2014年07月04日

ステロイド系抗炎症薬(3)

●ステロイド系抗炎症薬(3)


●ステロイド系抗炎症薬の副作用

副作用として過剰な免疫抑制作用が発現することによる感染症、クッシング症候群、ネガティブフィードバックとして副腎皮質機能不全、糖新生の促進による糖尿病、骨量の減少に伴う骨粗鬆症、消化管粘膜におけるプロスタグランジン産生抑制による消化性潰瘍などが知られている。

しかし、気管支喘息においてステロイドを吸入で用いた場合にはステロイド剤は呼吸器系の組織に局所的に作用し、血中移行する量が少ないため副作用が少ない。


●減量

ステロイド系抗炎症薬の減量に関して述べる。

ステロイド大量療法を長期間続けることは副作用のため難しく、原疾患のコントロールができ次第、原疾患が再燃しない程度、そして離脱症候群が起らないように漸減していくのが一般的である。

早い離脱はリバウンドを引き起こすため慎重に行う必要がある。

減量は各疾患のパラメータのモニタリングを行いながらする。

減量の目標はステロイドの投与の中止よりもPSL7.5mg/day以下の少量投与による維持であることが多く、疾患の活動性によって減量速度はかなり異なるため注意が必要である。

また、原疾患のコントロールにステロイドが不可欠ではない場合は、離脱症候群のみを防ぐように減量を行うためこの限りではない。

減量中の再燃は2倍量に戻って再スタートとする。

ステロイド離脱の時は、プレドニンのような半減期が短い製剤を用いて漸減する方が良い。

特に問題がない場合はPSL30mg/dayまでならば5mg/1week、PSL15〜30mg/dayまでならば5mg/2week、PSL10〜15mg/dayまでならば1mg/2week、10mg以下ならば1mg/4weekといった処方も知られている。


●血管炎のステロイド減量

血管炎に関しては欧州血管炎研究グループ(EUVAS)がPEXIVAS試験という臨床治験を2010年より行なっている。

対象はウェゲナー肉芽腫症と顕微鏡的多発血管炎であり、ステロイドパルス療法とシクロホスファミドが併用される。

この試験によって血管炎におけるPSLの標準的な投与法が決定される可能性がある。



●ステロイド系抗炎症薬の離脱症状

離脱症候群といわれる副腎不全はPSL20mg/day以下の投与で急速に減量した際に起りやすいとされている。

突然の内服中止、手術時、少量服薬時の減量には特に注意が必要である。

生理的糖質コルチコイドの分泌量はPSL換算で2.5〜5mg程度といわれている。

この量以上の投与が続くと副腎の機能の低下が徐々にあらわれる。

目安としてはPSL換算で7.5mg以上、3週間以上の投与を受けた場合は内因性副腎機能の抑制が起こっていると考える。

そしてPSL10mg/day以上を半年間投与を受けると殆どの場合、ストレス時の糖質コルチコイドの追加分泌は不可能となる。

そのため、副腎抑制となっている場合の感染症などのストレスを引き金に副腎不全は生じることもある。

PSL5mg/day前後に減量するときに副腎不全を疑う症状が出現することが多く、その場合、PSLを0.5〜1.0mg/2weekといったゆっくりとしたペースで減量し、さらに生理的な分泌に合わせ、朝の内服量を多くするといった微調整が必要となる。

副腎不全の発見は減量の服薬歴やステロイド投与中にもかかわらず好酸球が高いなどが参考になる。



●急性副腎不全

突然の内服中止などで起る場合が多い。

意識障害や痙攣とともに血圧の低下が起り、ショック症状を示す。

輸液や昇圧剤の反応に乏しくステロイドを投与しないと改善しない。

Na貯留作用(鉱質コルチコイド作用)もあるハイドロコルチゾンを100mg〜200mgを6時間毎に投与するのが一般的である。


●慢性副腎不全

だるさ、全身倦怠感などが主症状となり、特異的な所見にかける。

食欲不振、嘔気、便秘など消化器症状、やるきのなさ、うつ状態といった精神症状を訴える場合もある。

感染症などの重大なストレスがなければステロイド増量で対処できる。


●ステロイドカバー

手術時に行うことがある。

ステロイドカバーは手術成績にも影響がないとされている。

小手術ならば術前にハイドロコルチゾン100mgの静注する。

大手術ならばハイドロコルチゾン100mgを4から6時間毎に静注し経口摂取可能となるまで静注を続ける。

数日で減量し、元の服薬量に戻すのが一般的である。

高血圧が認められる場合はNa貯留作用の少ないデキサメサゾン静注とし、繰り返す場合は8時間毎にする。

これらは手術の侵襲に合わせて増減される。


●諸注意

外部からのステロイドホルモン投与(特に内服ステロイド薬)で副腎皮質のステロイドホルモン分泌能が抑制され、副腎皮質が萎縮・機能低下する。

これにより、特に急激な投与中止後に体内のステロイドホルモン不足による諸症状が見られることがある。

これをステロイド離脱症候群とよばれ、強い倦怠感、吐き気、頭痛、血圧低下などの症状が起こる。

このためステロイドの離脱に際しては、急激な中止・減量を避け、症状を考慮しながら少量ずつ段階的に減量するなどの細やかな治療計画が必要である。

自己判断で急激に服用を中止することは危険を伴うので、医師の指示のもとに行うことが大切である。

上記の様な多彩かつ重篤な副作用があるが、効果も高いので日本の医療現場では広く処方・販売される。

しかし市場には作用の強弱や体内動態の異なるステロイド剤は多数開発されているので、症状や副作用の程度により適切な薬剤を選択することも可能である。

副作用を回避する為にも、主治医は薬の性質や予想される副作用を前もって患者に伝え、患者は投薬により生じた症状は適切に主治医に伝え治療に反映させるといった対応(インフォームド・コンセント)が重要な薬剤である。


以上


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2014年07月02日

ステロイド系抗炎症薬(2)

●ステロイド系抗炎症薬(2)


