2014年05月01日

『高血圧』とは?(3) 『高血圧』の治療は?(1)

【管理・治療】

ガイドラインに定められた期間を食事療法や運動療法を行い、それでも140/90mmHgを超えている場合は降圧薬による薬物治療を開始する。

近年は大規模臨床試験がいくつも出そろい、高血圧治療指針(ガイドライン)では科学的根拠に基づいた降圧薬の選択を推奨している。

日本では依然として主治医の裁量ではあるが、その裁量を欧米の医療に即している医師と、上記のうちいくつかを改変した日本独自の考え方をもつ医師がいる(こちらのほうが多い)。

日本独自の考え方としては、Ca受容体拮抗薬は副作用が少なく血圧を大きく下げるため、多くの場合で有用である。

エビデンスが豊富で、危険因子として特に比重の高い脳出血は、同剤の開発前後で明らかに減少している。

虚血性心疾患においても、日本人では冠攣縮型狭心症の関与が大きく、Ca受容体拮抗薬が有効である。

降圧利尿薬は廉価であるが、耐糖能の悪化や尿酸値上昇、低カリウム血症といった副作用により、敬遠する医師が多かった。

しかし多くの臨床試験によってACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬などの最近の高価な降圧薬と同等か、それ以上の脳卒中、心筋梗塞予防、心不全改善、腎保護効果が明らかになっており、最近見直され処方する医師が増えている(例:インダパミドの項参照)。

日本の医療は国民皆保険でありコストを考える必要はあまりないため、たとえリスクの低い患者であっても最初から高価で切れ味の良いACE阻害薬やAII拮抗薬から始めても良いが、降圧利尿薬の選択をいつも考慮する。






【高血圧治療薬】

高血圧治療薬(こうけつあつちりょうやく、英: Anti-hypertensive)は、医薬品の分類の一つであり、何らかの原因で血圧が正常範囲から持続的に逸脱している場合(いわゆる高血圧)、具体的には収縮期血圧(最高)が140mmHg以上あるいは拡張期血圧(最低)が90mmHg以上の場合に、その血圧を低下させる目的で用いられる治療薬であるが、この基準値は患者の年齢や糖尿病などの基礎疾患の有無により異なる。

また、家庭血圧と診療室血圧の値がそれぞれ異なる値を示すことが東北大学の今井らによって行われた大迫研究により明らかにされており、ガイドラインにおいても考慮されている。

日本の高血圧人口は4000万人に及ぶとも言われ、もはや国民的な疾患であると言える。

高血圧は生活習慣病の一つに位置づけられ、自覚症状はほとんど認められないものの、血管内皮の障害を起因として動脈硬化症を発症する原因となり、さらにそこから虚血性心疾患や脳卒中など種々の合併症が引き起こされることから問題となる。


高血圧の最終的な治療目的は脳卒中や心不全などの二次的疾患を予防し、生命予後を改善することにある。

高血圧の発症には食生活や喫煙などの生活習慣が大きく関与することから、基本的にはこれらを改善することによる治療(非薬物療法)が試みられるが、目標値が達成不可能である場合には薬物治療が行われることになる。

血圧のコントロールは自律神経系やレニン-アンジオテンシン系(RA系)をはじめとした液性因子などによって行われており、現在発売されている降圧薬は主にこれらの機構をターゲットとしている。



【治療薬選択の大まかな考え方】


アドヒアランス向上のため原則としては1日1回投与のものを選ぶ。

降圧薬の投与量は低用量から開始する。

低用量から高用量への増加よりもシナジーを期待して併用療法を行った方が効果が高いと考えられている。

II度以上(160/100mmHg以上)の高血圧では最初から併用療法を考慮する。

併用法としてはRA系抑制薬とCa拮抗薬、RA系抑制薬と利尿薬、Ca拮抗薬と利尿薬、βブロッカーとCa拮抗薬などがあげられる。

最初に投与した降圧薬で降圧効果が得られなければ作用機序の異なる降圧薬に変更する。





高血圧の薬物治療は通常、単剤あるいは低用量の2剤から開始され、降圧作用が不十分な場合には用量の増大か多剤への変更、異なる作用機序を持つ降圧薬との併用療法などが行われる。

また、一概に高血圧治療薬といっても多くの種類が存在し、これらの作用機序・薬効・薬価は様々である。

高血圧の初期薬物治療においてどのような薬物を用いるかは大規模な臨床試験の結果やガイドラインに沿って行われる。

高血圧の診療ガイドラインはWHO/ISH(国際高血圧学会)によるものと米国のJNC7が国際的に主流であり、JNC7ではチアジド系利尿薬が他のグループと比較して安価で大きな治療効果が得られることから、その使用が推奨されているが、治療薬は個々の患者の病歴や合併症の有無などを考慮した上で選択されるべきである。

