結果として血圧は低下する。

また、β2受容体は気管支拡張にも関与しており、β2受容体遮断により気道狭窄が引き起こされるため気管支喘息の患者に対しての使用は禁忌とされる。

それに対してβ1受容体選択的遮断薬はβ2受容体遮断作用を持たないことから比較的安全に使用することができる。

βブロッカーは他の降圧薬に比べて心血管系イベントの抑制効果は低く、高齢者、耐糖能障害者には第一選択とはならない。

しかし心臓のリモデリング作用があるために狭心症、心筋梗塞、頻脈性不整脈、大動脈解離、心不全を合併を合併する高血圧では良い適応となる。

併用療法ではサイアザイド系利尿薬との併用は代謝面で不利益があると考えられている。

添付文章上はβブロッカーは喘息、高度徐脈では使用禁忌、耐糖能障害、閉塞性肺疾患、末梢動脈疾患にて慎重投与となっている。

βブロッカーの使い分けのパラメータとしてはβ1選択性、内因性交感神経刺激作用(ISA)、α遮断作用、脂溶性、水溶性といったものがあげられる。

おもな使い分けとしては若年中年の狭心症を合併した高血圧の場合はβ1選択性のあるテノーミン(アテノロール)、メインテート(ビソプロロール)、アーチスト(カルベジロール)などが好まれる。

高齢者で心拍数の低下が気になる場合はセレクトール(セリプロロール)などISAがあるものが好まれる。

脂質代謝など代謝面への副作用が気になる場合はαβ遮断薬であるアーチスト(カルベジロール)が好まれ、慢性腎臓病に対する治療にはセロケン(メトプロロール)、アーチスト(カルベジロール)が好まれる。



(続く)


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『高血圧』とは?(4) 『高血圧』の治療は?(2)

●カルシウム拮抗薬

詳細は「カルシウム拮抗剤」を参照

カルシウム拮抗薬(英: Calcium Channel Blocker, CCB)は、血管平滑筋細胞の細胞膜上に存在する電位依存性カルシウム(Ca)イオンチャネルを阻害する薬物であり、その化学構造からジヒドロピリジン系と非ジヒドロピリジン系に細分類される。

筋肉の収縮にはイオンチャネルを介した細胞内へのCa2+の取り込みが大きな役割を担っており、Ca2+の取り込みが低下すると平滑筋の収縮が減弱化し、血圧の低下につながる。

2008年現在、臨床での使用目的に発売されているカルシウム拮抗薬は全てL型カルシウムチャネルを阻害するものであるが、カルシウム拮抗薬の中でもシルニジピンのみ交感神経細胞膜に存在するN型カルシウムチャネルも阻害する作用がある。

下記に示した以外に非ジヒドロピリジン系の薬剤としてベラパミルが知られているが、日本では高血圧に対する適応は認可されておらず、不整脈や虚血性心疾患に対して用いられている。

血管への作用としては静脈より動脈の平滑筋に作用が強く出る。

特に細動脈レベルで効果が発現していると考えられている。

腎臓では輸入細動脈の拡張を行うため、糸球体内圧を上昇させる可能性があり、腎硬化症の進展予防としてはふさわしくないと考えられている。

心臓では洞房結節の興奮頻度の減少や房室結節の伝導抑制が効果があることが知られている。

効果発現が比較的早いため、その他の薬物を積極的に用いる理由がない場合に第一選択として用いられることが多い。



カルシウム拮抗薬は薬物代謝酵素であるCYP3A4を介した代謝を受けることが知られており、同酵素を阻害する薬物の併用により血中濃度の上昇が生じる可能性がある。

グレープフルーツジュース中に含まれる成分も小腸粘膜のCYP3A4を阻害することが知られており、CCBを服用中の患者に対してはグレープフルーツジュースの摂取を避けるように指導する。



