2014年03月29日

中枢神経に効く薬(3)「アルツハイマー治療薬」

●アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症(アルツハイマーがたにんちしょう、Alzheimer's disease、AD)は、認知機能低下、人格の変化を主な症状とする認知症の一種である。

日本では、認知症のうちでも脳血管性認知症、レビー小体病と並んで最も多いタイプである。

アルツハイマー病(AD)には、以下の2つのタイプがある。

●家族性アルツハイマー病(Familial AD、FAD)

完全な常染色体優性遺伝を示し、遺伝性アルツハイマー病ともよばれる。



●アルツハイマー型認知症(dementia of Alzheimer type、DAT)

アルツハイマー病の中でほとんどを占める。

老年期(60歳以上)に発症するもの。


●病理

アルツハイマー病では、以下が特徴とされる。

・びまん性の脳萎縮

・大脳皮質に老人斑(アミロイドベータ:Aβの沈着像)と、アルツハイマー型神経原線維変化(neurofibrillary tangle:NFT)の広範囲出現

FADの原因となるアミロイド前駆体蛋白遺伝子変異、プレセニリン遺伝子変異のいずれもAβの産生亢進を誘導することが判明している。


●症状

症状は進行する認知障害(記憶障害、見当識障害、学習障害、注意障害、空間認知機能や問題解決能力の障害など)であり、生活に支障が出てくる。

重症度が増し、高度になると摂食や着替え、意思疎通などもできなくなり最終的には寝たきりになる。

階段状に進行する(すなわち、ある時点を境にはっきりと症状が悪化する)脳血管性認知症と異なり、徐々に進行する点が特徴的。

症状経過の途中で、被害妄想や幻覚(とくに幻視)が出現する場合もある。

暴言・暴力・徘徊・不潔行為などの問題行動(いわゆる周辺症状)が見られることもあり、介護上大きな困難を伴うため、医療機関受診の最大の契機となる。



●薬物療法

アルツハイマー型認知症に対しては近年治療薬の開発によって薬物治療が主に行われるようになってきたが、現在のところ根本的治療薬は見つかっていない。

現在開発中の薬現在開発研究段階ではあるが根本治療薬として以下が臨床研究中である。

・Aβ(アミロイドベータ)ワクチン療法

・抗Aβモノクローナル抗体療法


現在発売中の薬現在使用されているアルツハイマー型認知症の治療薬は大きく分けて2種類に分かれる。

・コリンエステラーゼ阻害薬

 主にマイネルト基底核から投射される脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの活性がアルツハイマー型認知症では低下していることが分かっている。

そのため、その分解を促進するコリンエステラーゼを阻害するコリンエステラーゼ阻害薬が各国で承認を受け治療に使用されている。

現在日本では以下の3種類の薬剤が利用できる。

・ドネペジル(Donepezil アリセプト:Aricept) 現在重症のアルツハイマー型認知症で使用できるのはドネペジルのみである。

用量は1日あたり3-10mg(海外では23mg/日の用法もある)である。

コリンエステラーゼ阻害薬に共通して最も多い副作用である消化管症状(吐き気・嘔吐・下痢)のため3mgから開始することが推奨されている。

その他よく見られる副作用としては徐脈などが見られる。

ドネペジルの効果についてはMMSEで1-2点程度であり劇的な改善が認められないものの、使用開始時に効果がなかった患者でも12ヶ月後に認知機能の低下が抑えられたとする報告があり、一定期間進行を遅らせることができると考えられている。

ガランタミン(Galantamine レミニール:Reminyl)

リバスチグミン(Rivastigmine リバスタッチパッチ イクセロンパッチ) 分子量が小さいため経皮吸収が可能であり、飲み薬ではなく貼り薬として使用することが出来る。

このため比較的消化管への副作用が少ない。

アセチルコリンエステラーゼだけでなくブチリルコリンエステラーゼも阻害するため、従来のコリンエステラーゼ阻害薬よりも効果が高いとの報告がある。


NMDA阻害薬

メマンチン(Memantine メマリー:Memary)

現在のところ軽症のアルツハイマー型認知症に対して適応が通っていないものの、海外の研究でドネペジルとメマンチン併用した群では自宅からナーシングホームへの入所率がドネペジル単独使用または薬剤非使用群に対し優位に低下することが分かっている。