日本においても日本高血圧学会による高血圧治療ガイドラインが2004年に作成されており(JSH2004)、2009年1月には最新版(JSH2009)が発行された。


■■■ 以下の文章の基になるデータの一部は、今は、疑わしい ■■■

国際ガイドラインは欧米での臨床試験をもとに作成されているため、日本人の高血圧治療に当てはめるには不向きな点もあるが、新ガイドラインであるJSH2009ではCASE-J試験やJIKEI-Heart試験、JATOS試験等の国内の臨床試験のデータがエビデンスとして盛り込まれた。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

なお、JSH2004からJSH2009への変更点は以下のような点である。

(1)α遮断薬の主要降圧薬からの除外。

(2)血圧値に加えて心血管障害、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病(CKD)などの危険因子を考慮して3群にリスク層別化を行い、治療方針を決定。

(3)降圧目標の設定。

また、高血圧の患者では薬物を長期に渡って服用することになり、降圧薬の併用に加えて合併症に対する治療薬も数多く処方され結果として10種類を超えるような薬剤を服用している場合も少なくない。

ADVANCE試験により合剤の有用性が示され、日本においてもARBと利尿薬の合剤が認可されている。

このような複雑な処方を受けている患者に対して合剤を用い、少しでも薬の種類を少なくすることがアドヒアランスの改善に結びつくと考えられている。




【治療薬の種類】


●利尿薬

詳細は「利尿薬」を参照

利尿薬(利尿降圧薬)は尿量を増加させるための医薬品である。

そもそも尿とは血液中の不純物を除去するための機構であり、生体内で産生される老廃物は腎臓の糸球体で濾過されたのち尿中に排出される。

一方、尿は体外への水分排泄の役割も担っている。

尿量が少なく循環血液量が多い状態では血圧が高くなるため、利尿薬による水分排泄は降圧効果を示す。

糸球体濾過を受けた血液由来の水分は尿細管へと移行する。

尿細管は糸球体に近い方から近位尿細管、ヘンレ係蹄(下行脚および上行脚)、遠位尿細管、集合管と呼ばれ、膀胱へと流れ込む。

糸球体濾過を受けた水分(原尿)の9割はこれらの尿細管壁から回収されることが知られている。

これを再吸収と呼び、再吸収を免れた水分のみが膀胱へと流れつき、尿として排泄される。

尿の再吸収はまず尿細管壁に存在するイオン交換体によってナトリウムイオン(Na+)の再吸収によって尿細管内外に浸透圧差が作られることにより始まる。

この浸透圧差を補正するためにNa+に付随して水も尿細管外へ移動することになり、結果として水分の再吸収が行われる。

現在発売されている利尿薬はこれらのイオン交換体の機能を調節することにより水分の再吸収を抑制し、尿量を増加させるものである。


●サイアザイド系利尿薬(チアジド系利尿薬)

サイアザイド系利尿薬は遠位尿細管においてNa+およびCl-の再吸収を阻害する。

上記に示した通りチアジド系利尿薬はアメリカのガイドライン(JNC7)においてその使用が推奨されており、中程度の利尿作用を有する。

併用薬としての低用量のサイアザイド系利尿薬の使用は有効であるということがALLHAT試験で明らかになっている。(ただしALLHATで用いられたエビデンスのあるサイアザイド系利尿薬はクロルタリドン)この場合は利尿薬としての使用量よりも少ないことに注意が必要である。


サイアザイド系利尿薬は添付文章上は腎機能障害(Cr≧2.0)、低カリウム血症、痛風が認められる場合は使用禁忌であり、妊娠、耐糖能機能障害の場合は慎重投与ということになっている。

しかしこれは利尿薬として使用する場合であり、降圧薬としてサイアザイド系を用いる場合は利尿作用を期待する場合の1/4〜1/2量の併用となるため低カリウム血症、高尿酸血症、耐糖能障害といった不利益は最小限に抑えることができるとされている。

それでも障害が重度の場合はカリウム保持性利尿薬やロサルタン、シルニジピン、アロプリノールを併用する場合もある。

ただ、作用機序の問題からCr≧2.0で降圧効果、利尿効果ともに無効になってしまうことは変わりない。


低用量サイアザイド系利尿薬は短期的には循環血症量を減少させるが長期的には末梢血管抵抗を低下させることで降圧を行うと考えられている。

ADVANCE studyではACEとサイアザイド系利尿薬の併用薬と偽薬を比較しアドビアランスは同等であったため、利尿作用による不便さは長期的には問題とならないことが示唆されている。

代謝面の不利益から単純に高血圧治療を行うときにはβブロッカーとの併用は推奨されていない。

また腎障害時(Cr≧2.0)で利尿薬を使用する場合はループ利尿薬となるが、利尿作用が強い割に降圧作用は弱い傾向がある。

但し、うっ血性心不全が認められるときはうっ血の解除には有効であるためループ利尿薬を積極的に使用する。

プレミネントなどARBとサイアザイド系の利尿薬との合剤も販売されている

トリクロルメチアジド(Trichlormethiazide フルイトランなど、一日1〜2mg)

ヒドロクロロチアジド(Hydrochlorothiazide ダイクロライドなど、一日12.5〜25mg)