●ステロイド系抗炎症薬の臨床適応

臨床適応は極めて多岐にわたり、全ての医療用医薬品において最も健康保険の適応となる疾患が多い医薬品である。

さらに適応外ではあっても、積極的に臨床応用されている疾患も多く、いわば「万能薬」的な存在ともいえる。

その適応症は湿疹・皮膚炎、虫刺されのようなありふれたものから膠原病・悪性腫瘍などの難治性疾患にまで及ぶ。


●ステロイド系抗炎症薬の治療法の種類

●長期間の内服または注射による投与方法

対象となる疾患に対し十分な量から始める。

1日1回よりは1日3回分割の方が有効性は高くなるため、投与法は通常1日2 - 3回食後投与する。

すなわち内服は分割の方が効果的。

40mgを朝1回より、20mgを朝夕2回の方が効く。

本来の生体リズムは朝方ステロイド分泌が多いため少量投与の場合は朝1回とする。

また、夕・就寝前の服薬は、不眠を招くため、できるだけ避ける。


●その他の留意点

プレドニソロン(PSL)を5mg/day相当のコルチゾールは副腎から分泌されている。

PSLを長期にわたり5mg/day以上服用する場合は、骨粗鬆症予防のためビスフォスフォネート系薬剤を併用する。

PSLが20mg/day以下なら日和見感染リスクは少ない。

20-40mg/dayでは7倍に、40mg/day以上では35倍に日和見感染リスク増加。

点滴静注するときには10〜50%増しで内服と同量になるといわれている。

これは抱合型のまま腎から排出されるため生体内利用率が低下するためと考えられている。

PSLは胎盤を通らない。ベタメタゾンは胎盤を通過する。

通常妊婦にはPSL。胎児の治療はベタメタゾン。

授乳は服用から4時間あければ問題なし。

特に30mgまでならいつでも授乳可。



●1回のみの投与

急激な炎症を抑えたいときに行われる。効かせたい作用時間に応じて併用して使用されることもある。

1 - 3回の投与ならば副作用は考えなくてもよい。



●ステロイドパルス療法

ステロイドを静脈より短期間(通常は3日くらい)に大量に投与する治療法。

一般的にはメチルプレドニゾロン(mPSL1,000mg/day)を3日間投与し後療法としてPSLの大量療法を行い徐々に後療法を減量していく。

減量は原疾患の活動性が十分に抑え込まれるまで行わず、減量する場合も原疾患の再燃を起こさず、かつ離脱症状をおこなさない速度で行っていく。

ステロイド剤を大量に内服する治療とは完全に違う。

一般にはソルメドロールという短期間作用型の薬剤が使用される。

大量に投与するが副作用は出にくい。

輸液製剤200ml程度に混注し1〜2時間以上で投与することが多い。

これは不整脈を防止するためである。

ステロイド系抗炎症剤は免疫抑制剤に比較して効果発現が早いことが知られている。

そのため、初期治療や臓器障害がある場合はまずはパルス療法を行うのが一般的である。

ループス腎炎(W型、chronisity+)や重症CNSループス、ANCA関連疾患、筋炎関連間質性肺炎などはPSL単剤ではコントロールが難しく、後療法の段階から免疫抑制剤とPSL併用療法を行うが、免疫抑制剤はステロイド減量のために用いることも多い。

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2014年06月26日

ステロイド系抗炎症薬(1)

●ステロイド系抗炎症薬(1)


ステロイド系抗炎症薬(ステロイドけいこうえんしょうやく)は医薬品である。

医療現場ではステロイドと略されることが多い。

主な成分として糖質コルチコイドあるいはその誘導体が含まれており、抗炎症作用や免疫抑制作用などを期待して用いられる。



●ステロイド剤の剤型

ステロイド剤は多数の剤型が存在する。

経口剤

錠剤

シロップ-子供に主に使用

粉末-微量の調整に使用しやすい

注射剤種類によって静脈注射・筋肉注射がある。

ソルメドロールはステロイドパルス治療に静注使用される。

一方、リンデロン・デカドロンは筋肉注射で使用されることが多い。

外用剤皮膚科・眼科・耳鼻科用の各種の外用剤がある。

また、喘息や気管支炎に使用する噴霧剤・吸入剤、口内炎に使用する付着型の剤型(商品名:アフタッチ)など、多種多様な剤型がある。



●ステロイド剤の全身投与の実際

●代表的な医薬品

プレドニゾロンやベクロメタゾン、ベタメタゾン、フルチカゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン等がある。

それぞれ作用持続時間及び強度が異なるが、プレドニゾロンは中間的な持続時間・強度を示し、臨床においても用いられることが多い。

鉱質コルチコイド作用は副作用の浮腫に関与しておりこれが強いほど浮腫が出やすい。

デキサメタゾンは鉱質コルチコイド作用が極めて少ないため浮腫は起りにくいとされている。

半減期が長いものは副腎抑制が強いと考えられている。

その点ではデキサメタゾンは副作用が強いと考えられる。

また半減期は薬効に関係することがある。

ステロイド代謝が亢進した場合、半減期の短いものでは効果が不十分であるが、同力価の半減期の長いものに変更すると十分な抗炎症作用が得られることもある。



●ステロイド剤の作用機序

ステロイド系抗炎症薬の作用機序には、遺伝子を介するもの(genomic effect)と遺伝子を介さないもの (nongenomic effect) がある。

ステロイド骨格を有するステロイド製剤は親水性の性質と親油性の性質を有する(両親媒性)ため細胞膜を透過しやすく、血中から末端組織に容易に移行する。


●遺伝子を介する作用

ステロイド系抗炎症薬は、天然のグルココルチコイド(副腎皮質ホルモンの一種)あるいはその合成アナログであることから、細胞内に入った後、細胞質に存在するステロイド受容体(細胞質内ステロイド受容体cGCR)であるグルココルチコイド受容体 (GRα; Glucocorticoid Receptor α) と結合する。

GRαは本来副腎皮質から分泌される内因性のグルココルチコイド(ヒドロコルチゾン)に対する受容体であり、通常 heat shock protein 90 をはじめとしたシャペロンと結合して薬物(生体内ではグルココルチコイド)と結合しやすい構造に保持されている。

薬物の結合により hsp90 が受容体から解離し、GRαは2量体を形成し、核内に移行する。

GRαをはじめとしたステロイド受容体スーパーファミリーに属する分子はリガンドに対する受容体として働く一方、それ自身がDNAと相互作用する転写因子としての性質を持つ。

DNAにはGRαと結合するための配列 (glucocorticoid responsive element; GRE, GGTACAnnnTGTTCT) が存在している。



DNAはヒストンと呼ばれるタンパク質に巻きついていることが知られているが、何らかの刺激により遺伝子が活性化するとヒストンがアセチル化を受け、DNAの巻きつき方が緩むことにより転写因子と相互作用しやすい状態になる。

つまり遺伝子の発現調節はヒストンのアセチル化状態によりコントロールされている。

GRαがDNAに結合するとヒストンアセチル基転移酵素 (Histone Acetyl Tranceferase; HAT) 活性を持った蛋白質が結合してきてヒストンをアセチル化することによりクロマチン構造の一部を解き、抗炎症蛋白質遺伝子の転写を亢進する。



一方、グルココルチコイドが結合したGRαは単量体でも作用しうる。

薬物と結合したGRαは核内に移行するとヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC、Histone Deacetylase) を引き連れて活性化した炎症性蛋白質のmRNAをコードする遺伝子の抑制を行う。

