リスクがあると考えられる人に対しては、抗凝固薬によって血栓症および塞栓症の予防がある程度可能である。
静脈血栓症のもっとも一般的なタイプは深部静脈血栓症(DVT)である。
動脈血栓症では通常心臓に向かう血管で起こるため、心臓発作(心血管疾患。狭心症や心筋梗塞)が起こる。
また脳の血管でも起こるため、脳卒中(のうち一過性脳虚血発作・血栓性脳梗塞・心原性脳塞栓など)が起こる。
予防には一般的にリスク対便益分析をすることが求められる。
すべての抗凝固薬は大出血の危険が多少増加するからである。
たとえば心房細動では、脳梗塞をおこすリスク(高齢であるとか高血圧であるとかの危険因子を加算した上でのリスク)が、ワルファリンを使用することで少ないとはいえ予想される大出血のリスクを上回る必要がある。
入院患者では、血栓症は(原疾患の)主要な合併症であり、時として死因となる。
たとえばイギリス議会Health Select Committee(en)では2005年、院内発生の血栓症による死亡者が年間25,000人に上ったことが報告され、以来「血栓症予防」が徐々に強調されるようになっている。
外科手術のための入院患者について、段階的な弾性ストッキングの装着は広く行われるようになっており、また重症患者・安静状態が遷延する患者・すべての整形外科手術では診療ガイドラインで低分子量ヘパリンの投与、下肢間欠的空気圧迫法あるいは(以上のいずれも適応禁忌であったり、最近深部静脈血栓症を発症した患者では)下大静脈フィルターの留置を推奨している。
外科的疾患だけでなく内科的疾患の患者でも低分子量ヘパリンはやはり血栓症を防止することが知られており、イギリス主席医務官は正式なガイドラインに先立って、内科患者に対して予防的な方法を講ずるべきであるとする指針を発表している。
以上