カルシウム拮抗薬で降圧薬として用いられるのはジヒドロピリジン系である。

冠痙縮(異型狭心症)が多い日本では第一選択となる場合が多い。

カルシウム拮抗薬は降圧効果が高く、利尿薬、βブロッカーよりも脳卒中の発症のリスクが低くなることが知られている。

特にアムロジピンは最も半減期が長く、長時間作用型であり、血管拡張に伴う反射性の交感神経刺激作用が少ないため頻用されている。

しかしアムロジピンには腎機能悪化抑制効果、蛋白尿抑制効果は少ないとされている。

蛋白尿抑制効果はシルニジピン(アテレック)、エホニジピン(ランデル)、アゼルニジピン(カルブロック)で報告されている。

今日ではエビデンス、医療経済の面から利尿薬も再評価されているが、高尿酸血症の改善作用を持つカルシウム拮抗薬はほとんどない。

例外はシルニジピンであり、尿酸低下作用をもち、利尿薬と併用しやすい(ARBではロサルタンのみが尿酸低下作用をもち、利尿薬との合剤が発売されている)。



●ジヒドロピリジン系


アムロジピン。

ニフェジピン(アダラートなど)やニカルジピン(ペルジピンなど)やアムロジピン(アムロジンやノルバスク)が含まれる分類である。

ニフェジピンはL型カルシウムチャネルのN部位に結合する。血管拡張作用、降圧作用が強く、心筋への作用がほとんどない。

高血圧や冠動脈痙縮症、狭心症でよく用いられる。陰性変力作用や催不整脈作用は殆どないと考えられている。

ニフェジピンは作用発現が早すぎて、心拍数の上昇が認められることがあったが、アダラートLなどは徐放剤とすることでその問題点を克服している。

アダラートカプセルは徐放剤ではないため高血圧緊急症における迅速な降圧の際に以前は用いられたが、過剰な降圧を来したり、かえって虚血性心疾患を誘発したりする可能性があり、現在は勧められない。

ニカルジピンは安定した点滴静注が可能であるため、病棟では好まれる。

ペルジピンの1アンプルは10mg/10mlである。維持量が2〜10γであるため、体重が50Kgならば1γは原液で3ml/hrに相当する。

原液2ml/hrから開始しスケーリング対応で2〜20ml/hrの範囲で維持することが多い。

副作用に頻脈性不整脈があるため心不全を合併している場合は0.5γである1.5ml/hrという低用量からスタートするのが無難である。


アムロジピン(Amlodipine アムロジン、ノルバスクなど)

フェロジピン(Felodipine)

ニカルジピン(Nicardipine ペルジピンなど)

ニフェジピン(Nifedipine アダラートなど)

ニモジピン(Nimodipine)

ニトレンジピン(Nitrendipine)

ニルバジピン(Nilvadipine)

アラニジピン(Aranidipine)

アゼルニジピン(Azelnidipine カルブロックなど)

マニジピン(Manidipine カルスロットなど)

バルニジピン(Barnidipine)

エホニジピン(Efonidipine ランデルなど)

シルニジピン(Cilnidipine アテレックなど)

ベニジピン(Benidipine コニールなど)

非ジヒドロピリジン系

ベンゾジアゼピン系とフェニルアルキルアミン系が含まれるがフェニルアルキルアミン系は降圧薬として使用することは殆どない。

ベンゾチアゼピン系にはジルチアゼム(ヘルベッサーなど)が含まれる。

ジルチアゼムはL型カルシウムチャネルのD部位に結合する。

ベラパミルが結合するV部位とは重なっているため併用すると効果が落ちる原因となる。

心臓にも血管にも作用する。

マイルドな降圧、徐脈作用を期待するときに用いることがある。

房室伝道の抑制、徐脈の作用としてはベラパミルに劣るため、PSVTの停止などではあまり用いない。

静注を行うのは高血圧性緊急症と不安定狭心症の時が多い。

ヘルベッサー1アンプルには50mgが含まれているために3Aを5%ブドウ糖液で溶解させると1.5mg/mlとなる。

体重が50Kgの場合は1γが3mg/hrとなるため2ml/hrで投与すると1γ投与となる。

高血圧性緊急症では5〜15γで不安定狭心症では1〜5γで維持される。

ベンゾチアゼピン系とベンゾジアゼピン系は名称が似ているがまったく異なることに注意。

ジルチアゼム(Diltiazem)