具体的には炎症性蛋白質遺伝子の転写に関与する転写因子NF-κBにGRαとHDACの複合体が結合した後2つの経路により転写を抑制する。

1つはGRαが直接NF-κBの活性を抑制する経路、もう1つはGRαがつれてきたHDACによりヒストンの脱アセチル化が生じ、転写抑制を起こす経路である。



グルココルチコイドにより産生が亢進される抗炎症蛋白質にはlipocortin、interleukin-1 receptor antagonist、β2受容体、IκBなどがある。

グルココルチコイドにより産生が抑制される蛋白質には種々の炎症性サイトカインやケモカイン、細胞接着分子などがある。

グルココルチコイドは上記に述べた抗炎症作用以外にも肝臓での糖新生にも関与している他、ミネラロコルチコイド受容体に対してもリガンドとして結合して作用を発現するため、これらの経路は副作用の発現に寄与している。




●遺伝子を介さない作用

不明な点も多いが、大量療法、ステロイドパルス療法で関与していると考えられている。

細胞膜上ステロイド受容体(mGCR)を介した遺伝子を介さない作用の他、非特異的な作用もあると考えられており、いずれも抗炎症作用、免疫調整作用などに関与すると考えられている。

大量療法やステロイドパルス療法では遺伝子を介した作用では説明ができない速さで効果が発現すること、GRが飽和する量以上投与しても用量依存性に効果が認められることから存在すると考えられている。

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2014年06月24日

気管支喘息の治療(4)

●気管支喘息の治療(4)


●気管支喘息の亜型


●アスピリン喘息、aspirin-exacerbated respiratory diease(AERD)

喘息患者の何割かが獲得するアスピリンなどの非ステロイド系抗炎症薬、特にCOX1阻害薬に対する過敏体質であり、アレルギーによるものではない。

非ステロイド系抗炎症薬の服用から数分〜1時間後に鼻汁過多、鼻閉、喘息発作が起こる。

このように症状が、上気道、下気道に及ぶことから、近年、aspirin-exacerbated respiratory diease(AERD)と呼称されるようになった。

成人女性に好発し、小児では稀である。

アトピー型、非アトピー型喘息患者のいずれにおいても認められ、中等症以上の症例が多く、急性増悪時には、しばしば、重度の呼吸器症状を来す。

病歴から診断可能な例もあるが、確定診断のためにアスピリン負荷試験を要することが少なくない。

成人喘息患者の約21%は誘発試験でアスピリン喘息を起こしたとの報告がある。



COX1阻害によるロイコトリエン代謝経路に傾くためにおこる代謝異常が病態の基盤にあるため、COX2阻害薬投与においては発生率が低下する。

しかし、COX2阻害薬も他のNSAIDsと同様、添付文書上、喘息患者には禁忌とされている。

病態の特徴の一つにロイコトリエンの過剰産生があり、そのためロイコトリエン拮抗薬が用いられることが多い。

好酸球性副鼻腔炎の合併率が極めて高く、鼻茸や嗅覚低下を合併することが多い。

他臓器の好酸球性疾患の合併もみられる。


アスピリン喘息の急性増悪ではコハク酸エステル型ステロイド(ソルコーテフ、ソル・メドロール、水溶性プレドニンなど)の急速静注は喘息の増悪を誘発することがある。

1時間以上かけて点滴を行えば比較的安全とされている。

リン酸エステル型ステロイド薬(デカドロン、リンデロン、ハイドロコートンなど)を1時間以上かけて点滴投与する。




●運動誘発性喘息

健常者では運動によって気道の径が変化することはないが、喘息患者の場合は運動によって気管収縮が誘発される。

特に、運動によって臨床的な症状が出現する場合を運動誘発性喘息という。

運動が刺激因子となり、マスト細胞からのロイコトリエン産生が増加する病態が基盤にあるため、ロイコトリエン拮抗薬が効果的である。



●吸入アレルゲンによる喘息

吸入アレルゲンに対して遅発性喘息反応が起こることがある。

曝露後、数時間から数日間気道過敏性が亢進するのだが、詳細な機序は不明である。

過敏性肺炎とは異なり1型アレルギーである。




●咳喘息

咳喘息(cough variant asthma; CVA)の症状は、慢性(8週間以上)に発作性の咳が持続することが特徴的である。

β-2 agonist吸入により臨床症状が改善するため、治療的診断として有用である。

典型的な喘息と異なり、通常、胸部聴診にて狭窄音は聴取されず、閉塞性換気障害や気道可逆性等、異常所見が認められないため、確定診断に難渋し、ドクターショッピングを引き起こすことも多い。


喘息と同様の病態(慢性の気道炎症、気道過敏性の亢進等)が基盤にあることが判明しており、これらの評価が可能な専門医療機関等を受診することが望まれる。

通常、咳喘息における気道炎症や気道過敏性亢進の程度は、喘息に比し軽微であることから、喘息の前段階として認識されることもあり、軽症喘息におけるコントローラーに準じた定期的薬物療法が導入されることが多いが、重症の咳喘息症例も存在し、重症喘息と同等の治療を要することもある。

咳喘息を無治療で放置すると、約3割が典型的な喘息に移行するとされる。






●気管支喘息と鑑別を要する疾患


●慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease; COPD)

非喫煙者や、特異的遺伝子変異をもつ若年者に発症することもあるが、多くは、高齢者に発症し、喫煙との関連が極めて深い。

労作時の呼吸困難、息切れ、β2-agonist吸入後の1秒率が70%未満であること、胸部画像診断における気腫性変化等が重要であるが、軽症例では、所見に乏しいこともある。

喘息、COPDにおいて、典型例では、病態を形成する炎症性細胞、サイトカイン、ケモカイン等のprofileに対照的な特徴が認められるが、非典型例では両者の差異が不明瞭となり、しばしば、鑑別困難となる。

両者の合併例も少なくなく、近年、Overlap症候群という疾患概念が提唱されている。



喘息と同様に、急性増悪(喘鳴、呼吸困難等の増強)を来しうる疾患であり、気道感染や心不全が誘因となる。

従来、喘息よりも気管支拡張剤に対する反応が悪く、気道可逆性の有無が両者の鑑別において有用とされてきたが、近年では、典型的な喘息と同様の気道可逆性を示すCOPD症例が報告されている。


●アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(Allergic BronchoPulmonary Aspergillosis; ABPA)

気管支喘息患者の1%程度にみられると報告される。真菌の一つであるアスペルギルスに対するアレルギーによりおこり、喀痰中の粘液栓、中枢性気管支拡張、X線写真における肺浸潤影などを特徴とする。


●アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグストラウス症候群)