メマンチンで最も多い副作用はめまいである。





●●● ドネペジル ●●●

ドネペジル (donepezil) は、アルツハイマー型認知症(痴呆)進行抑制剤の一種。エーザイの杉本八郎らにより開発された。

ドネペジル塩酸塩は、アリセプトという商品名でエーザイから発売され、かつては海外市場おいてはファイザーとの提携により、同名(Aricept)で販売されている。

「新薬開発におき、欧米企業に後れをとる」と批判されがちな日本の製薬業界であるが、アリセプトは日本国外市場でも市場占有率8割以上を誇る。



●適用・効能

アルツハイマー型認知症の認知症症状の進行抑制に用いられる。

アルツハイマー型認知症の早期に使用することによって認知機能の一時的な改善をもたらす。

アルツハイマー型認知症の病態を治療したり、最終的に認知症が悪化することを防ぐ薬剤ではない。

投与12週以降で臨床認知機能評価尺度の点数を改善する。

しかし、数年以上の長期にわたる投与試験は行われておらず、現時点で長期投与の有効性についてのデータはない。

これは、投薬対象人口が高齢であり、ランダムサンプルを用いた縦断的研究データ収集が難航しているからである。


●作用機序

アルツハイマー型認知症では、脳内コリン作動性神経系の障害が認められる。

本薬は、アセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害することにより脳内アセチルコリン量を増加させ、脳内コリン作動性神経系を賦活する。



以上
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中枢神経に効く薬(2)「抗パーキンソン病薬」

抗パーキンソン病薬(antiparkinson, antiparkinsonian)は、パーキンソン病やパーキンソン症候群の症状を治療し軽減する目的で用いられる薬物の種類である。

これらの薬剤の多くは、中枢神経系(CNS)におけるドーパミン活性を増加させたりアセチルコリン活性を低下することによって作用する。

1960年代にはパーキンソン病の治療にドーパミン補充療法が登場したため、抗コリン性のパーキンソン病薬は、主に抗精神病薬との併用において用いられる。

抗コリン薬は、抗精神病薬の使用による遅発性ジスキネジアには無効である。

抗コリン薬のビペリデン(商品名はアキネトンやタスモリン)の添付文書には、その旨が記載されている。

しかし、使用を控えるように推奨される現代においても、しばしば精神科の多剤大量処方にて用いられる。


●ドーパミン作用

・ドーパミン作動性前駆体

好ましくない交感神経様作用の副作用を防止するために他の薬よりも優先される。

代謝されドーパミンになるアミノ酸といった神経伝達物質の前駆体である。

*フェニルアラニン

*チロシン

*レボドパ


・選択的モノアミン酸化酵素B阻害剤

モノアミン酸化酵素B(英語版)によるドーパミンの代謝を阻むことで、脳内の濃度を増加させる。

モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)である。

従って致命的になる可能性のあるセロトニン症候群を避けるための多くの薬剤相互作用の注意がある。

*セレギリン

*ラサギリン


・COMT阻害剤

カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)によるドーパミンの代謝を阻むことで、脳内の濃度を増加させる。肝障害の可能性があるため監視が必要である。

*エンタカポン

*トルカポン


・ドーパミン受容体作動薬

直接、ドーパミンの活動を増加させる。

多くの覚醒剤は、慢性的な使用により統合失調症様の症状を呈するため、現に罹患しているか既往歴がある場合には慎重投与の旨の、使用上の注意が添付文書に記載されている。

*アポモルヒネ(アポカイン)

*ブロモクリプチン

*プラミペキソール

*ロピニロール(レキップ)

*ロチゴチン(ニュープロパッチ)




●抗コリン作用

・抗コリン薬

ムスカリン作動性拮抗薬(英語版) (たとえばベンズトロピン)。

運動過剰症を予防する。

非定型抗精神病薬が登場した現代においては、抗精神病薬の単剤化、減量などによって抗パーキンソン薬を用いないようにすることが推奨されている。

抗精神病薬のハロペリドールの筋肉注射においても慎重な監視によって急性ジストニアが生じた場合にのみビペリデンを投与するというのが、世界的に標準的な方法である。

*ビペリデン (アキネトン、タスモリン)