(続く)


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『高血圧』とは?(3) 『高血圧』の治療は?(1)

【管理・治療】

ガイドラインに定められた期間を食事療法や運動療法を行い、それでも140/90mmHgを超えている場合は降圧薬による薬物治療を開始する。

近年は大規模臨床試験がいくつも出そろい、高血圧治療指針(ガイドライン)では科学的根拠に基づいた降圧薬の選択を推奨している。

日本では依然として主治医の裁量ではあるが、その裁量を欧米の医療に即している医師と、上記のうちいくつかを改変した日本独自の考え方をもつ医師がいる(こちらのほうが多い)。

日本独自の考え方としては、Ca受容体拮抗薬は副作用が少なく血圧を大きく下げるため、多くの場合で有用である。

エビデンスが豊富で、危険因子として特に比重の高い脳出血は、同剤の開発前後で明らかに減少している。

虚血性心疾患においても、日本人では冠攣縮型狭心症の関与が大きく、Ca受容体拮抗薬が有効である。

降圧利尿薬は廉価であるが、耐糖能の悪化や尿酸値上昇、低カリウム血症といった副作用により、敬遠する医師が多かった。

しかし多くの臨床試験によってACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬などの最近の高価な降圧薬と同等か、それ以上の脳卒中、心筋梗塞予防、心不全改善、腎保護効果が明らかになっており、最近見直され処方する医師が増えている(例:インダパミドの項参照)。

日本の医療は国民皆保険でありコストを考える必要はあまりないため、たとえリスクの低い患者であっても最初から高価で切れ味の良いACE阻害薬やAII拮抗薬から始めても良いが、降圧利尿薬の選択をいつも考慮する。






【高血圧治療薬】

高血圧治療薬(こうけつあつちりょうやく、英: Anti-hypertensive)は、医薬品の分類の一つであり、何らかの原因で血圧が正常範囲から持続的に逸脱している場合(いわゆる高血圧)、具体的には収縮期血圧(最高)が140mmHg以上あるいは拡張期血圧(最低)が90mmHg以上の場合に、その血圧を低下させる目的で用いられる治療薬であるが、この基準値は患者の年齢や糖尿病などの基礎疾患の有無により異なる。

また、家庭血圧と診療室血圧の値がそれぞれ異なる値を示すことが東北大学の今井らによって行われた大迫研究により明らかにされており、ガイドラインにおいても考慮されている。

日本の高血圧人口は4000万人に及ぶとも言われ、もはや国民的な疾患であると言える。

高血圧は生活習慣病の一つに位置づけられ、自覚症状はほとんど認められないものの、血管内皮の障害を起因として動脈硬化症を発症する原因となり、さらにそこから虚血性心疾患や脳卒中など種々の合併症が引き起こされることから問題となる。


高血圧の最終的な治療目的は脳卒中や心不全などの二次的疾患を予防し、生命予後を改善することにある。

高血圧の発症には食生活や喫煙などの生活習慣が大きく関与することから、基本的にはこれらを改善することによる治療(非薬物療法)が試みられるが、目標値が達成不可能である場合には薬物治療が行われることになる。

血圧のコントロールは自律神経系やレニン-アンジオテンシン系(RA系)をはじめとした液性因子などによって行われており、現在発売されている降圧薬は主にこれらの機構をターゲットとしている。



