●抗コリン薬
吸入抗コリン薬はβ2刺激薬に比べ、気管支拡張効果が弱く、効果発現が遅い。
また、呼吸器粘膜から吸収されることにより口渇感、前立腺肥大、頻脈、緑内障といった副作用が出現する恐れがある。
アトロピンの4級アンモニウム塩である臭化イプラトロピウム(アトロベント等)ではこのような副作用は軽減されている。
日本ではイプラトロピウムはMDIとしてのみ供給されており、次のような状況では有用性はある。
βブロッカーにより気管支収縮が起こった場合、吸入β刺激薬に反応しない急性増悪時、モノアミンオキシターゼ阻害薬を服用している場合、重度の不整脈や不安定狭心症を合併しているため、交感神経系の刺激を回避したい場合などである。
作用機序は気道が副交感神経にてトーヌスが維持されているため、トーヌスの維持を解除することで気管支拡張を得る。
イプラトロピウム(アトロベントなど)、オキシトロピウム(テルシガン)は気道粘液の粘稠度を増加させないため非常に使いやすいとされている。
作用持続時間は6〜9時間である。
COPDに対する定期治療薬として用いられるチオトロピウムは、近年、一部の喘息症例において、喘息コントローラーとしても有効であることが報告されている。
●抗IgE抗体
オマリズマブ(ゾレア)は難治性喘息(添付文書上は、最重症のアトピー型喘息)に対して行われる分子標的治療薬で、遅発性アレルギーが出現するため2時間の経過観察が必要となる。
血清総IgE値と体重により、投与量、投与間隔が決定される。
●抗TNF抗体
近年注目されている分子標的薬である。
●去痰剤
ムコダイン,ムコサールなどがよく処方される。
排痰に伴い、気道の抵抗が少なくなる。
●14員環マクロライド
エリスロマイシンなどの少量長期投与を行う医師もいる。
慢性気管支炎、びまん性汎細気管支炎などの合併例には有効である。
●漢方薬
麻杏甘石湯、五虎湯、神秘湯、小青竜湯、麦門冬湯などを、証に応じて処方。
気管拡張剤エフェドリンは、麻杏甘石湯などに配合される生薬の麻黄から1885年(明治18年)長井長義によって単離抽出された。
●減感作療法
中程度あるいは他の方法で喘息が制御できない場合はアレルゲンを繰り返し注射するアレルゲン免疫療法(減感作療法)を行う場合もある。
90%以上がダニアレルゲンが原因である小児喘息の場合はアレルゲン免疫療法は有効性が高いという意見もある。
WHOの見解書では、アレルゲン免疫療法(減感作療法)が喘息の自然経過を変える唯一の根本的治療法として記述されている。
●その他の治療
古くから水泳によって改善するといったことも言われているが、呼吸筋を鍛えたことにより病状が良くなったと感じるため(ピークフロー値の上昇)で、炎症が治まったわけではない。
場合によってはプールの塩素によって更に悪化することもあり注意が必要である。
水泳による疲労、塩素で喘息を発病した患者もいる。
直接の治療行為には該当しないが、ピークフローメーターにより日頃のピークフロー値の記録をしておくことで自覚症状のない軽い発作を発見できたり、発作がおきやすい時期、時間帯等を把握しやすくなるため、喘息の管理に有効である。
ピークフローは症状の変化に先行し変化することが知られている。
また重篤な患者ほど自覚症状が出現しにくいためピークフローによって客観的な評価が必要である。
ピークフローは3回測定を行い、最高値を記録する。
慢性呼吸不全の患者には在宅酸素療法を行う。