*ジフェンヒドラミン(レスタミン)

*ジメンヒドリナート(ドラマミン)

*スコポラミン(ブスコパン)

*ベンズトロピン


・副作用

副作用は、口渇、便秘、排尿障害、認知機能や注意機能の低下、遅発性ジスキネジアのリスク増加など。

認知機能の障害として物事を想起するテストに対しての記憶障害がみられるが、薬剤の中止により10日程度で改善する。

甲状腺機能や眼内圧を亢進させるため、緑内障や甲状腺機能亢進症では併用禁忌あるいは慎重投与である。

抗コリン薬は、抗精神病薬の使用による遅発性ジスキネジアの危険性を高めるといういくつかの証拠がある。

少なくとも抗コリン薬が遅発性ジスキネジアの重症度を高くすることについては十分な証拠があるため、抗コリン薬の中止が推奨される。

従って、ビペリデン(商品名はアキネトンやタスモリン)の添付文書では、遅発性ジスキネジアには無効で場合により悪化する旨が記載されている


・離脱症状

抗コリン性抗パーキンソン病薬の減薬は、コリン作動性リバウンド症候群を生じるため、慎重に徐々に行うことが必要である。

これらの薬剤の離脱症状として、不安、不眠、頭痛、嘔吐、めまい、インフルエンザ様症状や妄想症状の悪化が見られるため、抗精神病薬と同時の減量は注意が必要である。

抗パーキンソン病薬にも離脱症状が生じるため抗精神病薬が1剤になった時点で抗パーキンソン病薬の減量に取り掛かるなど慎重にとりかかる必要がある。



以上
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2014年03月28日

中枢神経に効く薬(1)「てんかん治療薬(1)」

●「てんかん」とは

てんかん(癲癇、Epilepsy)とは、脳細胞のネットワークに起きる異常な神経活動(以下、てんかん放電)のためてんかん発作を来す疾患あるいは症状である。

WHO国際疾病分類第10版(ICD-10)ではG40である。



●てんかんの概念と歴史

てんかんは古くから存在が知られる疾患のひとつで、古くはソクラテスやユリウス・カエサルが発病した記録が残っており、各国の疫学データでは発症率が人口の1%前後となっている。

昔は「子供の病気」とされていたが、近年の調査研究で、老若男女関係なく発症する可能性があるとの見解も示され、80歳を過ぎてから発病した報告例もある。

てんかんは特に全般発作時の激しい全身の痙攣から、医学的な知識がない時代には狐憑きなどに代表される憑き物が憑依したと誤認され、時に周囲に混乱を起すことがあり差別の対象となることがあった。



●てんかんの定義

WHOによる定義によるとてんかん(epilepsy)とは『種種の病因によってもたらされる慢性の脳疾患であり、大脳ニューロンの過剰な放電から由来する反復性の発作(てんかん発作、seizure)を主徴とし、それに変異に富んだ臨床ならびに検査所見の表出が伴う』とされている。

この定義は「大脳皮質の過剰な発射ではない」、「反復性でない」、「脳疾患ではない」、「臨床症状が合わない」、「検査所見が合わない」ものは「てんかん」から鑑別するべきだという意味が込められている。

日本神経学会のてんかん治療ガイドライン2010では『てんかんとは慢性の脳の病気で、大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、脳の症状(発作)が反復性(2回以上)に起こるものである。

発作は突然起こり、普通とは異なる身体症状や意識、運動および感覚の変化が生じる。

明らかな痙攣があればてんかんの可能性は高い』と記載されている。

上記の定義があるため、以下のことが言える病因が大脳ニューロン由来の過剰な活動であるため、大脳ニューロンを由来としない不随意運動はてんかんではない。

例えば脊髄性ミオクローヌスや下位ニューロン障害の線維束攣縮などはてんかんではない。

また経過が慢性反復性でなければならないことから、薬物中毒の離脱期におこる痙攣はてんかんではない。

これらの痙攣に関しては急性症候性発作で述べる。



●てんかんの治療

てんかんの治療のガイドラインとしては日本神経学会のてんかん治療ガイドライン2010のほか日本神経治療学会の高齢発症てんかんのガイドライン、日本てんかん学会のガイドラインが知られている。