【治療薬選択の大まかな考え方】


アドヒアランス向上のため原則としては1日1回投与のものを選ぶ。

降圧薬の投与量は低用量から開始する。

低用量から高用量への増加よりもシナジーを期待して併用療法を行った方が効果が高いと考えられている。

II度以上(160/100mmHg以上)の高血圧では最初から併用療法を考慮する。

併用法としてはRA系抑制薬とCa拮抗薬、RA系抑制薬と利尿薬、Ca拮抗薬と利尿薬、βブロッカーとCa拮抗薬などがあげられる。

最初に投与した降圧薬で降圧効果が得られなければ作用機序の異なる降圧薬に変更する。





高血圧の薬物治療は通常、単剤あるいは低用量の2剤から開始され、降圧作用が不十分な場合には用量の増大か多剤への変更、異なる作用機序を持つ降圧薬との併用療法などが行われる。

また、一概に高血圧治療薬といっても多くの種類が存在し、これらの作用機序・薬効・薬価は様々である。

高血圧の初期薬物治療においてどのような薬物を用いるかは大規模な臨床試験の結果やガイドラインに沿って行われる。

高血圧の診療ガイドラインはWHO/ISH(国際高血圧学会)によるものと米国のJNC7が国際的に主流であり、JNC7ではチアジド系利尿薬が他のグループと比較して安価で大きな治療効果が得られることから、その使用が推奨されているが、治療薬は個々の患者の病歴や合併症の有無などを考慮した上で選択されるべきである。

日本においても日本高血圧学会による高血圧治療ガイドラインが2004年に作成されており(JSH2004)、2009年1月には最新版(JSH2009)が発行された。


■■■ 以下の文章の基になるデータの一部は、今は、疑わしい ■■■

国際ガイドラインは欧米での臨床試験をもとに作成されているため、日本人の高血圧治療に当てはめるには不向きな点もあるが、新ガイドラインであるJSH2009ではCASE-J試験やJIKEI-Heart試験、JATOS試験等の国内の臨床試験のデータがエビデンスとして盛り込まれた。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

なお、JSH2004からJSH2009への変更点は以下のような点である。

(1)α遮断薬の主要降圧薬からの除外。

(2)血圧値に加えて心血管障害、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病(CKD)などの危険因子を考慮して3群にリスク層別化を行い、治療方針を決定。

(3)降圧目標の設定。

また、高血圧の患者では薬物を長期に渡って服用することになり、降圧薬の併用に加えて合併症に対する治療薬も数多く処方され結果として10種類を超えるような薬剤を服用している場合も少なくない。

ADVANCE試験により合剤の有用性が示され、日本においてもARBと利尿薬の合剤が認可されている。

このような複雑な処方を受けている患者に対して合剤を用い、少しでも薬の種類を少なくすることがアドヒアランスの改善に結びつくと考えられている。




【治療薬の種類】


●利尿薬

詳細は「利尿薬」を参照

利尿薬(利尿降圧薬)は尿量を増加させるための医薬品である。

そもそも尿とは血液中の不純物を除去するための機構であり、生体内で産生される老廃物は腎臓の糸球体で濾過されたのち尿中に排出される。

一方、尿は体外への水分排泄の役割も担っている。

尿量が少なく循環血液量が多い状態では血圧が高くなるため、利尿薬による水分排泄は降圧効果を示す。

糸球体濾過を受けた血液由来の水分は尿細管へと移行する。

尿細管は糸球体に近い方から近位尿細管、ヘンレ係蹄(下行脚および上行脚)、遠位尿細管、集合管と呼ばれ、膀胱へと流れ込む。

糸球体濾過を受けた水分(原尿)の9割はこれらの尿細管壁から回収されることが知られている。

これを再吸収と呼び、再吸収を免れた水分のみが膀胱へと流れつき、尿として排泄される。

尿の再吸収はまず尿細管壁に存在するイオン交換体によってナトリウムイオン(Na+)の再吸収によって尿細管内外に浸透圧差が作られることにより始まる。

この浸透圧差を補正するためにNa+に付随して水も尿細管外へ移動することになり、結果として水分の再吸収が行われる。

現在発売されている利尿薬はこれらのイオン交換体の機能を調節することにより水分の再吸収を抑制し、尿量を増加させるものである。


●サイアザイド系利尿薬(チアジド系利尿薬)