サイアザイド(チアジド)類似利尿薬

メフルシド(Mefruside)

インダパミド(Indapamide, ナトリックス)…最もエビデンスの報告されている利尿薬

メチクラン(Meticrane)

クロルタリドン(Chlortalidone)

トリパミド(Tripamide)



●ループ利尿薬

ループ利尿薬は強力な利尿作用を有しているが、降圧作用はそれほど強くない。

ヘンレ係蹄上行脚においてNa+の再吸収に関与しているNa+/K+/2Cl-共輸送系を阻害する。

これにより尿細管内外の浸透圧差が緩和され、下行脚における水の再吸収が抑制される。

フロセミド(Furosemide,ラシックス)

トラセミド (Torasemide,ルプラック)

ブメタニド(Bumetanide)

エタクリン酸(Ethacrynic Acid)



(続く)
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『高血圧』とは?(2) 『高血圧』の分類・診断は?

【分類】

本態性高血圧症

本態性高血圧(原発性高血圧)

原因は単一ではなく、両親から受け継いだ遺伝素因に加えて、生後の成長過程、加齢プロセスにおける食事、ストレスなどの様々な生活習慣がモザイクのように複雑に絡みあって生じる病態(モザイク説)。

高血圧患者の9割以上を占める。

食塩感受性高血圧は、遺伝的素因と食塩摂取過剰を兼ね持つもので、本態性高血圧の一部を占める。


二次性高血圧

二次性高血圧 明らかな原因疾患があって生じる高血圧をいい、以下のような疾患が原因となる。

頻度は少ないが手術などによって完治する確率が高いのでその診断は重要である。



1.大動脈縮窄症 先天性疾患

2。腎血管性高血圧 腎動脈の狭窄があり、血流量の減った腎でレニンの分泌が亢進することで起きる。

3.腎実質性高血圧 腎糸球体の障害により起こる。

4.原発性アルドステロン症 (primary aldosteronism; PA) 副腎皮質の腫瘍からアルドステロンが過剰に分泌されるため起こる。

5.偽性アルドステロン症 グリチルリチン酸により、11-βHSD2活性が抑制され、コルチゾール代謝の阻害→コルチゾールの残存→ミネラルコルチコイド受容体刺激となる。

6.Apparent Mineralocorticoid Excess症候群(AME症候群) 11-βHSDの異常からおこる常染色体劣性遺伝疾患。

7.Liddle症候群 低カリウム血症、代謝性アルカローシスを来す常染色体優性の遺伝性高血圧症。Epethelial Sodium Channel; ENaCの異常から生じる。

8.クッシング症候群 副腎皮質の腫瘍からコルチゾールが過剰に分泌されるため起こる。

9.褐色細胞腫 副腎髄質や神経節の腫瘍からアドレナリンまたはノルアドレナリンが過剰に分泌されるため起こる

10.大動脈炎症候群 膠原病の一つ。

11.甲状腺機能異常 甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症

12.妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症より改名)

13.高カルシウム血症


この他、脳血管障害の急性期に著明な高血圧を来すことが知られている。

脳出血では応急的な降圧が必要だが、脳梗塞では寧ろ脳血流を保てなくなる恐れがある為、降圧は行われない。




【診断】

血圧は変動しやすいので、高血圧の診断は少なくとも2回以上の異なる機会における血圧測定値に基づいて行われるべきである。

最近は家庭血圧計が普及しているが、家庭で自分自身で測定した血圧値の方が、診察室で医師や看護師によって測定した血圧値よりも将来の脳卒中や心筋梗塞の予測に有用であるとする疫学調査結果が相次いで報告されている。

診察室での血圧測定では、白衣高血圧(医師による測定では本来の血圧より高くなる現象)や仮面高血圧(普段は高血圧なのに、診察室では正常血圧となる現象)が生じるため、必ずしも本来の血圧値を反映していないという考え方が普及している。



家庭での正常血圧値は診察室での血圧値よりもやや低いために、家庭血圧では135/80mmHg以上を高血圧とする。

家庭では朝食前に2回血圧を測定することが望ましい。

心筋梗塞や脳卒中の発症は朝起床後に多発することから、早朝の高血圧管理が重要である。(早朝高血圧)



脳卒中や心筋梗塞の発症には高血圧のみならず、喫煙、高脂血症、糖尿病、肥満などの他の危険因子も関与するために、危険因子や合併症も考慮した高血圧の層別化によって将来の脳卒中、心筋梗塞の危険度の予測能が高まる。

動脈硬化の診断や、腎機能、血圧反射機能などの自律神経機能等の診断も病態の把握に重要であり、動脈硬化の定量診断には脈波伝播速度計測なども行われている。

血圧反射機能診断のためには、血圧変化に対する心拍反応や、動脈の血圧反射機能を診断する方法論も提案されている。

精密な病態の診断が最適な治療には不可欠である。


(続く)

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『高血圧』とは? 『高血圧』の原因は?

高血圧(こうけつあつ、Hypertension)とは、血圧が正常範囲を超えて高く維持されている状態である。

高血圧自体の自覚症状は何もないことが多いが、虚血性心疾患、脳卒中、腎不全などの発症リスクとなる点で臨床的な意義は大きい。

生活習慣病のひとつであり、肥満、高脂血症、糖尿病との合併は「死の四重奏」「syndrome X」「インスリン抵抗性症候群」などと称されていた。

これらは現在メタボリックシンドロームと呼ばれる。


日本高血圧学会では高血圧の基準を以下のように定めている。

成人における血圧値の分類(mmHg)

分類 収縮期血圧   拡張期血圧

至適血圧 <120 かつ <80

正常血圧 <130 かつ <85

正常高値血圧 130 - 139 または 85 - 89

T度(軽症)高血圧 140 - 159 または 90 - 99

U度(中等症)高血圧 160 - 179 または 100 - 109

V度(重症)高血圧 ≧180 または ≧110

収縮期高血圧 ≧140 かつ <90



すなわち、収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90以上に保たれた状態が高血圧であるとされている。

しかし、近年の研究では血圧は高ければ高いだけ合併症のリスクが高まるため、収縮期血圧で120未満が生体の血管にとって負担が少ない血圧レベルとされている。


ここで注意すべきは、血圧が高い状態が持続することが問題となるのであり、運動時や緊張した場合などの一過性の高血圧についての言及ではないということである。

高血圧の診断基準は数回の測定の平均値を対象としている。

運動や精神的な興奮で一過性に血圧が上がるのは生理的な反応であり、これは高血圧の概念とはまた違うものである。


血圧は1日の中でも変動している。

そのため、計測する時間帯には正常値の基準を満たしているものの、その他のほとんどの時間帯には高血圧となっている場合がある。

これを仮面高血圧と呼ぶ。

また降圧剤が処方されている場合でも、その効果が切れている時間帯では安全域を外れている場合もある。

この点にも留意する必要がある。逆に、普段は正常血圧なのに診察室で医師が測定すると血圧が上昇して、高血圧と診断されてしまう場合もあり、“白衣高血圧”とよばれる。

糖尿病患者では起立性低血圧の症例が有るため、座位だけでなく臥位・立位でも測定する。

上腕の血圧測定結果で左右の血圧差が生じることがある。

血圧差は、上腕動脈或いは鎖骨下動脈の病変に起因すると考えられ、差が10mmHg以上の患者は心血管疾患による死亡リスクが有意に高い。

また、家庭で測定を行う場合は高い側の腕で測定を行うことが推奨されている。



【原因】

高血圧は原因が明らかでない本態性高血圧症とホルモン異常などによって生じる二次性高血圧に分類される。

本態性高血圧の原因は単一ではなく、両親から受け継いだ遺伝的素因が、生まれてから成長し、高齢化するまでの食事、ストレスなどの様々な環境因子によって修飾されて高血圧が発生するとされる(モザイク説)。


動脈硬化症による脳内酸欠:一般的に病院で高血圧と診断される大部分の原因は、上行大動脈の動脈硬化症による脳内酸欠を防ぐため、血圧が上がっている状態のことをいう。

遺伝:両親の一方あるいは両方が高血圧であると高血圧を発症しやすい。

塩分:日本人の高血圧の発生には食塩過剰摂取の関与が強いとされる。

日本人の食塩摂取量は1日平均12gであり、欧米人に比べて多い。

日本人の食塩嗜好は野菜の漬け物、梅干し、魚の塩漬けなど日本独自の食生活と関連があるが、2004年版に発行された日本の高血圧治療ガイドラインでは1日6g未満という厳しい減塩を推奨している。

食塩摂取量に関して、静岡県浜松市遠州病院による2008年7月から2012年12月までに合計35,500人(男性22,749人 平均年齢56.3歳)を対象とした調査では、男性12.4g、女性8.4g で、ガイドラインの1日6.0g以下の推奨目標値を達成できているのは3.0%とする調査がある。

また、食塩(塩化ナトリウム)だけでなく重曹(炭酸水素ナトリウム)などを含む食品および胃腸薬の摂取に対しても注意が必要である。


食塩の過剰摂取が高血圧の大きなリスクとなるのは、身体の電解質調節システムに原因がある。

細胞外液中でナトリウムをはじめとする電解質の濃度は厳密に保たれており、この調節には腎臓が大きな役割を果たしている。

すなわち、濃度が正常より高いと飲水行動が促され、腎では水分の再吸収が促進される。反対に、濃度が低い場合は腎で水分の排泄が進む。


結果として、血中のナトリウムが過剰の場合は、濃度を一定に保つため水分量もそれに相関して保持され、全体として細胞外液量が過剰(ハイパーボレミア:hypervolemia)となるのである。

腎のナトリウム排泄能(通常、ナトリウム0.15-0.3mol/日、食塩9-18g/日に相当)を超えて塩分を摂取している場合、上記のメカニズムで体液量が増加して高血圧を来す。

ナトリウム過剰で高血圧をきたしやすい遺伝素因も存在することが確認されている。



ストレスや肥満、飲酒なども高血圧の発症に関与するとされる。

血圧反射機能の障害なども高血圧の発症に関与するとされる。

食塩感受性高血圧の病態については、諸説あるが、名古屋市立大学医学部の木村玄次郎教授の説では摂取したナトリウムを腎から排泄しきれず、夜間も腎臓でナトリウム排泄のため多くの血流を要するnon-dipper型高血圧(夜間高血圧)が良い説明モデルとなる。

non-dipper型高血圧ではナトリウム排泄を促進する利尿剤を投与することでnon-dipper型がdipper型へと変化することが認められており、ナトリウム排泄が食塩感受性の有無を規定する因子のひとつと論じている。


アンジオテンシンはポリペプチドの一種で、昇圧作用を持つ生理活性物質である。

アンジオテンシンI〜IVの4種がある。うち、アンジオテンシンII〜IVは心臓収縮力を高め、細動脈を収縮させることで血圧を上昇させる。

腎臓の傍糸球体細胞から分泌されるレニンの作用によって、アンジオテンシノーゲンからアミノ酸10残基から成るアンジオテンシンI が作り出され、これがアンジオテンシン変換酵素、キマーゼ、カテプシンGの働きによってC末端の2残基が切り離され、アンジオテンシンII に変換される。

アンジオテンシンIIはACE2により、血管拡張作用と抗増殖作用を有するヘプタペプチドであるアンジオテンシン-(1-7)へと変換される。

アンジオテンシンI は昇圧作用を有さず、アンジオテンシンII が最も強い活性を持つ。(アンジオテンシンIII は II の4割程度の活性で、IV は更に低い)。

アンジオテンシンII は副腎皮質にある受容体に結合すると、副腎皮質からのアルドステロンの合成・分泌が促進される。

このアルドステロンの働きによって、腎集合管でのナトリウムの再吸収を促進し、これによって体液量が増加する事により、昇圧作用をもたらす。

また、脳下垂体に作用し利尿を抑えるホルモンである抗利尿ホルモンであるバソプレッシン(ADH)の分泌を促進し、水分の再吸収を促進することにより、昇圧作用をもたらす。


脂肪細胞が肥大化すると、血圧に関連して次のことが起こる。

1)過剰に分泌されたレプチンが交感神経の活動を亢進させ、血管を収縮させること等により、血圧を上昇させる。

2)レニン-アンジオテンシン系の活性化

アンジオテンシノーゲンは肝臓で産生されるが、肥大化脂肪細胞からも産生、分泌される。

アンジオテンシノーゲンから生成されたアンジオテンシンUは、副腎皮質球状帯に作用してナトリウムの再吸収を促進するアルドステロンの分泌を促進し体内に水分を貯留する。

また、脳下垂体に作用し利尿を抑えるホルモンである抗利尿ホルモンであるバソプレッシン(ADH)の分泌を促進し同じく体内に水分を貯留する。

これらのことにより高血圧を招く。肥満患者において高血圧症が多いのはこのためである。


肥満によるインスリン抵抗性は高インスリン血症をきたす。高インスリン血症は、腎尿細管へ直接作用してナトリウム貯留を引き起こし、これが水分を貯留し結果として血糖値を下げる作用につながるが、水分の貯留により高血圧を発症させることとなる。


(続く)

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2014年04月26日

『虚血性心疾患』とは?

『虚血性心疾患』とは?


虚血性心疾患 (きょけつせいしんしっかん, IHD: Ischemic Heart Disease)とは、冠動脈の閉塞や狭窄などにより心筋への血流が阻害され、心臓に障害が起こる疾患の総称である。



【概要】

狭心症や心筋梗塞がこの分類に含まれる。

これらは冠動脈疾患と同義であるが、冠動脈自体に病変が無い疾患、例えば脳血管疾患による急激なストレスから来るタコツボ型心筋症や中枢性肺水腫などは特に本症に含まれる。

アメリカ合衆国では1950年代から心臓病患者の増加が問題となっていたが、朝鮮戦争で死亡したアメリカ人兵士を解剖した医師が冠動脈に動脈硬化症を発見したことから、虚血性心疾患と動脈硬化症との関連が明らかとなった。

症状に応じて、薬物治療・冠動脈バイパス術(CABG)・経皮的冠動脈形成術(PCI、PTCA)が行われる。




【危険因子】

日本人の危険因子は以下のとおり。

1.加齢:男性は45歳以上、女性55 歳以上

2.冠動脈疾患の家族歴(両親、祖父母、兄弟、姉妹)

3.喫煙

4.高血圧:収縮期血圧140以上あるいは拡張期血圧90mmHg以上

5.肥満:BMI25以上かつウエスト周囲径が男性85cm、女性90cm以上

6.耐糖能異常(境界型および糖尿病型)

7.高コレステロール血症(総コレステロール220mg/dL以上あるいはLDLコレステロール140mg/dL以上)

8.高トリグリセリド血症(トリグリセリド150 mg/dL以上)

9.低HDLコレステロール血症(HDLコレステロール40 mg/dL未満)

10.メタボリックシンドローム

11.精神的、肉体的ストレス




■■■■■【狭心症】■■■■■

狭心症(きょうしんしょう、angina pectoris)とは、心臓の筋肉(心筋)に酸素を供給している冠動脈の異常(動脈硬化、攣縮など)による一過性の心筋の虚血のための胸痛・胸部圧迫感などの主症状である。

虚血性心疾患の1つである。

なお、完全に冠動脈が閉塞、または著しい狭窄が起こり、心筋が壊死してしまった場合には心筋梗塞という。


【分類】

発症の誘因による分類

労作性狭心症(angina of effort):体を動かした時に症状が出る狭心症。

安静時狭心症(angina at rest):安静時に症状が出る狭心症。




発症機序による分類

器質性狭心症:冠動脈の狭窄による虚血。

微小血管狭心症:心臓内の微小血管の狭窄及び攣縮による虚血。

患者の男女比が大きく、中でも更年期の女性に多く見られる症状で女性の場合は閉経により血管拡張作用を持つエストロゲンが減少することにより引き起こされる。

1980年代になってようやく発見された。


冠攣縮性狭心症(vasospastic angina):冠動脈の攣縮(spasm)が原因の虚血。


異型狭心症:冠攣縮性狭心症のうち心電図でST波が上昇している場合。




【原因】

一般的に狭心症は心臓の冠動脈にプラークという固まりができ、血液の通り道を狭くすることによって起こるもの。

誘因としては高血圧、高脂血症、肥満、高尿酸血症、ストレス、性格などが考えられる。

冠攣縮型(異型)狭心症は、心臓の血管そのものが異常収縮をきたし、極度に狭くなってしまうために起こる。

微小血管狭心症は、心臓内の微小血管の狭窄及び攣縮によって起こるもの。

誘因としては閉経、喫煙などが考えられる。




【症状】

狭心痛(締め付けられるような痛み;絞扼感や圧迫感)が主症状である。

痛みは前胸部が最も多いが他の部位にも生じる事がある(心窩部から、頸部や左肩へ向かう放散痛など)。

発作は大体15分以内には消失する。

他に動悸・不整脈、呼吸困難、頭痛、嘔吐など。

症状を放置した場合、心筋梗塞、心室細動などを引き起こす場合がある。




【治療】

共通してアスピリンなどの抗血小板剤の投与が検討される。

高血圧や喫煙などの危険因子のコントロールも重要である。

・労作性狭心症

薬物療法 硝酸薬(ニトログリセリン、硝酸イソソルビド等)

β遮断薬(冠動脈攣縮を伴わないものに限る)

カルシウム拮抗薬

経皮的冠動脈形成術(PTCA、PCI)、冠動脈バイパス術(CABG)など


●ニトログリセリン

ニトログリセリン(英: nitroglycerin)とは、示性式 C3H5(ONO2)3 と表される有機化合物。

爆薬の一種であり、狭心症治療薬としても用いられる。

血管拡張作用があるので狭心症の薬になる。

これはニトログリセリン製造工場に勤務していた狭心症を患う従業員が、自宅では発作が起こるのに工場では起こらないことから発見されたという。

体内で加水分解されて生じる硝酸が、さらに還元されて一酸化窒素 (NO) になり、それがグアニル酸シクラーゼを活性化し cGMP の産生を増やす結果、細胞内のカルシウム濃度が低下するため血管平滑筋が弛緩し、血管拡張を起こさせることが判明している。

上記の発見の過程と、一般にはニトロと聞いて爆薬を思い浮かべる人が多いため誤解があるが、現在医薬品として用いられている物は硝酸イソソルビドなどのニトロ基を持つ硝酸系の薬品が主であり、ニトログリセリンを使用する場合であっても添加剤を加えて爆発しないように加工されている。

そのため、医薬品のニトロをいくら集めても爆薬にはならないし、医薬品が爆発事故を起こすことはあり得ない。

しかしそれらを加工して爆薬を作ることは可能であり、アメリカなどでは医薬品のニトロも爆薬、兵器として敵対国への輸出を禁止している。


●硝酸イソソルビド

硝酸イソソルビド(しょうさんイソソルビド)は狭心症の治療薬として用いられる硝酸エステル製剤である。

一般名として、ヒドロキシ基の1つが硝酸エステルとなっている誘導体を含む製剤である一硝酸イソソルビドと2つとも硝酸エステル化されている二硝酸イソソルビドがあり、単に一般名で硝酸イソソルビドといった場合は後者(ビス硝酸エステル)を指す。

前者、後者ともに勃起不全治療薬のクエン酸シルデナフィル(商品名バイアグラ)、塩酸バルデナフィル(商品名レビトラ)との併用は、過度の血圧降下となることがあり禁忌である。