てんかん治療ガイドラインはてんかんを専門としない一般医を対象としているのに対して日本てんかん学会のガイドラインはてんかん専門医レベルを対象としている。

主にのてんかん治療ガイドライン2010を念頭に記載する。


急性の脳損傷、代謝性要因、炎症、中毒、薬剤性などによる原因、誘因が明らかな急性症候性発作の再発率は3〜10%程度と低く、原因、誘因を避ける事により経過観察が可能なケースも多い。

誘因がはっきりしないてんかん発作は再発率が30〜50%と高く、各々の症例に応じて治療開始を検討する。

初回発作後5年以内の再発率は35%であるが2回目の発作後1年以内の再発率は73%となるため一般にてんかんは2回以上の発作後に治療を開始する。

個発発作でも神経学的異常(例えばtodd麻痺)、脳波異常ないしてんかんの家族歴陽性の場合は再発率が高くなるため治療開始を考慮する。

また高齢者は初回発作後の再発率が66〜90%と高く、初回発作後に治療を開始することが多い。

初回発作、再発1回目、再発5回目での治療開始でその後2年までは発作抑制率に若干の差があるが長期的にみると差はない。

抗てんかん薬の選択を左右する因子は発作型、てんかん症候群、年齢、性別、併存疾患、抗てんかん薬の効果と副作用、ガイドラインでの位置づけ、費用、保険適応などによって決定する。




●抗てんかん薬

抗てんかん薬(こうてんかんやく)は、てんかん及び痙攣に使用する薬品である。知覚や意識を障害することなく筋の異常興奮を抑制する。


●一般的な抗てんかん薬


●バルビツール酸系

フェノバルビタール(PB)(商品名:フェノバール、ワコビタール、ルピアール、ノーベルバール)強直間代発作が他剤で止まらない場合に追加すると奏功することがある。

ノーベルバールの点滴、またはフェノバール筋肉注射などがよく用いられる。

半減期が非常に長く1日1回投与で十分である。

副作用の小脳失調は遅れて出現するため注意が必要である。

プリミドン(PRM)(商品名:マイソリン、プリムロン)局在関連てんかんにおける二次性強直間代発作に有効とされている。

フェノバルビタールが無効でもプリミドンが有効な場合がある。メタルビタール(商品名:ゲモニール)


●ヒダントイン系

エトトイン(商品名:アクセノン)

フェニトイン(PHT)(商品名:アレビアチン、ヒダントール)カルバマゼピンが無効な局在関連てんかん、二次性全般化傾向の強い局在関連てんかんに用いる。

症候性・潜在性全般てんかんや大発作重積でジアゼパム単独で効果不十分な時も用いられる。

アレビアチンは数少ない、点滴可能な抗てんかん薬という点で重宝する。

5〜7mg/Kgが標準の一日投与量であるが、急速飽和する場合は15mg/Kgを生理食塩水に溶かして60分程度で点滴する。

500mgで急速飽和する場合が多い。血管外に漏れると強い痛みを起こすこと、点滴では他の製剤と混和すると結晶を作りやすいことなどに注意が必要である。

治療域は10〜20μg/mlと非常に狭い。単剤投与では30μg/mlでようやく発作が防止できることもある。

しかしこの濃度で長期投与を行うと感覚鈍麻など末梢神経障害が出現することがある。

血中濃度はある濃度を超えると指数級数的に上昇し中毒域に達する。

フェニトイン中毒としては眼振、複視、歩行失調など小脳障害が有名である。

その他、不随意運動、知能障害、記銘力障害などが出現することもある。

低アルブミン血症患者ではアルブミン結合率が低いため遊離型増加し作用が増強される。

フェノバルビタールの合剤としてヒダントールが知られている。


●サクシミド系エトスクシミド(ESM)

