●消化性潰瘍の分類
胃潰瘍・十二指腸潰瘍ともに内視鏡所見から以下の分類を用いて評価することが多い。
崎田分類
潰瘍の治癒状態を分類したもの。1961年に国立がんセンターの崎田隆夫(後に筑波大学教授)・大森皓次・三輪剛(後に東海大学教授)等が作成したもの。
元々は内視鏡観察ではなく当時の主流である「胃透視画像(バリウム造影)」から提唱されたものであるが、内視鏡観察が広く行われるようになってきた現在でも広く用いられている。
活動期(Active stage):潰瘍辺縁の浮腫像・厚い潰瘍白苔がある時期 A1:出血や血液の付着した潰瘍底はやや汚い白苔の状態
A2:潰瘍底はきれいな厚い白苔の状態 潰瘍辺縁の浮腫像は改善してくる時期
治癒過程期(Healing stage):潰瘍辺縁の浮腫像の消失・壁集中像・再生上皮の出現が見られてくる時期 H1:再生上皮が少し出現している(潰瘍の50%以下)
H2:再生上皮に多く覆われてきている(潰瘍の50%以上)
瘢痕期(Scar stage):潰瘍白苔が消失した時期
S1:赤色瘢痕
S2:白色瘢痕
Forrest分類
潰瘍の出血状態を分類したもの。1974年にJohn Forrestが「Lancet」に発表したもの。
現在は以下のWalter Heldweinによる改変版が広く用いられている。
Active bleeding(活動性出血)
Ia:Spurting bleed(噴出性出血)
Ib:Oozing bleed(漏出性出血)
Recent bleeding(最近の出血)
IIa:Non-bleeding visible vessel(出血の無い露出血管)
IIb:Adherent blood clot・Black base(凝血塊の付着・黒色潰瘍底)
No bleeding(出血無し)
III:Lesion without stigmata of recent bleeding(最近の出血所見の無い病変)
●消化性潰瘍の治療
緊急治療[編集]
出血病変・穿孔病変に対しては以下の緊急処置が行われる
出血性胃潰瘍・十二指腸潰瘍
潰瘍からの出血兆候を認める場合、以下の上部消化管内視鏡による内視鏡的止血術が行われる。
clip止血
局注止血 エピネフリン添加高張食塩水(HSE:Hypertonic Saline-Epinephrine)
純エタノール
高周波凝固止血
APC(argon plasma coagulation)止血
稀に内視鏡的な止血困難な症例は腹部血管カテーテル検査によって出血血管の塞栓術(IVR)が施行されたり、または手術(胃切開+出血血管縫合止血術+潰瘍縫縮術)が施行される場合もある。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍穿孔
潰瘍穿孔を来たした場合、消化管穿孔として腹膜炎発症のコントロールが重要となってくる。
基本的に絶食・輸液管理・胃管挿入・抗菌薬投与による保存的加療にて穿孔が自然閉鎖し軽快することも多いが、穿孔が巨大であったり腹膜炎が生じていたりするようであれば手術(穿孔部縫合術+大網被覆術+腹腔内洗浄)が行われる。
薬物治療
旧来、消化性潰瘍の治療としては胃切除術が施行されてきたが抗潰瘍薬の開発と共に消化性潰瘍の治療は以下の内服治療が基本となっている。
胃酸分泌抑制薬
プロトンポンプ阻害薬
ヒスタミンH2受容体拮抗薬
胃粘膜保護剤
アルギン酸ナトリウム
制酸剤
炭酸カルシウム
炭酸水素ナトリウム
H.Pylori除菌
ヘリコバクター・ピロリを保有している場合、再発予防として除菌療法を行うことが推奨されている。
以上