【働き】

狭心発作は、いわゆる心臓発作の一つです。心筋に供給される血液が不足するのが原因で、胸に圧迫感を感じたり、しめつけられるように痛みます。

さらに、血管が詰まり血流が止まってしまうと、ついには心筋梗塞に至ります。

このお薬は、冠動脈拡張薬です。心臓の冠動脈のほか全身の血管を強力に広げます。

そのため、心筋に血液がたくさん届くようになり、心臓の負担も軽くなります。

心筋の血液不足が解消されれば、狭心発作もおさまります。

ただし、狭心症の原因そのものを治すことはできません。

狭心症の発作を抑えたり、心筋梗塞を予防するお薬です。

予防薬として定期的に服用するほか、発作止めとして舌下頓用することもあります。


【薬理】

•冠循環改善作用..心臓のまわりの心筋を養う血管(冠動脈)を広げます。

これにより、心筋の酸素不足や栄養不足を改善します。

•末梢血管拡張作用..体全体の末梢の血管を広げて、心臓の負担を軽くします。

心不全の症状をとるのにも有効です。



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2014年04月25日

抗不整脈薬について述べよ(5)

●発作性心房細動(Paf)

定義上は治療しなくとも自然停止する心房細動である。

疲労、ストレス、飲酒、脱水によって誘発されやすい。

弁膜症や甲状腺機能亢進症といった基礎疾患に伴うものも多い。

発作性心房細動の場合は患者が症状になれることが少なく、動悸を主訴に救急部に受診することも多い。

発作性心房細動では頻脈となっていることが多いのでまずは心室レートのコントロールを行い、可能ならば洞調律化を目指す。

血栓症の予防なども必要となるが、それらは循環器内科専門医のもとで行うべきである。

f波がP波様にはっきりと確認できる場合は異所性興奮による期外収縮によるものであるため肺静脈離断のカテーテルアブレーションが効果的とされているが、ランダムリエントリーによるものも多い。

行うべきことは器質性心疾患の確認、内分泌疾患の確認、心機能の評価とその他の不整脈の合併などである。

これらの確認を行えば初期治療はある程度は行うことができる。



●急性期治療

動悸などを主訴にERや一般内科に来院した場合である。

真っ先に行うべきことは診断および、背景因子の確認である。

心不全が認められればその治療を優先する。

心電図で背景となる器質性心疾患が認められない場合はアミサリン(100mg/1ml)400mgを生理食塩水で10mlとし1ml/minの速さで静注していく。

頻回に血圧をモニタリングし400mg投与で血圧の低下が20mmHg以下で収縮期血圧が110mmHg以上であればさらに400mg同様の方法で静注する。

これで効果が表れるのは30%1程度であるが、時間経過で発作が停止することも多い。

その後専門医の下で精査の後治療を行う。

心エコーで問題がないとわかっている段階のlone afであればもちいることができる薬は増える。

サンリズム(50mg/A)100mg,タンボコール(50mg/A)100mg,リスモダンP(50mg/A)100mg,シベノール140mg(70mg/A)あたりまで投与できる。

いずれも生理食塩水か5%ブドウ糖液で10mlにて希釈し5分以上かけて投与する。

また経口摂取可能であればサンリズム100〜150mgの単回投与を行うという方法もある。

症状が落ち着けば、専門外来にて治療計画を立てることができる。




●慢性期治療

発作性心房細動の慢性期治療の目的は多数ある。

基礎疾患の確認、洞調律の維持、血栓症の予防などがあげられる。

以下に発作の減少をさせる薬を纏める。


抗不整脈薬

説明

Ia群 心機能に問題がないことが確認できていればリスモダン、確認が不十分であればアミサリンがよく用いられる。

Ib群 アスペノンレジスタードマークが心房細動に効果がある。Ic群に比較して効果が劣るとされているが多剤無効例では効果があることがある。

Ic群 心臓超音波検査による器質性心疾患の除外と心機能低下の除外が投与に必須となる。タンボコール、サンリズム、プロノンは心房細動の発作と停止と予防に優れた効果がある。

II群 ベータブロッカーは発作の停止効果はないがレートコントロールに用いることがある。その他ワソラン、ジゴキシンもレートコントロールに用いる。

III群 血行動態の破綻を招く閉塞型肥大型心筋症にのみアンカロンが適応がある。

IV群 慢性心房細動にはワソランなども用いられるが発作性心房細動では用いない、ベプリコールは難治性発作性心房細動にも用いることがある。


発作性心房細動の治療にβブロッカーやワソランは単独では用いられないが併用はよくされる方法である。

これは心室レートを抑制し自覚症状を改善させることが目的である。

βブロッカーの場合は心房粗動が生じたときに1:1伝導を防止する効果もあり、交感神経賦活化による不整脈発生を抑制する効果がある。

心房細動の治療でI群抗不整脈薬を使用中に心房粗動が発生することはよくある。

これはもともと心房粗動を合併していたのか催不整脈による心房粗動か区別が難しい。

1:1心房粗動となると血行動態的にリスクが高いためβブロッカーやベラパミルを併用する。

発作性心房細動では慢性心房細動に比べれば脳血管障害のリスクは低いと考えられているが、CHADsスコアで1点以上のリスクがある患者ではワーファリンによる抗凝固療法が必要と考えられている。

かつては抗血小板療法も行われたが、それは欧米における高用量アスピリン投与によるエビデンスであるため2009年現在、心房細動の脳血管障害防止の目的ではワーファリンを用いる。



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血中のアルブミン(A)とグロブリン総量(G)の比を算出したものとは?

問題2.次の説明文に該当する項目は?

血中のアルブミン(A)とグロブリン総量(G)の比を算出したもの。

重症肝疾患やM蛋白血症で低下、無γ-マグロブリン血症で上昇。


(1)A/G   (2)AST





」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(1)A/G 


【参考】

ASTとはasparate aminotransferase 。

代表的な肝機能の指標。

肝細胞障害で血中に逸脱するが、骨格筋、心筋、赤血球などの破壊でも上昇をみる。

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2014年04月24日

抗不整脈薬について述べよ(4)

●心房粗動(AFL)

心房粗動は従来は器質性心疾患を背景とする場合が多いと述べられてきたが実際には非器質性の場合が多い。

しかし、器質性心疾患の除外のための心臓超音波検査は必要である。

カテーテルアブレーションが90%以上の成功率があるにも関わらず、薬物療法は決め手に欠ける場合が多い。

心房粗動を放置するデメリットとしては、房室伝道が4:1のままならばよいが2:1となると動悸感を訴える場合が多いこと、心室レートの上昇により、心機能が低下することがあること、房室間の生理的な収縮の連関の喪失によって心臓の機械的効率が低下することがあること、血栓塞栓症のリスクとなること、心房細動に移行することがあることなどがあげられる。

心房細動の移行に関しては心房粗細動という概念があるようにもともと合併しやすい疾患であるため、疑問視する声もある。


III型抗不整脈薬であるニフェカラントやソタロールは心房粗動の洞調律化が期待できるが日本では発売されておらず心房粗動の停止で推薦できる薬物は殆ど存在しない。

特にI群抗不整脈薬、Ic群は心房粗動への有効性は極めて低い。

急性期の心機能低下や動悸症状を除いて、器質的心疾患や心臓機能低下がない患者にとって心室レートが落ち着いている心房粗動は害が少ないと考えられる。

そのため治療で重要視されるのは心室のレートコントロールと抗凝固療法である。

心房粗動の血栓塞栓症の発生頻度は年1.6%であり心房細動の1/3程度である。

治療が必要な状況としては動悸感が強い房室伝導比2:1の心房粗動などがあげられる。

心電図ではNarrow QRS tachycardiaでありPSVTかATが鑑別にあげられる。

2:1の心房粗動でもPSVTでも治療は房室伝道の抑制で基本的に同じであると考えると診断は若干楽になる。



ワソラン(5mg)2アンプルを生理食塩水20mlに溶解し、そのうち10ml(5mg)を血圧の測定をしながら5分かけて静注する。

4:1伝導になれば治療は終了である。

血圧が維持されているが2:1伝導のままであったらさらに10ml(5mg)を血圧の測定をしながら5分かけて静注する。

これで伝導比が変化しなければ診断が誤っていた可能性がある。

患者の状況が許されるのならワソラン6T3×やセロケン(40)2T2×で4:1伝導を維持することもできる。

βブロッカーでも治療を行うことができる。

その場合はインデラル(2mg)2アンプルを5%ブドウ糖に溶解し総量を20mlとし2ml/minで開始する。

これで4:1伝導となることも期待できる。

予防としてはセロケン40mg/dayかワソラン4T/dayにリスモダンR300mg/dayとすることが多い。

薬物療法の反応が悪い時は速やかに電気的除細動やカテーテルアブレーションを行う。


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「肝臓で合成される血中の主たる輸送体蛋白」とは?

問題1.次の説明文に該当する項目は?

肝臓で合成される血中の主たる輸送体蛋白。

栄養状態の悪化や肝障害の程度を反映して低下する。


(A)アルブミン(Alb)   (B)ALT








」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(A)アルブミン(Alb) 



【参考】

ALTとはalanine aminotransferase 。

肝細胞の破壊に伴い血中に逸脱する酵素。

AST(GOT)よりも肝に特異性が高く、肝炎の病勢指標に用いられる。
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2014年04月23日

「血清療法」とは?

問題3.次の文章のかっこを埋めよ

(  A  )とは、抗毒素など高度に免疫された免疫血清を注射して感染症の治療を行う方法をいう。

ワクチン療法を代表とする能動的免疫療法に対して、(  A  )は代表的な受動的免疫療法である。

(1)血清療法   (2)不活化ワクチン療法










」」」」」」」」」」」」
   答え
」」」」」」」」」」」」

(1)血清療法  


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交感神経のシナプスにおける伝達物質は?

問題1

交感神経のシナプスにおける伝達物質は?

(1)アドレナリン   (2)アセチルコリン












」」」」」」」」」」
   正解
」」」」」」」」」」

(1)アドレナリン 

(参考)

アセチルコリンは副交感神経の伝達物質。


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