2014年06月26日

ステロイド系抗炎症薬(1)

●ステロイド系抗炎症薬(1)


ステロイド系抗炎症薬(ステロイドけいこうえんしょうやく)は医薬品である。

医療現場ではステロイドと略されることが多い。

主な成分として糖質コルチコイドあるいはその誘導体が含まれており、抗炎症作用や免疫抑制作用などを期待して用いられる。



●ステロイド剤の剤型

ステロイド剤は多数の剤型が存在する。

経口剤

錠剤

シロップ-子供に主に使用

粉末-微量の調整に使用しやすい

注射剤種類によって静脈注射・筋肉注射がある。

ソルメドロールはステロイドパルス治療に静注使用される。

一方、リンデロン・デカドロンは筋肉注射で使用されることが多い。

外用剤皮膚科・眼科・耳鼻科用の各種の外用剤がある。

また、喘息や気管支炎に使用する噴霧剤・吸入剤、口内炎に使用する付着型の剤型(商品名:アフタッチ)など、多種多様な剤型がある。



●ステロイド剤の全身投与の実際

●代表的な医薬品

プレドニゾロンやベクロメタゾン、ベタメタゾン、フルチカゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン等がある。

それぞれ作用持続時間及び強度が異なるが、プレドニゾロンは中間的な持続時間・強度を示し、臨床においても用いられることが多い。

鉱質コルチコイド作用は副作用の浮腫に関与しておりこれが強いほど浮腫が出やすい。

デキサメタゾンは鉱質コルチコイド作用が極めて少ないため浮腫は起りにくいとされている。

半減期が長いものは副腎抑制が強いと考えられている。

その点ではデキサメタゾンは副作用が強いと考えられる。

また半減期は薬効に関係することがある。

ステロイド代謝が亢進した場合、半減期の短いものでは効果が不十分であるが、同力価の半減期の長いものに変更すると十分な抗炎症作用が得られることもある。



●ステロイド剤の作用機序

ステロイド系抗炎症薬の作用機序には、遺伝子を介するもの(genomic effect)と遺伝子を介さないもの (nongenomic effect) がある。

ステロイド骨格を有するステロイド製剤は親水性の性質と親油性の性質を有する(両親媒性)ため細胞膜を透過しやすく、血中から末端組織に容易に移行する。


●遺伝子を介する作用

ステロイド系抗炎症薬は、天然のグルココルチコイド(副腎皮質ホルモンの一種)あるいはその合成アナログであることから、細胞内に入った後、細胞質に存在するステロイド受容体(細胞質内ステロイド受容体cGCR)であるグルココルチコイド受容体 (GRα; Glucocorticoid Receptor α) と結合する。

GRαは本来副腎皮質から分泌される内因性のグルココルチコイド(ヒドロコルチゾン)に対する受容体であり、通常 heat shock protein 90 をはじめとしたシャペロンと結合して薬物(生体内ではグルココルチコイド)と結合しやすい構造に保持されている。

薬物の結合により hsp90 が受容体から解離し、GRαは2量体を形成し、核内に移行する。

GRαをはじめとしたステロイド受容体スーパーファミリーに属する分子はリガンドに対する受容体として働く一方、それ自身がDNAと相互作用する転写因子としての性質を持つ。

DNAにはGRαと結合するための配列 (glucocorticoid responsive element; GRE, GGTACAnnnTGTTCT) が存在している。



DNAはヒストンと呼ばれるタンパク質に巻きついていることが知られているが、何らかの刺激により遺伝子が活性化するとヒストンがアセチル化を受け、DNAの巻きつき方が緩むことにより転写因子と相互作用しやすい状態になる。

つまり遺伝子の発現調節はヒストンのアセチル化状態によりコントロールされている。

GRαがDNAに結合するとヒストンアセチル基転移酵素 (Histone Acetyl Tranceferase; HAT) 活性を持った蛋白質が結合してきてヒストンをアセチル化することによりクロマチン構造の一部を解き、抗炎症蛋白質遺伝子の転写を亢進する。



一方、グルココルチコイドが結合したGRαは単量体でも作用しうる。

薬物と結合したGRαは核内に移行するとヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC、Histone Deacetylase) を引き連れて活性化した炎症性蛋白質のmRNAをコードする遺伝子の抑制を行う。

具体的には炎症性蛋白質遺伝子の転写に関与する転写因子NF-κBにGRαとHDACの複合体が結合した後2つの経路により転写を抑制する。

1つはGRαが直接NF-κBの活性を抑制する経路、もう1つはGRαがつれてきたHDACによりヒストンの脱アセチル化が生じ、転写抑制を起こす経路である。



グルココルチコイドにより産生が亢進される抗炎症蛋白質にはlipocortin、interleukin-1 receptor antagonist、β2受容体、IκBなどがある。

グルココルチコイドにより産生が抑制される蛋白質には種々の炎症性サイトカインやケモカイン、細胞接着分子などがある。

グルココルチコイドは上記に述べた抗炎症作用以外にも肝臓での糖新生にも関与している他、ミネラロコルチコイド受容体に対してもリガンドとして結合して作用を発現するため、これらの経路は副作用の発現に寄与している。




●遺伝子を介さない作用

不明な点も多いが、大量療法、ステロイドパルス療法で関与していると考えられている。

細胞膜上ステロイド受容体(mGCR)を介した遺伝子を介さない作用の他、非特異的な作用もあると考えられており、いずれも抗炎症作用、免疫調整作用などに関与すると考えられている。

大量療法やステロイドパルス療法では遺伝子を介した作用では説明ができない速さで効果が発現すること、GRが飽和する量以上投与しても用量依存性に効果が認められることから存在すると考えられている。

ラベル:抗炎症薬
posted by ホーライ at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ステロイド剤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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