気管支喘息患者の5000人に1人程度に発症すると報告される。

病気の本体は全身の小動脈〜細動脈の炎症(血管炎)であり、発熱、手足のしびれ(末梢神経炎)、筋肉痛、関節痛など多彩な症状を呈する。

一過性の肺浸潤影が認められることもある。ロイコトリエン拮抗薬との関連が指摘されているが、否定的な報告もある。


●ブロンコレア(気管支漏)

卵の白身のような外観を呈した喀痰を1日に100ml以上、難治時に喀出する病態。

患者はかなりの苦痛を伴うがほとんどの場合心理的なものと判断され、診断も治療も受けられず難治化していく。

専門医による適切な診断と専門医の下での治療が必要。喘息にブロンコレアが合併すると難治性喘息に移行する事が多い。


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2014年06月22日

気管支喘息の治療(3)

●気管支喘息の治療(3)

●抗コリン薬

吸入抗コリン薬はβ2刺激薬に比べ、気管支拡張効果が弱く、効果発現が遅い。

また、呼吸器粘膜から吸収されることにより口渇感、前立腺肥大、頻脈、緑内障といった副作用が出現する恐れがある。

アトロピンの4級アンモニウム塩である臭化イプラトロピウム(アトロベント等)ではこのような副作用は軽減されている。

日本ではイプラトロピウムはMDIとしてのみ供給されており、次のような状況では有用性はある。

βブロッカーにより気管支収縮が起こった場合、吸入β刺激薬に反応しない急性増悪時、モノアミンオキシターゼ阻害薬を服用している場合、重度の不整脈や不安定狭心症を合併しているため、交感神経系の刺激を回避したい場合などである。

作用機序は気道が副交感神経にてトーヌスが維持されているため、トーヌスの維持を解除することで気管支拡張を得る。

イプラトロピウム(アトロベントなど)、オキシトロピウム(テルシガン)は気道粘液の粘稠度を増加させないため非常に使いやすいとされている。

作用持続時間は6〜9時間である。

COPDに対する定期治療薬として用いられるチオトロピウムは、近年、一部の喘息症例において、喘息コントローラーとしても有効であることが報告されている。



●抗IgE抗体

オマリズマブ(ゾレア)は難治性喘息(添付文書上は、最重症のアトピー型喘息)に対して行われる分子標的治療薬で、遅発性アレルギーが出現するため2時間の経過観察が必要となる。

血清総IgE値と体重により、投与量、投与間隔が決定される。



●抗TNF抗体

近年注目されている分子標的薬である。



●去痰剤

ムコダイン,ムコサールなどがよく処方される。

排痰に伴い、気道の抵抗が少なくなる。



●14員環マクロライド

エリスロマイシンなどの少量長期投与を行う医師もいる。

慢性気管支炎、びまん性汎細気管支炎などの合併例には有効である。



●漢方薬

麻杏甘石湯、五虎湯、神秘湯、小青竜湯、麦門冬湯などを、証に応じて処方。

気管拡張剤エフェドリンは、麻杏甘石湯などに配合される生薬の麻黄から1885年(明治18年)長井長義によって単離抽出された。



●減感作療法

中程度あるいは他の方法で喘息が制御できない場合はアレルゲンを繰り返し注射するアレルゲン免疫療法(減感作療法)を行う場合もある。

90%以上がダニアレルゲンが原因である小児喘息の場合はアレルゲン免疫療法は有効性が高いという意見もある。

WHOの見解書では、アレルゲン免疫療法(減感作療法)が喘息の自然経過を変える唯一の根本的治療法として記述されている。



●その他の治療

古くから水泳によって改善するといったことも言われているが、呼吸筋を鍛えたことにより病状が良くなったと感じるため(ピークフロー値の上昇)で、炎症が治まったわけではない。

場合によってはプールの塩素によって更に悪化することもあり注意が必要である。

水泳による疲労、塩素で喘息を発病した患者もいる。


直接の治療行為には該当しないが、ピークフローメーターにより日頃のピークフロー値の記録をしておくことで自覚症状のない軽い発作を発見できたり、発作がおきやすい時期、時間帯等を把握しやすくなるため、喘息の管理に有効である。

ピークフローは症状の変化に先行し変化することが知られている。

また重篤な患者ほど自覚症状が出現しにくいためピークフローによって客観的な評価が必要である。

ピークフローは3回測定を行い、最高値を記録する。

慢性呼吸不全の患者には在宅酸素療法を行う。


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2014年06月19日

気管支喘息の治療(2)

●気管支喘息の治療(2)


●抗炎症薬(2)

吸入器には定量噴露吸入器(pMDI)と自己の吸気にドライパウダー吸入器(DPI)が存在する。

フルタイドディスカス・ロタディスク、パルミコート・タービュヘイラー、シムビコート・タービュヘイラー、タウナス(製造中止)といったドライパウダー製剤、キュバール(ベクロメタゾン)、オルベスコ(シクレソニド)、フルタイド・エアーといったガス噴霧製剤(エアロゾル)がある。

またドライパウダー製剤・ガス噴霧製剤などが上手に吸入できない小児などのために、デポ・メドロール(酢酸メチルプレドニゾロン)、パルミコートにはネブライザーで吸入できる吸入液がある。

ガイドラインに基づく治療をしている場合はLABAと併用を行う場合が多いため、セレベントとの合剤であるアドエアなどは携帯する薬品、吸入回数が減ることで利便性が高い。

吸入器には定量噴露吸入器(pMDI)と自己の吸気にドライパウダー吸入器(DPI)が存在する。

例えばフルタイドの場合はpMDIならばフルタイドエアー、DPIならばフルタイドディスカスである。




●ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)

代表的な経口喘息治療薬。軽症や吸入ステロイド薬の使用が困難である症例においては単独で使用されることが多い。

中等症〜重症では一般的には吸入ステロイド薬の併用薬として使用される。

リモデリング予防・改善効果、運動誘発性喘息、アスピリン喘息、鼻閉を伴うアレルギー性鼻炎や月経困難症及び子宮内膜症の合併では特に使用を推奨されている。

アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグストラウス症候群)発症のリスクの可能性が指摘されたが、否定的な報告もある。

代表的なLTRAには、ブランルカスト(商品名オノンなど)、モンテルカスト(商品名シングレアなど)がある。

効果発現は薬剤によってことなるが、プランルカストでは2週間、モンテルカストでは1日で自覚症状が改善するというデータがある。

アトピー性が多い小児では好まれる。

プランルカストは小児の場合は1歳以上に適応があり、カプセル(112.5mg)とドライシロップ(10%)の製剤が知られており7mg/Kg/dayで最大量は450mg/dayである。