(商品名:エピレオプチマル、ザロンチン)欠神発作には有効であるが、大発作を悪化させることがある。

成人では15〜30mg/Kg、小児では20〜40mg/Kgが1日量となる。



●ベンズイソキサール系

ゾニサミド(ZNS)(商品名:エクセグラン)局在関連てんかんの場合は第一選択薬として用いることができる。

また症候性・潜在性局在関連てんかんで補助剤として、ミオクローヌスてんかんでも用いることもある。

開始量は成人で100〜200mg、維持量は200〜400mgである。

パーキンソン病治療薬として用いられることもある。

食思不振、体重減少の副作用が有名である。



●ベンゾジアゼピン系

ベンゾジアゼピン系抗てんかん薬は発作型に関わらず有効なことがある。

但しミオクローヌス発作など一部を除いて耐性の形成ができやすい。

また重症筋無力症、急性狭隅角緑内障には禁忌である。

長期使用により耐性と依存性が形成される。

クロナゼパム(CZP)(商品名:リボトリール、ランドセン)ミオクローヌス発作に有効である。

1〜3mgを分2で投与する場合が多い。ジアゼパム(DZP、DAP)(商品名:セルシン、ホリゾン、ダイアップ坐剤)重積状態での第一選択薬であり、救急医療の現場でよく用いられる。

5mgずつ20mgまで使用することが多い。


●ニトラゼパム(NZP)

(商品名:ネルボン、ベンザリン)ミダゾラム(商品名:ドルミカム)(日本では健康保険での適応症はなく、小児科学会が適応要望を出している)

呼吸抑制が出にくいため重積状態で使いやすい。

10mgを生理食塩水20mlで希釈して緩徐に静脈注射といった方法がとられる。

クロバザム(CLB)(商品名:マイスタン)クロナゼパム、ジアゼパムなど従来のベンゾジアゼピン系抗てんかん薬が1,4-ベンゾジアゼピン(1,4位にN原子をもつ)であるのに対してクロバザムは1,5-ベンゾジアゼピンである。

単剤投与では効果は限定的であるがカルバマゼピンで抑制ができなかった複雑部分発作で追加薬として用いられる。

フェニトイン、ゾニサミドにも追加することがある。

バルプロ酸が無効であった特発性全般てんかんの欠神発作に有効な場合もある。

5mg/dayから開始し30mg/dayまで増量できる。



●分子脂肪酸系

バルプロ酸ナトリウム(VPA)(商品名:デパケン、バレリン、セレニカRなど)特発性全般性てんかんの第一選択薬である。

局在関連てんかんでは二次性全般化による強直間代発作に対して有効なこともある。

単剤投与では20mg/Kg/day前後で有効血中濃度に達する場合が多い。

治療開始に伴って嘔気が出現することがある。

特に急激に増量する場合は頻発する。

本態性振戦が出現し、副作用対策でβブロッカーが投与されることもある。

高アンモニア血症、血小板減少症をきたすこともある。



●イミノスチルベン系

カルバマゼピン(CBZ)(商品名:テグレトール、テレスミン)

局在関連てんかんの第一選択薬である。

特に精神症状を併発する場合に向精神作用があるため好んで用いられる。

代謝産物であるカルバマゼピンエポキシドにも抗てんかん作用がある。

バルプロ酸と併用するとエポキシドの作用によって血中濃度が正常でも中毒症状が出現することがあるため注意が必要である。

単剤投与では8〜12mg/Kgで、多剤投与では14〜20mg/Kgで有効血中濃度に達することが多い。

投薬開始時は一過性の血中濃度高値を示し、副作用が出現しやすい。

逆に当初は有効血中濃度であっても、同じ投与量では徐々に有効血中濃度が低下している。

そのため、100mg程度の投与から開始し、1週間毎に増量していくといった使い方もある。

投与後1〜2時間で複視、めまいといった小脳症状、1週間ほどで発疹が出現することがある。

発疹は1割程度の出現率であるが重篤なものは更にその1割であり(つまり1%、100人に1人)、内服継続で軽快することも多い。

SLE様の皮疹は6〜12カ月で出現することがあり、可逆的であるが抗核抗体は陰性化しない。

その他、低ナトリウム血症や水中毒を起こすことがある。

神経痛の治療で用いた場合に不整脈の出現など重篤な副作用報告がある。

神経痛に対してはプレガバリン(商品名:リリカ)と並んでよく用いられる。


posted by ホーライ at 21:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 中枢神経に効く薬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする