*理学所見
特に、急性増悪時には、胸部聴診にて、呼気時優位に狭窄音が聴取される。
狭窄音には、笛声音(wheeze「ウィーズ」, piping rale)、rhonchi等がある。
急性増悪時には、呼気延長を認め、さらに、進行すると、陥没呼吸等、努力呼吸を呈するようになり、呼吸数増多(英 tachypnea)やチアノーゼ(英 cyanosis)を伴うこともある。
最重症の急性増悪においては、意識障害や、呼吸音が減弱して、喘鳴が聴取されなくなるsilent chestに至ることがあるが、極めて危険で緊急の処置を要する状態である。
理学所見は気候や時間帯による影響も受ける。
*気道可逆性試験
気道閉塞の可逆性は、喘息に特異性が高いため、有用な検査であるが、近年では、従来、気道閉塞の可逆性はないと考えられていた慢性閉塞性肺疾患(COPD)においても気道閉塞の可逆性が存在する症例があることが示されている。
米国胸部疾患学会の基準では、β2刺激薬吸入前後、1秒量が200ml以上かつ12%以上改善した場合、気道可逆性ありと診断する。
あるいは2-3週間のステロイド内服・吸入前後で評価することも可能である。
ただし検査時に喘息発作が起きていない場合、気道の可逆性を証明できないこともあるため自宅にピークフローメーターを持って帰ってもらい、ピークフロー値に20%以上の日内変動がみられた場合も気道可逆性ありと診断できる。
*スパイロメトリー
スパイロメーターを用いた呼吸機能検査。
喘息では気道の狭窄により呼気の排出速度が低下する。(FEV1.0<75%)
●気管支喘息の長期管理のマネジメント
喘息のガイドラインとして、国際的に最も信頼されているのは、WHOによるThe Global Initiative for Asthma (GINA)である。
Evidence-levelの高い優れた最新の文献を基に、数年毎にアップデートされている。
世界中の国・地域において、各々のローカルな喘息ガイドラインが存在するが、多くは、このGINAを参考に作成されている。
他に、国際的に知られている喘息のガイドラインとして、米国喘息管理・治療ガイドライン(EPR3)がある。
日本では、主に、日本アレルギー学会が作成するガイドライン(JGL)が用いられている。
残念なことに喘息の診断基準というものは完成していない。
日本アレルギー協会のガイドラインでは成人喘息の診断の目安が記載されている。
*喘息に特徴的な症状
発作性の呼吸困難、喘鳴、夜間や早朝に出現しやすい咳。
*可逆性気流制限
自然にあるいは治療により寛解する気流制限が認められる。
PEF(ピークフロー)値の日内変動が20%以上、β2刺激薬吸入によって1秒率が12%以上増加、かつ絶対量で200ml以上の増加が認められる。
気道過敏性の亢進アセチルコリン、ヒスタミン、メサコリンに対する気道収縮反応の亢進が認められる。
気道過敏性を認める疾患は喘息だけではなく、咳喘息、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、うっ血性心不全、ウイルス性呼吸器感染後などでも認められるため注意が必要である。
これらによって気管支喘息と診断をしたら、長期管理を開始する。
なお、発作中であったら発作の治療を優先する。
長期管理の方法はガイドラインによってわずかな差異があるものの基本は殆ど同じであるためGINA2006に基づいて説明する。
なおICSは吸入ステロイド、LABAは長期作用型β2刺激薬、LTRAはロイコトリエン受容体拮抗薬である。
GINA2006では治療目標である良好なコントロールに関して問診によって評価できるとしている。
日中に週3回以上症状が出現する、喘息によって日常生活によって制限がある、夜間に喘息症状のために早朝おきることがある、症状を抑えるために気管支拡張薬を週に3回以上使用した、ピークフローが自己最高値もしくは予測値の80%未満である、喘息増悪発作が過去1年に1回以上ある、以上の6項目のうち3項目以上に該当したらコントロール不良であり、ひとつでも該当すればコントロール不十分、また喘息増悪発作が最近認められたらそれだけでコントロール不十分とする。
3ヶ月ごとに治療効果判定を行い、コントロール良好群であれば、ステップダウンし、コントロール不良群であればステップアップする。
コントロール不十分が持続する場合もステップアップを検討する。
JGL2006ではステップ1が症状によって規定されており、その症状にコントロールするようにコントローラーを決定する。
ステップ2のコントローラーでステップ2の症状が認められればコントロール不良でありステップ3にステップアップする。
●喘息発作のマネジメント
息発作は時に、意識障害、死亡することもある緊急事態である。
リリーバーによって改善がみられないため救急部に受診するというのが典型的である。
初期治療としては酸素投与とリリーバー投与となるが、呼吸困難、喘鳴の原因が心疾患など喘息発作以外の可能性があるために注意が必要である。
喘息発作の程度は呼吸困難はあるが横になれ動ける小発作、呼吸困難で横になれないが動ける中発作、呼吸困難で動けない大発作に分類される。
●喘息死の危険因子
これらのリスクファクターがある患者はより慎重な治療が求められる。
・ステロイド薬の全身投与中または中止したばかりである。
・過去一年間に喘息発作による入院または救急外来受診した。
・喘息発作で気管内挿管や人工呼吸管理を必要とした。
・短時間作用性β2刺激薬を月に2本以上と過剰使用している。
・鎮静薬を使用している。
・喘息の治療計画に従わない。