朝夕に分服する。モンテルカストはチュアブル錠(5mg)が6歳以上15歳未満、細粒(4mg)が1歳以上6歳未満の適応があり、1日1回1錠を就寝前に投与される。

特に小児ではJPGL2008ですべてのステップで第一に推奨されている薬剤である。

ただしロイコトリエンが関与しない喘息もあり、約60%の患者に効果がみられる。




●ケミカルメディエーター遊離抑制薬

クロモグリク酸吸入液(DSCG、インタール等)は肥満細胞の脱顆粒を抑制する薬である。

直前に1回吸入するだけで運動や抗原吸入によって引き起こされる気管支収縮を軽減できる。

しかし、その効果は吸入ステロイドに劣り、また発作の治療に用いることもできない。

非アトピー性が多い成人の喘息では用いる機会はかなり少ないものの、アトピー性が多い小児喘息では比較的効果があり有害な副作用がないということもあり小児科では非常に好まれる薬物である。

クロモグリク酸吸入液は(20mg/2ml)で1回1Aで一日3回〜4回、電動式ネブライザーを用いて治療を行う。



●抗アレルギー薬

スプラタミド、ケタスなどといった化学伝達物質阻害剤、ケトチフェン、アゼラスチンといった抗ヒスタミン剤なども処方されることがある。

one airway one diseaseという考え方が提唱されており、喘息とアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎を同時に治療すると効果的と考えられている。



●●●気管支拡張薬●●●

●β2刺激薬

吸入薬は短時間作用型(SABA)は発作時にリリーバーとして用いられ、長時間作用型(LABA)はコントローラーとして用いられる。

長時間作用型気管支拡張薬は反復使用をすると気管支拡張作用は減少しないものの、喘息誘発刺激に先立って投与することで得られる、気管支収縮の予防効果は急速に損なわれる。

しかし短時間作用薬物の急速なリリーバー作用は阻害されないという非常に興味深い現象が知られている。

これらは気管支リモデリングからの説明が試みられている。

吸入ステロイドを併用することで、このような現象も予防することができるため、LABAはICSと併用をするべきと考えられている。

COPDの場合はSABAは抗コリン薬よりも即効性があるとされているが最大効果は劣る傾向にある。



●短時間作用型吸入薬(SABA)

サルブタモール(サルタノール・インヘラーやベネトリンなど)、プロカテロール(メプチン・エアーなど)、フェノテロール(ベロテック・エロゾルなど)など。

即効性はあるものの、効果はすぐに減弱するため、コントローラーとしては用いられない。

ホルモテロールは発作時にSABA同様の即効性があるが、下記の長時間型吸入薬である。


●長時間作用型吸入薬(LABA)

サルメテロール(セレベント・ディスカスなど)、サルメテロール・フルチカゾン(ステロイドとの合剤、アドエアーなど)、ホルモテロール・ブテソニド(シムビコート)などがある。

セレベントは一回25〜50μgを一日二回投与が一般的である。

アドエアーでは一回にサルメテロールが50μg含まれている。

かつてはβ刺激薬の心臓作用が気管支喘息患者の突然死の原因と考えられていたが、ICSの普及によってむしろ炎症コントロールの程度が突然死とかかわりあっていると考えられるようになった。

食品医薬品局(しょくひんいやくひんきょく、FDA; Food and Drug Administration)は、喘息長期管理(慢性期治療)における、LABAの単独使用を避けるよう警告している。

貼付剤、内服薬などの剤形もあり、年齢・症状にあわせてそれぞれ用いられる。

貼付剤としては小児科領域ではツロブテロール製剤のホクナリンテープがよく用いられる。

0.5〜3歳未満ならば0.5mg、3〜9歳未満ならば1mg、9歳以上ならば2mgで胸部や背部や上腕部に貼付する。

副作用は内服薬と同様で吸入薬よりは強い。

また、効果発現時間は極めて遅いため急性期の対応では全く役に立たないが、服薬が難しい小児の分野では使い勝手の良さから非常に好まれる。

内服薬ではアトック(ホルモテロール)やホクナリン錠、メプチン錠など多くの製剤がある。


●メチルキサンチン系薬物

テオフィリン(テオロング、テオドール他)製剤である。

テオフィリンは気管支拡張作用と抗炎症作用を併せ持つ。

かつては気管支喘息の中心となる薬物であった。

錠剤やカプセルの形態で徐放性製剤として経口投与を行い、急性増悪ではテオフィリン及びそのジエチルアミン塩であるアミノフィリンの静脈内投与を行うことができる。

β刺激薬がアデニル酸シクラーゼを活性化させcAMPを上昇させるのに対して、テオフィリンはホスホジエステラーゼを阻害することでcAMPを上昇させる、結果はどちらもPKA活性化による気管支の拡張である。

また、気管支喘息とCOPDに対してヒストン脱アセチル化酵素活性の増強作用による抗炎症作用や横隔膜の収縮力増強や呼吸中枢刺激作用も報告されている。

徐放性テオフィリン製剤は喘息症状の改善の他、肺機能の改善、就寝前の内服で夜間症状の改善、運動誘発性喘息の予防、低濃度での抗炎症作用が知られている。

しかし治療域は非常に狭く、代謝に個人差があるため投与量の設定も個人ごとに異なり5〜15μg/mlに血中モニタリングが必要である。

また多くの薬物との相互作用が知られている。副作用には中枢神経の賦活作用による痙攣、悪心、頻脈、振戦、不整脈などがある。

このような調節が難しいことから長時間作用型のβ刺激吸入薬の普及に伴い、あまり用いられない傾向にある。

テオフィリン関連痙攣と呼ばれる副作用が報告され、日本のガイドラインでは小児に対してはその位置づけが後退傾向にある。

小児では抗炎症効果を期待して低用量の10mg/Kg/dayから使用を開始し血中濃度を10μg/ml程度を目安にするのが一般的である。

血中濃度は迅速キットで測定可能であるため、内服量が不明な時もERで追加が可能である。

そのためアミノフィリンは発作治療薬としてしばしば用いられている。
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2014年06月15日

小児喘息 気管支喘息の治療

●小児喘息

小児喘息は成長とともに軽快する場合が殆どであ

まれに成人喘息に移行する場合がある。


小児喘息の既往があったとしても、成人喘息患者のような薬物の制限はない。小児期に喘鳴が認められる場合はウイルス感染、アレルギー、異物の可能性がある。

重要な鑑別疾患としてはRSウイルスによる細気管支炎があるが、細気管支炎では一日中喘鳴が聴取されるが、気管支喘息はヒューヒュー、あるいはゼイゼイとした喘鳴が夜間に多い。

小児喘息の診断には、他疾患の除外が必要である。

2歳から3歳のころ頻繁に喘鳴を繰り返す 幼児は小児喘息に移行するリスクが高いと考えられている。



major criteria1.