サイアザイド系利尿薬は遠位尿細管においてNa+およびCl-の再吸収を阻害する。

上記に示した通りチアジド系利尿薬はアメリカのガイドライン(JNC7)においてその使用が推奨されており、中程度の利尿作用を有する。

併用薬としての低用量のサイアザイド系利尿薬の使用は有効であるということがALLHAT試験で明らかになっている。(ただしALLHATで用いられたエビデンスのあるサイアザイド系利尿薬はクロルタリドン)この場合は利尿薬としての使用量よりも少ないことに注意が必要である。


サイアザイド系利尿薬は添付文章上は腎機能障害(Cr≧2.0)、低カリウム血症、痛風が認められる場合は使用禁忌であり、妊娠、耐糖能機能障害の場合は慎重投与ということになっている。

しかしこれは利尿薬として使用する場合であり、降圧薬としてサイアザイド系を用いる場合は利尿作用を期待する場合の1/4〜1/2量の併用となるため低カリウム血症、高尿酸血症、耐糖能障害といった不利益は最小限に抑えることができるとされている。

それでも障害が重度の場合はカリウム保持性利尿薬やロサルタン、シルニジピン、アロプリノールを併用する場合もある。

ただ、作用機序の問題からCr≧2.0で降圧効果、利尿効果ともに無効になってしまうことは変わりない。


低用量サイアザイド系利尿薬は短期的には循環血症量を減少させるが長期的には末梢血管抵抗を低下させることで降圧を行うと考えられている。

ADVANCE studyではACEとサイアザイド系利尿薬の併用薬と偽薬を比較しアドビアランスは同等であったため、利尿作用による不便さは長期的には問題とならないことが示唆されている。

代謝面の不利益から単純に高血圧治療を行うときにはβブロッカーとの併用は推奨されていない。

また腎障害時(Cr≧2.0)で利尿薬を使用する場合はループ利尿薬となるが、利尿作用が強い割に降圧作用は弱い傾向がある。

但し、うっ血性心不全が認められるときはうっ血の解除には有効であるためループ利尿薬を積極的に使用する。

プレミネントなどARBとサイアザイド系の利尿薬との合剤も販売されている

トリクロルメチアジド(Trichlormethiazide フルイトランなど、一日1〜2mg)

ヒドロクロロチアジド(Hydrochlorothiazide ダイクロライドなど、一日12.5〜25mg)

サイアザイド(チアジド)類似利尿薬

メフルシド(Mefruside)

インダパミド(Indapamide, ナトリックス)…最もエビデンスの報告されている利尿薬

メチクラン(Meticrane)

クロルタリドン(Chlortalidone)

トリパミド(Tripamide)



●ループ利尿薬

ループ利尿薬は強力な利尿作用を有しているが、降圧作用はそれほど強くない。

ヘンレ係蹄上行脚においてNa+の再吸収に関与しているNa+/K+/2Cl-共輸送系を阻害する。

これにより尿細管内外の浸透圧差が緩和され、下行脚における水の再吸収が抑制される。

フロセミド(Furosemide,ラシックス)

トラセミド (Torasemide,ルプラック)

ブメタニド(Bumetanide)

エタクリン酸(Ethacrynic Acid)



(続く)
posted by ホーライ at 04:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 高血圧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『高血圧』とは?(2) 『高血圧』の分類・診断は?

【分類】

本態性高血圧症

本態性高血圧(原発性高血圧)

原因は単一ではなく、両親から受け継いだ遺伝素因に加えて、生後の成長過程、加齢プロセスにおける食事、ストレスなどの様々な生活習慣がモザイクのように複雑に絡みあって生じる病態(モザイク説)。

