2014年06月24日

気管支喘息の治療(4)

●気管支喘息の治療(4)


●気管支喘息の亜型


●アスピリン喘息、aspirin-exacerbated respiratory diease(AERD)

喘息患者の何割かが獲得するアスピリンなどの非ステロイド系抗炎症薬、特にCOX1阻害薬に対する過敏体質であり、アレルギーによるものではない。

非ステロイド系抗炎症薬の服用から数分〜1時間後に鼻汁過多、鼻閉、喘息発作が起こる。

このように症状が、上気道、下気道に及ぶことから、近年、aspirin-exacerbated respiratory diease(AERD)と呼称されるようになった。

成人女性に好発し、小児では稀である。

アトピー型、非アトピー型喘息患者のいずれにおいても認められ、中等症以上の症例が多く、急性増悪時には、しばしば、重度の呼吸器症状を来す。

病歴から診断可能な例もあるが、確定診断のためにアスピリン負荷試験を要することが少なくない。

成人喘息患者の約21%は誘発試験でアスピリン喘息を起こしたとの報告がある。



COX1阻害によるロイコトリエン代謝経路に傾くためにおこる代謝異常が病態の基盤にあるため、COX2阻害薬投与においては発生率が低下する。

しかし、COX2阻害薬も他のNSAIDsと同様、添付文書上、喘息患者には禁忌とされている。

病態の特徴の一つにロイコトリエンの過剰産生があり、そのためロイコトリエン拮抗薬が用いられることが多い。

好酸球性副鼻腔炎の合併率が極めて高く、鼻茸や嗅覚低下を合併することが多い。

他臓器の好酸球性疾患の合併もみられる。


アスピリン喘息の急性増悪ではコハク酸エステル型ステロイド(ソルコーテフ、ソル・メドロール、水溶性プレドニンなど)の急速静注は喘息の増悪を誘発することがある。

1時間以上かけて点滴を行えば比較的安全とされている。

リン酸エステル型ステロイド薬(デカドロン、リンデロン、ハイドロコートンなど)を1時間以上かけて点滴投与する。




●運動誘発性喘息

健常者では運動によって気道の径が変化することはないが、喘息患者の場合は運動によって気管収縮が誘発される。

特に、運動によって臨床的な症状が出現する場合を運動誘発性喘息という。

運動が刺激因子となり、マスト細胞からのロイコトリエン産生が増加する病態が基盤にあるため、ロイコトリエン拮抗薬が効果的である。



●吸入アレルゲンによる喘息

吸入アレルゲンに対して遅発性喘息反応が起こることがある。

曝露後、数時間から数日間気道過敏性が亢進するのだが、詳細な機序は不明である。

過敏性肺炎とは異なり1型アレルギーである。




●咳喘息

咳喘息(cough variant asthma; CVA)の症状は、慢性(8週間以上)に発作性の咳が持続することが特徴的である。

β-2 agonist吸入により臨床症状が改善するため、治療的診断として有用である。

典型的な喘息と異なり、通常、胸部聴診にて狭窄音は聴取されず、閉塞性換気障害や気道可逆性等、異常所見が認められないため、確定診断に難渋し、ドクターショッピングを引き起こすことも多い。


喘息と同様の病態(慢性の気道炎症、気道過敏性の亢進等)が基盤にあることが判明しており、これらの評価が可能な専門医療機関等を受診することが望まれる。

通常、咳喘息における気道炎症や気道過敏性亢進の程度は、喘息に比し軽微であることから、喘息の前段階として認識されることもあり、軽症喘息におけるコントローラーに準じた定期的薬物療法が導入されることが多いが、重症の咳喘息症例も存在し、重症喘息と同等の治療を要することもある。

咳喘息を無治療で放置すると、約3割が典型的な喘息に移行するとされる。






●気管支喘息と鑑別を要する疾患


●慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease; COPD)

非喫煙者や、特異的遺伝子変異をもつ若年者に発症することもあるが、多くは、高齢者に発症し、喫煙との関連が極めて深い。

労作時の呼吸困難、息切れ、β2-agonist吸入後の1秒率が70%未満であること、胸部画像診断における気腫性変化等が重要であるが、軽症例では、所見に乏しいこともある。

喘息、COPDにおいて、典型例では、病態を形成する炎症性細胞、サイトカイン、ケモカイン等のprofileに対照的な特徴が認められるが、非典型例では両者の差異が不明瞭となり、しばしば、鑑別困難となる。

両者の合併例も少なくなく、近年、Overlap症候群という疾患概念が提唱されている。



喘息と同様に、急性増悪(喘鳴、呼吸困難等の増強)を来しうる疾患であり、気道感染や心不全が誘因となる。

従来、喘息よりも気管支拡張剤に対する反応が悪く、気道可逆性の有無が両者の鑑別において有用とされてきたが、近年では、典型的な喘息と同様の気道可逆性を示すCOPD症例が報告されている。


●アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(Allergic BronchoPulmonary Aspergillosis; ABPA)

気管支喘息患者の1%程度にみられると報告される。真菌の一つであるアスペルギルスに対するアレルギーによりおこり、喀痰中の粘液栓、中枢性気管支拡張、X線写真における肺浸潤影などを特徴とする。


●アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグストラウス症候群)

気管支喘息患者の5000人に1人程度に発症すると報告される。

病気の本体は全身の小動脈〜細動脈の炎症(血管炎)であり、発熱、手足のしびれ(末梢神経炎)、筋肉痛、関節痛など多彩な症状を呈する。

一過性の肺浸潤影が認められることもある。ロイコトリエン拮抗薬との関連が指摘されているが、否定的な報告もある。


●ブロンコレア(気管支漏)

卵の白身のような外観を呈した喀痰を1日に100ml以上、難治時に喀出する病態。

患者はかなりの苦痛を伴うがほとんどの場合心理的なものと判断され、診断も治療も受けられず難治化していく。

専門医による適切な診断と専門医の下での治療が必要。喘息にブロンコレアが合併すると難治性喘息に移行する事が多い。


posted by ホーライ at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 気管支喘息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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