医師によって診断された両親いずれかの喘息の既往。

2.医師によって診断されたアトピー性皮膚炎



minor criteria1.

医師によって診断されたアレルギー性鼻炎。

2.上気道感染と関連しない喘鳴。

3.4%以上の好酸球の増加



major criteriaひとつまたはminor criteria2つで小児喘息の確率は76%である。

逆に満たさなければ5%の確率となる。

小児喘息のガイドラインとしてはJPGL2005が知られている。

春先や秋口などが発作の好発時期である。3歳から5歳の発症が多い。

β2刺激薬の吸入とステロイドの全身投与が基本となる。

アミノフィリンは嘔吐といった副作用をはじめ、血中濃度の調整が難しく、安全性、簡便性を考慮すると消極的になる。



吸入は吸入器(定量噴露吸入器とドライパウダー吸入器)とネブライザーによる吸入が知られている。

吸入薬の量は小児であろうが成人であろうが変化がないのが一般的である。

これは成長するほど上手に吸入できる傾向があるため、末梢気道に達する薬物量が増えるためである。

ネブライザー治療に影響を与える因子としては呼吸パターン、口呼吸か鼻呼吸か、気道狭窄病変の程度、人口気道の存在などがあげられている。



小児喘息の治療の目標とは軽いスポーツを含め、日常生活を普通に行うこと、昼夜を通じて症状がないこと、β2刺激薬の頓用の減少、学校の欠席の防止、肺機能障害の予防、PEFの安定化とされている。

小児分野では年齢により薬剤の選択も異なり専門性の高い分野であるがJPGLにてかつてよりは簡略化されている。

大まかに述べると2歳未満の乳児喘息、2〜5歳、6歳から15歳という区分で分けられている。

アトピー性が多いためDSCGを積極的に使うこと、吸入技術の問題で吸入ステロイドの適応が若干異なる。



ラーメンやうどんが食べられるようならば、原理的には吸入は可能であり、吸入をサポートするスペーサーも各種販売されている。

乳児喘息では中等度でも専門医の下で治療を行うこと、2〜5歳では軽症持続型の段階ではICSは考慮に過ぎない、6歳以上では軽症持続型以上ならばICSが原則となるといった差がある。

現在、日本で増加する小児喘息に関しても、安全かつ有効な標準化ダニアレルゲンを用いた減感作療法をすることで、小児喘息患者の肺機能の改善,成長,維持を助けて健康な成人を育てることが厚生医療行政の急務であると主張している医師もいる。



●気管支喘息の治療

気管支喘息治療薬は「長期管理薬」(コントローラー)と「発作治療薬」(リリーバー)に大別される。

発作が起きないように予防的に長期管理薬を使用し、急性発作が起きた時に発作治療薬で発作を止める。

発作治療薬を使う頻度が多いほど喘息の状態は悪いと考えられ、長期管理薬をいかに用いて発作治療薬の使用量を抑えるかということが治療の一つの目標となる。



長期管理薬では吸入ステロイド薬が最も重要な基本薬剤であり、これにより気管支喘息の本体である気道の炎症を抑えることが気管支喘息治療の根幹である。

重症度に応じて吸入ステロイドの増量、経口ステロイド、長時間作動型β2刺激薬(吸入薬・貼り薬)、抗アレルギー薬、抗コリン剤などを併用する。

長期管理薬を使用しても発作が起こった場合は、発作治療薬を使用する。

発作治療薬には短時間作動型β2刺激薬、ステロイド剤の点滴などが使われる。



1997年、β2刺激薬であるベロテックエロゾル(臭化水素酸フェノテロール)の乱用による死亡者増加が日本において大きな問題となった。

これはβ2刺激薬の副作用によるものとは言えず、β2刺激薬の吸入により一時的に症状が改善するために大発作に至る発作でも病院の受診が遅れたことが主因と考えられている。



●抗炎症薬

経口ステロイド薬1950年代にコルチコステロイドが精製されるとすぐに喘息の治療に用いられた経歴がある。

気管支拡張薬で反応しなかった重度の喘息でも極めて有効であったが、長期にわたって全身投与を行うと多くの有害な副作用が出現するため、現在は緊急時の短期間投与のみが行われる。

例外としてはステロイド依存性喘息であり、やむをえず、長期ステロイド全身投与を行う。

民間療法でステロイドの有害性を過度に強調する情報があるが、これらは吸入ステロイドをはじめとする現在の治療ができる以前の報告である。

吸入ステロイド薬(ICS)現在、喘息治療として第一選択として用いられている。

強力な抗炎症作用を持ち、長期管理薬として用いられるものが多いが、シムビコートのような発作治療薬として使われるものもある。

バイオアベイラビリティ(吸収されて血流中に残り、全身に分布する量)が低い薬剤が用いられるため、全身性の副作用(高血圧、肥満、骨粗しょう症、身長の伸びの抑制など)は殆どないと考えられている。


薬物量においても、全身投与ではmg単位必要であるのに対して、吸入ではμg単位で治療が可能である。

嗄声、口腔内カンジダなどの副作用は起こりえるが、吸入直後に入念なうがいをして喉と口腔内から薬剤を洗い流すことで防ぐことができる。

ICSを低用量から高用量へ増量するよりも低用量ICSにLABAやLTRAを併用した方がコントロールが良くなる傾向がある。

このような報告や吸入薬は全身影響が少ないこともあり、合剤が販売されるようになっている。合剤の代表がアドエア、シムビコートである。

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気管支喘息発作の治療

●気管支喘息発作の治療

●初期治療

まずは初期治療として酸素投与、および吸入β2刺激薬の投与を行う。

シムビコート タービュヘイラー吸入を行う。(以前はサルブタモール(サルタノールインヘラー)2吸入、20分毎3回やプロカテロール(メプチンエアー他)2吸入、20分毎3回などが行われていたが、作用時間が短いため、反復しての吸入を患者は強いられていた。ホルモテロールは即効性がある上、長時間作用するためコンプライアンスが向上する。)

また酸素飽和度(SpO2)が92%以上になるようにコントロールする。

MDIによってうまく吸入できない高齢者や重度の気流制限を認められる場合はネブライザーを用いて吸入を行う。

サルブタモール吸入液(ベネトリン他)0.3〜0.5ml(1.5〜2.5mg)を生理食塩水2mlと混ぜて吸入を行うことが多い。

サルブタモールと生理食塩水の量、比に関しては十分量の吸入がされていれば治療効果に差はないとされており、ネブライザーの形状にあった量とすることが重要である。

ネブライザーでもMDIと同様、20分毎3回の吸入を行い、少しでも効果が見られたら2時間まで20分毎の吸入を繰り返してよいとされている。

初期治療で改善が認められない場合や中等度以上の発作、あるいは窒息死のリスクファクターがある場合はさらにステロイドの点滴を追加する。


メチルプレドニゾロン(ソルメドロール他)40mgを生理食塩水50mlに融解し30分の点滴投与やヒドロコルチゾン(ソルコーテフ他)200mgを生理食塩水50mlに融解し30分の点滴投与を行う。

これらはコハク酸エステル型のステロイド剤であるためNSAIDsにて喘息が誘発される場合や鼻疾患の合併がある場合はベタメタゾン注(リンデロン他)4〜6mgやデキサメタゾン注(デカドロン他)6mgに変更した方が安全である(経口ステロイドではこのようなことは注意する必要はない)。


ステロイド投与を行い2時間経過しても改善が認められない場合は入院の適応になる。

十分な効果が得られず、呼吸困難が持続する場合はエピネフリン(ボスミン)0.3mgの皮下注を行う。

同剤の適応は45歳以下で、高血圧、虚血性心疾患、不整脈、頻脈がない場合である。

20分毎に反復投与を行ってよいが血圧、脈拍、動悸、振戦に注意が必要である。

心拍数を130bpm以下に保つために心電図モニタリングが必要である。

エピネフリンを使用する症例では気管挿管が必要となる場合もあるため、準備を行う。

なお、エピネフリンは子宮動脈の収縮作用があるため妊婦の場合はテルブタリン(ブリカニール他)0.2mgの皮下注に変更する。

オプションとして経気道的な気管支拡張薬投与が不可能な場合はテオフィリン製剤の点滴を考慮する。

アミノフィリン6mg/kgを5%ブドウ糖液250mlで希釈し半量を15分で残りを45分で点滴静注するのが一般的である。


軽症〜中等症では無効とされているが重症喘息ではマグネシウムを1〜2g(マグネゾール2g/20mlまたはコンクライトMg1Aやアミサリン100mg/1ml)の静注はステロイドやSABAが使用されたうえでは効果が認められる。



●後療法

発作が中等度以上であった場合は経口プレドニゾロン15mgを一日二回5日分ほど処方し、近日中に専門医やかかりつけ医の受診を促す。

MDIが十分に残っていることを確認する。

発作が中等度でも1時間以内に改善した場合は帰宅可能であるが、軽度でも窒息死のリスクファクターがある場合は入院治療が必要である。



●気管内挿管の適応

初期治療を行ったにもかかわらず、呼吸減弱、呼吸停止や意識障害が認められたり、酸素投与下でもPaO2が50Torr以下やPaCO2が50Torr以上やpHが7.25以下、不整脈の頻発の場合は気管内挿管を行い、入院治療を行う。


●入院の適応

入院が必要な場合としては、中等度以上の発作であり、気管支拡張薬やステロイド全身投与にもかかわらず2時間経過しても反応がない場合や治療後でも酸素飽和度90%以下の低酸素状態が継続する場合、治療後もPEF値が60%未満の場合や、窒息死のハイリスクグループである場合などがあげられる。

入院では酸素療法の継続、気管支拡張薬吸入の継続(サルブタモール吸入液の吸入を4時間毎、20分以上あけて追加投与可能)、その他メチルプレゾニドロン60mgを1日3回ほど点滴静注する。

テオフィリン製剤を用いる場合もある。


喘息の治療に影響を与える因子としては感染症、鼻炎、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻ポリープ、GERD、薬物(βブロッカーやACEI)、アレルギー、喫煙、声帯機能不全(夜間に症状がないのに早朝急に嗄声などの症状が出現する)をはじめとする心因性疾患などがありこれらも可能な限り治療を行っていく。

コントローラーのステップアップにて症状が安定し、他疾患の除外ができれば退院となる。


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2014年06月12日

気管支喘息の長期管理のマネジメントなどなど

●気管支喘息の検査

*理学所見

特に、急性増悪時には、胸部聴診にて、呼気時優位に狭窄音が聴取される。

狭窄音には、笛声音(wheeze「ウィーズ」, piping rale)、rhonchi等がある。

急性増悪時には、呼気延長を認め、さらに、進行すると、陥没呼吸等、努力呼吸を呈するようになり、呼吸数増多(英 tachypnea)やチアノーゼ(英 cyanosis)を伴うこともある。

最重症の急性増悪においては、意識障害や、呼吸音が減弱して、喘鳴が聴取されなくなるsilent chestに至ることがあるが、極めて危険で緊急の処置を要する状態である。

理学所見は気候や時間帯による影響も受ける。




*気道可逆性試験

気道閉塞の可逆性は、喘息に特異性が高いため、有用な検査であるが、近年では、従来、気道閉塞の可逆性はないと考えられていた慢性閉塞性肺疾患(COPD)においても気道閉塞の可逆性が存在する症例があることが示されている。

米国胸部疾患学会の基準では、β2刺激薬吸入前後、1秒量が200ml以上かつ12%以上改善した場合、気道可逆性ありと診断する。

あるいは2-3週間のステロイド内服・吸入前後で評価することも可能である。

ただし検査時に喘息発作が起きていない場合、気道の可逆性を証明できないこともあるため自宅にピークフローメーターを持って帰ってもらい、ピークフロー値に20%以上の日内変動がみられた場合も気道可逆性ありと診断できる。




*スパイロメトリー

スパイロメーターを用いた呼吸機能検査。

喘息では気道の狭窄により呼気の排出速度が低下する。(FEV1.0<75%)





●気管支喘息の長期管理のマネジメント

喘息のガイドラインとして、国際的に最も信頼されているのは、WHOによるThe Global Initiative for Asthma (GINA)である。

Evidence-levelの高い優れた最新の文献を基に、数年毎にアップデートされている。

世界中の国・地域において、各々のローカルな喘息ガイドラインが存在するが、多くは、このGINAを参考に作成されている。

他に、国際的に知られている喘息のガイドラインとして、米国喘息管理・治療ガイドライン(EPR3)がある。

日本では、主に、日本アレルギー学会が作成するガイドライン(JGL)が用いられている。

残念なことに喘息の診断基準というものは完成していない。

日本アレルギー協会のガイドラインでは成人喘息の診断の目安が記載されている。


*喘息に特徴的な症状

発作性の呼吸困難、喘鳴、夜間や早朝に出現しやすい咳。



*可逆性気流制限

自然にあるいは治療により寛解する気流制限が認められる。

PEF(ピークフロー)値の日内変動が20%以上、β2刺激薬吸入によって1秒率が12%以上増加、かつ絶対量で200ml以上の増加が認められる。

気道過敏性の亢進アセチルコリン、ヒスタミン、メサコリンに対する気道収縮反応の亢進が認められる。

気道過敏性を認める疾患は喘息だけではなく、咳喘息、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、うっ血性心不全、ウイルス性呼吸器感染後などでも認められるため注意が必要である。

