●カルシウム拮抗薬
詳細は「カルシウム拮抗剤」を参照
カルシウム拮抗薬(英: Calcium Channel Blocker, CCB)は、血管平滑筋細胞の細胞膜上に存在する電位依存性カルシウム(Ca)イオンチャネルを阻害する薬物であり、その化学構造からジヒドロピリジン系と非ジヒドロピリジン系に細分類される。
筋肉の収縮にはイオンチャネルを介した細胞内へのCa2+の取り込みが大きな役割を担っており、Ca2+の取り込みが低下すると平滑筋の収縮が減弱化し、血圧の低下につながる。
2008年現在、臨床での使用目的に発売されているカルシウム拮抗薬は全てL型カルシウムチャネルを阻害するものであるが、カルシウム拮抗薬の中でもシルニジピンのみ交感神経細胞膜に存在するN型カルシウムチャネルも阻害する作用がある。
下記に示した以外に非ジヒドロピリジン系の薬剤としてベラパミルが知られているが、日本では高血圧に対する適応は認可されておらず、不整脈や虚血性心疾患に対して用いられている。
血管への作用としては静脈より動脈の平滑筋に作用が強く出る。
特に細動脈レベルで効果が発現していると考えられている。
腎臓では輸入細動脈の拡張を行うため、糸球体内圧を上昇させる可能性があり、腎硬化症の進展予防としてはふさわしくないと考えられている。
心臓では洞房結節の興奮頻度の減少や房室結節の伝導抑制が効果があることが知られている。
効果発現が比較的早いため、その他の薬物を積極的に用いる理由がない場合に第一選択として用いられることが多い。
カルシウム拮抗薬は薬物代謝酵素であるCYP3A4を介した代謝を受けることが知られており、同酵素を阻害する薬物の併用により血中濃度の上昇が生じる可能性がある。
グレープフルーツジュース中に含まれる成分も小腸粘膜のCYP3A4を阻害することが知られており、CCBを服用中の患者に対してはグレープフルーツジュースの摂取を避けるように指導する。
カルシウム拮抗薬で降圧薬として用いられるのはジヒドロピリジン系である。
冠痙縮(異型狭心症)が多い日本では第一選択となる場合が多い。
カルシウム拮抗薬は降圧効果が高く、利尿薬、βブロッカーよりも脳卒中の発症のリスクが低くなることが知られている。
特にアムロジピンは最も半減期が長く、長時間作用型であり、血管拡張に伴う反射性の交感神経刺激作用が少ないため頻用されている。
しかしアムロジピンには腎機能悪化抑制効果、蛋白尿抑制効果は少ないとされている。
蛋白尿抑制効果はシルニジピン(アテレック)、エホニジピン(ランデル)、アゼルニジピン(カルブロック)で報告されている。
今日ではエビデンス、医療経済の面から利尿薬も再評価されているが、高尿酸血症の改善作用を持つカルシウム拮抗薬はほとんどない。
例外はシルニジピンであり、尿酸低下作用をもち、利尿薬と併用しやすい(ARBではロサルタンのみが尿酸低下作用をもち、利尿薬との合剤が発売されている)。
●ジヒドロピリジン系
アムロジピン。
ニフェジピン(アダラートなど)やニカルジピン(ペルジピンなど)やアムロジピン(アムロジンやノルバスク)が含まれる分類である。
ニフェジピンはL型カルシウムチャネルのN部位に結合する。血管拡張作用、降圧作用が強く、心筋への作用がほとんどない。
高血圧や冠動脈痙縮症、狭心症でよく用いられる。陰性変力作用や催不整脈作用は殆どないと考えられている。
ニフェジピンは作用発現が早すぎて、心拍数の上昇が認められることがあったが、アダラートLなどは徐放剤とすることでその問題点を克服している。
アダラートカプセルは徐放剤ではないため高血圧緊急症における迅速な降圧の際に以前は用いられたが、過剰な降圧を来したり、かえって虚血性心疾患を誘発したりする可能性があり、現在は勧められない。
ニカルジピンは安定した点滴静注が可能であるため、病棟では好まれる。
ペルジピンの1アンプルは10mg/10mlである。維持量が2〜10γであるため、体重が50Kgならば1γは原液で3ml/hrに相当する。
原液2ml/hrから開始しスケーリング対応で2〜20ml/hrの範囲で維持することが多い。
副作用に頻脈性不整脈があるため心不全を合併している場合は0.5γである1.5ml/hrという低用量からスタートするのが無難である。
アムロジピン(Amlodipine アムロジン、ノルバスクなど)
フェロジピン(Felodipine)
ニカルジピン(Nicardipine ペルジピンなど)
ニフェジピン(Nifedipine アダラートなど)
ニモジピン(Nimodipine)
ニトレンジピン(Nitrendipine)
ニルバジピン(Nilvadipine)
アラニジピン(Aranidipine)
アゼルニジピン(Azelnidipine カルブロックなど)
マニジピン(Manidipine カルスロットなど)
バルニジピン(Barnidipine)
エホニジピン(Efonidipine ランデルなど)
シルニジピン(Cilnidipine アテレックなど)
ベニジピン(Benidipine コニールなど)
非ジヒドロピリジン系
ベンゾジアゼピン系とフェニルアルキルアミン系が含まれるがフェニルアルキルアミン系は降圧薬として使用することは殆どない。
ベンゾチアゼピン系にはジルチアゼム(ヘルベッサーなど)が含まれる。
ジルチアゼムはL型カルシウムチャネルのD部位に結合する。
ベラパミルが結合するV部位とは重なっているため併用すると効果が落ちる原因となる。
心臓にも血管にも作用する。
マイルドな降圧、徐脈作用を期待するときに用いることがある。
房室伝道の抑制、徐脈の作用としてはベラパミルに劣るため、PSVTの停止などではあまり用いない。
静注を行うのは高血圧性緊急症と不安定狭心症の時が多い。
ヘルベッサー1アンプルには50mgが含まれているために3Aを5%ブドウ糖液で溶解させると1.5mg/mlとなる。
体重が50Kgの場合は1γが3mg/hrとなるため2ml/hrで投与すると1γ投与となる。
高血圧性緊急症では5〜15γで不安定狭心症では1〜5γで維持される。
ベンゾチアゼピン系とベンゾジアゼピン系は名称が似ているがまったく異なることに注意。
ジルチアゼム(Diltiazem)
(続く)