高血圧患者の9割以上を占める。

食塩感受性高血圧は、遺伝的素因と食塩摂取過剰を兼ね持つもので、本態性高血圧の一部を占める。


二次性高血圧

二次性高血圧 明らかな原因疾患があって生じる高血圧をいい、以下のような疾患が原因となる。

頻度は少ないが手術などによって完治する確率が高いのでその診断は重要である。



1.大動脈縮窄症 先天性疾患

2。腎血管性高血圧 腎動脈の狭窄があり、血流量の減った腎でレニンの分泌が亢進することで起きる。

3.腎実質性高血圧 腎糸球体の障害により起こる。

4.原発性アルドステロン症 (primary aldosteronism; PA) 副腎皮質の腫瘍からアルドステロンが過剰に分泌されるため起こる。

5.偽性アルドステロン症 グリチルリチン酸により、11-βHSD2活性が抑制され、コルチゾール代謝の阻害→コルチゾールの残存→ミネラルコルチコイド受容体刺激となる。

6.Apparent Mineralocorticoid Excess症候群(AME症候群) 11-βHSDの異常からおこる常染色体劣性遺伝疾患。

7.Liddle症候群 低カリウム血症、代謝性アルカローシスを来す常染色体優性の遺伝性高血圧症。Epethelial Sodium Channel; ENaCの異常から生じる。

8.クッシング症候群 副腎皮質の腫瘍からコルチゾールが過剰に分泌されるため起こる。

9.褐色細胞腫 副腎髄質や神経節の腫瘍からアドレナリンまたはノルアドレナリンが過剰に分泌されるため起こる

10.大動脈炎症候群 膠原病の一つ。

11.甲状腺機能異常 甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症

12.妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症より改名)

13.高カルシウム血症


この他、脳血管障害の急性期に著明な高血圧を来すことが知られている。

脳出血では応急的な降圧が必要だが、脳梗塞では寧ろ脳血流を保てなくなる恐れがある為、降圧は行われない。




【診断】

血圧は変動しやすいので、高血圧の診断は少なくとも2回以上の異なる機会における血圧測定値に基づいて行われるべきである。

最近は家庭血圧計が普及しているが、家庭で自分自身で測定した血圧値の方が、診察室で医師や看護師によって測定した血圧値よりも将来の脳卒中や心筋梗塞の予測に有用であるとする疫学調査結果が相次いで報告されている。

診察室での血圧測定では、白衣高血圧(医師による測定では本来の血圧より高くなる現象)や仮面高血圧(普段は高血圧なのに、診察室では正常血圧となる現象)が生じるため、必ずしも本来の血圧値を反映していないという考え方が普及している。



家庭での正常血圧値は診察室での血圧値よりもやや低いために、家庭血圧では135/80mmHg以上を高血圧とする。

家庭では朝食前に2回血圧を測定することが望ましい。

心筋梗塞や脳卒中の発症は朝起床後に多発することから、早朝の高血圧管理が重要である。(早朝高血圧)



脳卒中や心筋梗塞の発症には高血圧のみならず、喫煙、高脂血症、糖尿病、肥満などの他の危険因子も関与するために、危険因子や合併症も考慮した高血圧の層別化によって将来の脳卒中、心筋梗塞の危険度の予測能が高まる。

動脈硬化の診断や、腎機能、血圧反射機能などの自律神経機能等の診断も病態の把握に重要であり、動脈硬化の定量診断には脈波伝播速度計測なども行われている。

血圧反射機能診断のためには、血圧変化に対する心拍反応や、動脈の血圧反射機能を診断する方法論も提案されている。

精密な病態の診断が最適な治療には不可欠である。


(続く)

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『高血圧』とは? 『高血圧』の原因は?