これらによって気管支喘息と診断をしたら、長期管理を開始する。

なお、発作中であったら発作の治療を優先する。

長期管理の方法はガイドラインによってわずかな差異があるものの基本は殆ど同じであるためGINA2006に基づいて説明する。

なおICSは吸入ステロイド、LABAは長期作用型β2刺激薬、LTRAはロイコトリエン受容体拮抗薬である。


GINA2006では治療目標である良好なコントロールに関して問診によって評価できるとしている。

日中に週3回以上症状が出現する、喘息によって日常生活によって制限がある、夜間に喘息症状のために早朝おきることがある、症状を抑えるために気管支拡張薬を週に3回以上使用した、ピークフローが自己最高値もしくは予測値の80%未満である、喘息増悪発作が過去1年に1回以上ある、以上の6項目のうち3項目以上に該当したらコントロール不良であり、ひとつでも該当すればコントロール不十分、また喘息増悪発作が最近認められたらそれだけでコントロール不十分とする。

3ヶ月ごとに治療効果判定を行い、コントロール良好群であれば、ステップダウンし、コントロール不良群であればステップアップする。

コントロール不十分が持続する場合もステップアップを検討する。


JGL2006ではステップ1が症状によって規定されており、その症状にコントロールするようにコントローラーを決定する。

ステップ2のコントローラーでステップ2の症状が認められればコントロール不良でありステップ3にステップアップする。




●喘息発作のマネジメント

息発作は時に、意識障害、死亡することもある緊急事態である。

リリーバーによって改善がみられないため救急部に受診するというのが典型的である。

初期治療としては酸素投与とリリーバー投与となるが、呼吸困難、喘鳴の原因が心疾患など喘息発作以外の可能性があるために注意が必要である。

喘息発作の程度は呼吸困難はあるが横になれ動ける小発作、呼吸困難で横になれないが動ける中発作、呼吸困難で動けない大発作に分類される。




●喘息死の危険因子

これらのリスクファクターがある患者はより慎重な治療が求められる。

・ステロイド薬の全身投与中または中止したばかりである。

・過去一年間に喘息発作による入院または救急外来受診した。

・喘息発作で気管内挿管や人工呼吸管理を必要とした。

・短時間作用性β2刺激薬を月に2本以上と過剰使用している。

・鎮静薬を使用している。

・喘息の治療計画に従わない。


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気管支喘息の分類などなど。

●気管支喘息の分類

分類法も複数存在するが、代表的なものの一つに、幼児期に発症することの多いアトピー型と40歳以上の成人発症に多くみられる非アトピー型の2型のフェノタイプに分類する方法がある。

喘息はIgE型の免疫不全症であるため、アトピー性皮膚炎などと合併してくることが多くみられる。




●気管支喘息の病態生理学

臨床医にとっては、幾つかの呼吸器症状が喘息と診断するための情報となるが、これらの臨床症状は必ずしも喘息のみに特異的ではない。

発作性の喘鳴、咳、息切れ、胸部の圧迫感(時間により程度が変化し、気管支拡張薬にて改善する)などが喘息を疑う所見としている。

病理学者は組織学的に定義を行っており、好酸球の浸潤や気道壁の肥厚、リモデリングによって特徴づけられる持続性の炎症と喘鳴としている。

一方、生理学者は機序によって定義を行っており、多くの異なる刺激に反応して、過剰な気管支平滑筋収縮を引き起こす気道過敏性の状態を気管支喘息と定めている。



生理学的な定義のうち特に重要なのが、運動誘発性喘息や吸入アレルゲンによる喘息、アスピリン喘息である。

上記、歴史の項に述べられているようにいずれの定義でも再発性の気道過敏性と慢性炎症といった病態生理学に統合されると考えられている。


慢性気道炎症によって気道過敏症となり、増悪因子により気道狭窄がおこり喘息症状が起こるとされている。

喘息患者にβ1受容体選択性の高くないβブロッカーを用いる場合、重篤な気管支収縮が起こる可能性がある。

やむをえずβブロッカーを用いる必要がある場合は呼吸機能改善率の測定などを行い、気道過敏性が存在しないことを確認してから行うべきである。




●気管支喘息の疫学

2004年の試算で全世界に3億人の喘息患者がおり、年間255,000人が喘息で死亡している。

また喘息死の80%以上は低〜中低所得国で発生しており、今後10年間で喘息死はさらに20%増えるだろうと予測されている。

喘息の有症率は1〜18%程度と国によって報告にばらつきがあるが、多少強引にまとめると先進国で5〜10%程度、発展途上国では1〜4%程度である。



日本では1996年の統計で喘息の累積有症率(現症と既往の合計)は乳幼児5.1%、小児6.4%、成人3.0%(16〜30歳では6.2%)である。

1960年代は小児、成人とも有症率は1%程度であったものが近年増加の傾向にあり、10年の経過で1.5〜2倍程度増加している。

日本における喘息による死亡者数と人口10万人あたりの死亡率は1995年には7,253人(5.8)、2000年には4,473人(3.6)、2001年には4,014人(3.2)、2002年には3,771人(3.0)、2003年には3,701人(2.9)、2004年には3,283人(2.6)と、年々低下傾向にある(厚生労働省人口動態統計より)。

死亡者の約半数は、重度の発作を軽発作だと思い適切な治療が遅れたあるいはされなかった事が原因であるといわれている。



●気管支喘息の症状

自動車、タバコ、工場の煙等の環境刺激因子(アレルゲン)、寒気、運動、ストレスなどの種々の刺激が引き金となり、これらに対する過敏反応として気管支平滑筋、気道粘膜のむくみ、気道分泌亢進などにより気道の狭窄・閉塞が起こる。気道狭窄によって、喘鳴(ぜんめい:喉のヒューヒューという高い音) 、息切れ、咳、痰(たん)などの症状を認める。

喘息発作時にはこれらの症状が激しく発現し、呼吸困難や過呼吸、酸欠、体力の激しい消耗などを伴い、時には死に至ることもある。

気道感染が喘息急性増悪の誘発因子となることが多い。


アトピー型の喘息患者が発作を引き起こすのはI型アレルギーにより化学伝達物質が発生するためである。

その誘因は細菌・ウイルス感染、過労、ハウスダスト(埃・ダニ・花粉・カビなど)・食物・薬物などのアレルゲン、運動、タバコ、アルコール、気圧変化などさまざまである。

一方、非アトピー型の喘息の病態生理はまだはっきりしていない。

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