●プロトンポンプ阻害薬について
プロトンポンプ (Proton Pump) は、生物体内で光エネルギーなどを利用して水素イオン(プロトン)を能動輸送し、生体膜の内外に膜電位やプロトン勾配を作り出す機能、またはそれを行うタンパク質複合体をいう。
プロトンポンプによって形成されたプロトン勾配はATP合成などに利用される。
ATP合成酵素自身も逆反応として、ATPの加水分解によるエネルギーを利用してプロトンポンプとして働くことができる。
胃酸の分泌にもこのATPをエネルギー源とするタイプのプロトンポンプが働いている。
高度好塩菌の表面に存在する紫膜では、バクテリオロドプシンと呼ばれるタンパク質が配向しており、光エネルギーを利用しプロトンポンプ機能を発現している。
このほか光合成反応中心(光による)や、電子伝達系(酸化還元による)もプロトンポンプ機能を持っている。
●オメプラゾール
オメプラゾール(英: omeprazole)は、プロトンポンプ阻害薬に属する胃酸抑制薬の1つ。
略称はOPZ。
アストラゼネカ株式会社からオメプラール、三菱ウェルファーマ株式会社からオメプラゾンの商品名で発売されている。
胃の壁細胞に存在するプロトンポンプを直接抑制することによりH+の放出を阻害し、胃酸の産生を抑制する。
消化性潰瘍の治療に使用される。
●効果・効能
胃潰瘍
吻合部潰瘍
1回10〜20mgを1日1回投与する。期間は8週間までとする。
十二指腸潰瘍
1回10〜20mgを1日1回投与する。期間は6週間までとする。
逆流性食道炎
1回10〜20mgを1日1回、8週間投与する。再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法の場合、1日1回10〜20mgの長期投与が可能。
非びらん性胃食道逆流症(NERD)
1回10mgを1日1回、期間は4週間までとする。
ゾリンジャー・エリソン症候群
ヘリコバクター・ピロリの除菌の補助
●副作用
主な副作用は、頭痛、かすみ目、下痢・軟便、便秘、白血球減少、発疹・発熱、頻尿、月経異常、脱毛、女性化乳房、ALT・AST上昇等の肝障害、BUN上昇等。
まれに重い造血障害、横紋筋融解症、さらには急性腎不全、また激しい過敏症としてスティーブンス・ジョンソン症候群、間質性肺炎などの重い副作用もある。
●ランソプラゾール
ランソプラゾール(英: lansoprazole)とは、胃からの酸の産生を抑制するプロトンポンプ阻害薬の一つ。
ランソプラゾールは世界中の多くの企業で生産されており、種々の商品名がある(Prevacid、Helicid、Zoton、Inhibitolなど)。
アメリカ食品医薬品局は、1995年にランソプラゾールを最初に認可した。
日本で初めて上市された商品名は、タケプロン(武田薬品工業)。
後に後発品も多数販売されている。
ヘリコバクター・ピロリ除菌にも有用で、日本では一次除菌・二次除菌に認可されている。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の他、逆流性食道炎にも日本では認可されている。
上部消化管出血には注射剤も上市されている。
●ラベプラゾール
ラベプラゾール(ラベプラゾールナトリウム - Sodium Rabeprazole)とは、プロトンポンプ阻害薬に属する胃酸分泌抑制薬の一つ。
略称はRPZ。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎の治療に用いる。
先発品は「Pariet(パリエット)」として、日本、英国、ギリシャ、オーストラリア、カナダ、ロシア、ブラジル等で販売されている。
米国では「AcipHex(アシフェックス)」として販売されている。
日本での製造販売は、エーザイ株式会社。
日本では後発品が2010年11月に各社から発売されている。
●エソメプラゾール
エソメプラゾール (英: esomeprazole) は、日本では4番目に開発・上市されたプロトンポンプ阻害剤である。
●概要
日本国外では Zoleri、Nexium、Lucen、Esopralなどの商品名でアストラゼネカから製造販売されている。
日本では2011年よりネキシウムの商品名で製造・開発: アストラゼネカ、流通・販売: 第一三共で上市された。
エスメプラゾールはオメプラゾール(商品名:Losec/Prilosec)のS-エナンチオマーであり、アストラゼネカは、単一のエナンチオマーであるエスメプラゾールはラセミ混合物であるオメプラゾールよりも薬効が改善していると主張している。
しかしながら、活性が向上しているかについては議論があり、一部ではオメプラゾールからエスメプラゾールに切り替える利点はないと主張されている。
プロトンポンプ阻害剤であるエスメプラゾールは、胃壁細胞のATPアーゼを阻害することによって胃酸分泌を抑制する。
●薬理
エソメプラゾールは、オメプラゾールを光学分割したS-エナンチオマーである。
S体はR体に比べ、肝臓での初回通過効果を受けにくく、未変化体のAUCはオメプラゾールに比べおよそ1.7倍で推移するため、より強い酸分泌抑制効果を示す。
S体とR体の酸分泌抑制作用には差はない。
以上