高血圧(こうけつあつ、Hypertension)とは、血圧が正常範囲を超えて高く維持されている状態である。

高血圧自体の自覚症状は何もないことが多いが、虚血性心疾患、脳卒中、腎不全などの発症リスクとなる点で臨床的な意義は大きい。

生活習慣病のひとつであり、肥満、高脂血症、糖尿病との合併は「死の四重奏」「syndrome X」「インスリン抵抗性症候群」などと称されていた。

これらは現在メタボリックシンドロームと呼ばれる。


日本高血圧学会では高血圧の基準を以下のように定めている。

成人における血圧値の分類(mmHg)

分類 収縮期血圧   拡張期血圧

至適血圧 <120 かつ <80

正常血圧 <130 かつ <85

正常高値血圧 130 - 139 または 85 - 89

T度(軽症)高血圧 140 - 159 または 90 - 99

U度(中等症)高血圧 160 - 179 または 100 - 109

V度(重症)高血圧 ≧180 または ≧110

収縮期高血圧 ≧140 かつ <90



すなわち、収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90以上に保たれた状態が高血圧であるとされている。

しかし、近年の研究では血圧は高ければ高いだけ合併症のリスクが高まるため、収縮期血圧で120未満が生体の血管にとって負担が少ない血圧レベルとされている。


ここで注意すべきは、血圧が高い状態が持続することが問題となるのであり、運動時や緊張した場合などの一過性の高血圧についての言及ではないということである。

高血圧の診断基準は数回の測定の平均値を対象としている。

運動や精神的な興奮で一過性に血圧が上がるのは生理的な反応であり、これは高血圧の概念とはまた違うものである。


血圧は1日の中でも変動している。

そのため、計測する時間帯には正常値の基準を満たしているものの、その他のほとんどの時間帯には高血圧となっている場合がある。

これを仮面高血圧と呼ぶ。

また降圧剤が処方されている場合でも、その効果が切れている時間帯では安全域を外れている場合もある。

この点にも留意する必要がある。逆に、普段は正常血圧なのに診察室で医師が測定すると血圧が上昇して、高血圧と診断されてしまう場合もあり、“白衣高血圧”とよばれる。

糖尿病患者では起立性低血圧の症例が有るため、座位だけでなく臥位・立位でも測定する。

上腕の血圧測定結果で左右の血圧差が生じることがある。

血圧差は、上腕動脈或いは鎖骨下動脈の病変に起因すると考えられ、差が10mmHg以上の患者は心血管疾患による死亡リスクが有意に高い。

また、家庭で測定を行う場合は高い側の腕で測定を行うことが推奨されている。



【原因】

高血圧は原因が明らかでない本態性高血圧症とホルモン異常などによって生じる二次性高血圧に分類される。

本態性高血圧の原因は単一ではなく、両親から受け継いだ遺伝的素因が、生まれてから成長し、高齢化するまでの食事、ストレスなどの様々な環境因子によって修飾されて高血圧が発生するとされる(モザイク説)。


動脈硬化症による脳内酸欠:一般的に病院で高血圧と診断される大部分の原因は、上行大動脈の動脈硬化症による脳内酸欠を防ぐため、血圧が上がっている状態のことをいう。

遺伝:両親の一方あるいは両方が高血圧であると高血圧を発症しやすい。

塩分:日本人の高血圧の発生には食塩過剰摂取の関与が強いとされる。

日本人の食塩摂取量は1日平均12gであり、欧米人に比べて多い。

日本人の食塩嗜好は野菜の漬け物、梅干し、魚の塩漬けなど日本独自の食生活と関連があるが、2004年版に発行された日本の高血圧治療ガイドラインでは1日6g未満という厳しい減塩を推奨している。

食塩摂取量に関して、静岡県浜松市遠州病院による2008年7月から2012年12月までに合計35,500人(男性22,749人 平均年齢56.3歳)を対象とした調査では、男性12.4g、女性8.4g で、ガイドラインの1日6.0g以下の推奨目標値を達成できているのは3.0%とする調査がある。

また、食塩(塩化ナトリウム)だけでなく重曹(炭酸水素ナトリウム)などを含む食品および胃腸薬の摂取に対しても注意が必要である。


食塩の過剰摂取が高血圧の大きなリスクとなるのは、身体の電解質調節システムに原因がある。

細胞外液中でナトリウムをはじめとする電解質の濃度は厳密に保たれており、この調節には腎臓が大きな役割を果たしている。

すなわち、濃度が正常より高いと飲水行動が促され、腎では水分の再吸収が促進される。反対に、濃度が低い場合は腎で水分の排泄が進む。


結果として、血中のナトリウムが過剰の場合は、濃度を一定に保つため水分量もそれに相関して保持され、全体として細胞外液量が過剰(ハイパーボレミア:hypervolemia)となるのである。

腎のナトリウム排泄能(通常、ナトリウム0.15-0.3mol/日、食塩9-18g/日に相当)を超えて塩分を摂取している場合、上記のメカニズムで体液量が増加して高血圧を来す。

ナトリウム過剰で高血圧をきたしやすい遺伝素因も存在することが確認されている。



ストレスや肥満、飲酒なども高血圧の発症に関与するとされる。

血圧反射機能の障害なども高血圧の発症に関与するとされる。

食塩感受性高血圧の病態については、諸説あるが、名古屋市立大学医学部の木村玄次郎教授の説では摂取したナトリウムを腎から排泄しきれず、夜間も腎臓でナトリウム排泄のため多くの血流を要するnon-dipper型高血圧(夜間高血圧)が良い説明モデルとなる。

non-dipper型高血圧ではナトリウム排泄を促進する利尿剤を投与することでnon-dipper型がdipper型へと変化することが認められており、ナトリウム排泄が食塩感受性の有無を規定する因子のひとつと論じている。


アンジオテンシンはポリペプチドの一種で、昇圧作用を持つ生理活性物質である。

アンジオテンシンI〜IVの4種がある。うち、アンジオテンシンII〜IVは心臓収縮力を高め、細動脈を収縮させることで血圧を上昇させる。

腎臓の傍糸球体細胞から分泌されるレニンの作用によって、アンジオテンシノーゲンからアミノ酸10残基から成るアンジオテンシンI が作り出され、これがアンジオテンシン変換酵素、キマーゼ、カテプシンGの働きによってC末端の2残基が切り離され、アンジオテンシンII に変換される。

アンジオテンシンIIはACE2により、血管拡張作用と抗増殖作用を有するヘプタペプチドであるアンジオテンシン-(1-7)へと変換される。

アンジオテンシンI は昇圧作用を有さず、アンジオテンシンII が最も強い活性を持つ。(アンジオテンシンIII は II の4割程度の活性で、IV は更に低い)。

アンジオテンシンII は副腎皮質にある受容体に結合すると、副腎皮質からのアルドステロンの合成・分泌が促進される。

このアルドステロンの働きによって、腎集合管でのナトリウムの再吸収を促進し、これによって体液量が増加する事により、昇圧作用をもたらす。

また、脳下垂体に作用し利尿を抑えるホルモンである抗利尿ホルモンであるバソプレッシン(ADH)の分泌を促進し、水分の再吸収を促進することにより、昇圧作用をもたらす。


脂肪細胞が肥大化すると、血圧に関連して次のことが起こる。

1)過剰に分泌されたレプチンが交感神経の活動を亢進させ、血管を収縮させること等により、血圧を上昇させる。

2)レニン-アンジオテンシン系の活性化

アンジオテンシノーゲンは肝臓で産生されるが、肥大化脂肪細胞からも産生、分泌される。

アンジオテンシノーゲンから生成されたアンジオテンシンUは、副腎皮質球状帯に作用してナトリウムの再吸収を促進するアルドステロンの分泌を促進し体内に水分を貯留する。

また、脳下垂体に作用し利尿を抑えるホルモンである抗利尿ホルモンであるバソプレッシン(ADH)の分泌を促進し同じく体内に水分を貯留する。

これらのことにより高血圧を招く。肥満患者において高血圧症が多いのはこのためである。


肥満によるインスリン抵抗性は高インスリン血症をきたす。高インスリン血症は、腎尿細管へ直接作用してナトリウム貯留を引き起こし、これが水分を貯留し結果として血糖値を下げる作用につながるが、水分の貯留により高血圧を発症させることとなる。


(続く)

posted by ホーライ at 02:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 高血圧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする